見出し画像

即興朗読のはじめかた

こんにちは。久石ソナです。2024年11月9日に北海道立文学館で行われた講演会「即興朗読のはじめ方」(俳句集団『itak』さん主催)の資料を載せたいと思います。

当日は参加者の方にも実際に即興朗読をしてもらいました。想像以上に率先して朗読をしていただき、itakに参加されている皆さまの熱量を全身で受けました。

当日の様子(かなずさん Xより)
当日の様子(かなずさんのXより)

1 即興朗読のはじめ方 久石ソナ



即興朗読で詩を披露

一人一人の灯台に照らされて
光の殻を破った人から会いましょう
建物にぶつかる風が
葬列をなしている
誰の目にも映らないまま
静かに朽ちていかないで
海の気配を着こなしながら
魂を結び
花束のように文字を紡ぐ旅へ向かう

久石ソナ

本日の流れ

①即興朗読とは、魅力など
②即興朗読をはじめる前の準備
③即興で詩を書くトレーニング
④声を響かせるトレーニング
⑤即興朗読を行うポイント
⑥実際に即興朗読をしてみよう

2 自己紹介 久石ソナ

1991年 札幌市生まれ
2010年 早稲田短歌会入会
2012年 北海道大学短歌会
2015年 第一詩集『航海する雪』
2016年 第50回北海道新聞文学賞受賞
2021年 歌壇賞 次席 第一歌集『サウンドスケープに飛び乗って』
パフォーマンス集団「水が瞬くところ」メンバー
同人誌『ネヲ』主宰者、窓辺歌会

3 即興朗読をはじめたきっかけ

パフォーマンス集団「水が瞬くところ」で即興朗読をはじめた
(2022年結成 水墨 高本麻美子 ギター 三谷良典 詩 久石ソナ
(すべてが即興で行われるパフォーマンス)

朗読とは違って自分自身もどのような言葉が生まれてくるのか、楽しみながらパフォーマンスをしている
(二度と同じ演目をすることが不可能)

本当は・・・
(即興朗読をしようと思ってしたわけではなかった)
持ってきたテキストを読み切ってしまったけれど、まだ持ち時間があったため・・・

4 即興朗読とは・・・

事前に準備された台本や詩などを使わず、その場で思いついた言葉や感情を声に出して表現するパフォーマンス形式です。

詩や物語を即興で作り上げ、それを聴衆の前で朗読します。内容はその瞬間に決まるため、スリリングであり、言葉の流れや表現は独自のリズムやテンポを持ちます。

5 即興朗読に近いもの

即興演奏(アドリブ)・・・ジャズなどで見られる

ラップバトル・・・2人以上のラッパーが即興でリリック(歌詞)を競い合う競技

即興演劇(インプロ)・・・台本を用意せずに、即興的な演技手法を用いて、俳優が自発的に演じる形式の演劇の手法

6 即興朗読の魅力

「ライブ感」、「予測不可能性」、「表現の自由性」

即興朗読とは二度と同じものを読むことはできません。

台本がないため、発話する内容は瞬間的な感情やアイデアに基づきうまれる

言葉やリズム、感情の表現に制限がありません。個々のパフォーマーの個性や創造力が強く反映されます。

7 即興朗読をはじめる前の準備

即興朗読は、瞬時に朗読する詩を作る+朗読のために発声する
の二つに分かれる。

瞬時に朗読する詩を作るトレーニングを行う
①モチーフになる可能性を拾う
②モチーフの選択肢を増やしていく
③モチーフと選択肢を広げた言葉から、朗読する詩を作る
声を響かせるトレーニングを行う

8 瞬時に朗読する詩を作るトレーニング①

モチーフになる可能性を拾う

今見えるもの、見えないもの、感じるもの、感じないもの、あらゆる言葉を書き出してみよう

はじめにモチーフの言葉を30秒で見つけましょう
次に15秒、10秒、5秒といったように見つける時間を短くしていきます。

9 瞬時に朗読する詩を作るトレーニング②

モチーフの選択肢を増やしていく
連想ゲームのように一つの事柄について近いものから遠いもの、さらには関係ないものまで挙げていく。

先程同様にモチーフを増やすトレーニングを30秒、15秒、10秒、5秒のように短くしていきます。反射的に言葉を出すトレーニングです。

10 瞬時に朗読する詩を作るトレーニング③

モチーフと選択肢を広げた言葉から、朗読する詩を作る
自分が詩だと思ったものが詩である。また、読みもの、聴きものとして面白いかどうかを判断する。

先程までのトレーニング同様時間を決めて書いていきます。徐々に時間を短くして、瞬発力を高めていきます。

11 声を響かせるトレーニング①

鼻濁音
「んが」や「んぎ」、「んげ」などが鼻濁音
まんが、えりんぎ、めれんげなど
鼻をさわりながらぴりぴり響いている状態→鼻腔共鳴

喉開け
鏡(スマホのカメラ機能)などで観ながら喉の奥まで開いて発声する
「あ~」や「は~」オペラ調に発声する

12 声を響かせるトレーニング②

鼻濁音+喉開けを同時に行う

13 朗読するときに意識すること

声が響いているか
→鼻濁音+喉開け

息の量は足りているか
→腹式呼吸

抑揚はあるのか
→声の高い低い。声の大きさ小ささ

14 即興朗読を行うポイント

ここまでは即興で詩を作るトレーニングと
朗読をするにあたっての発声のポイントを抑えました

これからみなさんに即興朗読をしてもらおうと思います
その前に即興朗読を行うためのポイントをお伝えします

15 リラックスして構える

即興朗読では、思考や感情を瞬時に言葉にする必要があります。緊張してしまうと、発想や表現が制限されがちです。まずは深呼吸をして、体と心をリラックスさせることが大切です。

16 柔軟な思考を持つ

即興朗読では、柔軟な発想力が求められます。どんな状況でもアイデアが湧き出せるよう、日頃からさまざまなテーマや視点に触れておくと、即興の場での発想が広がります。 • 日常生活で感じたことをメモに残す。 • 詩や物語を多く読む。 • 何気ない風景や出来事を観察する習慣をつける。

17 感情にフォーカスする

感情が込められた言葉は、聴衆に強いインパクトを与えます。最初は完璧な言葉選びを意識するよりも、自分の感情に集中し、その感情をどう声で伝えるかを意識しましょう。 • 喜び、悲しみ、怒り、驚きなど、感情に合わせた声のトーンやリズムを練習する。 • その瞬間に自分が何を感じているのかに敏感になる。

18 聴衆と繋がる

即興朗読では、聴衆の反応が重要な要素となります。彼らのリアクションを観察し、それに応じて内容を調整することで、ライブ感が増し、より親密なパフォーマンスが可能になります。
• 聴衆の反応(微笑み、笑い、静かに聴き入る様子など)を感じ取り、その場の雰囲気に合わせて表現を変える。

19 リズムを意識する

即興朗読は、言葉のリズムやテンポが重要です。言葉の流れに変化をつけて、抑揚を持たせる練習をしましょう。 • 音楽やラップのリズムを参考に、テンポを変えたり繰り返しを取り入れてみる。 • 速く話す部分と、ゆっくり強調する部分を使い分ける。

20 失敗を恐れない

即興朗読はあくまで「即興」なので、完璧である必要はありません。思ったように言葉が出てこない場合もありますが、それも即興の一部です。



21 朗読という側面(現代詩手帖 2024.4 特集・朗読/リーディングの地層)より


作品が、文字の上だけではなく、声によって別の作品にしていくこと。あるいはヨムことによって、文字に押し込められ、抑圧されていた言葉のさまざまな富を、聞き手の側に、自由に浮かび上がらせること。
「自作詩朗読と日本の詩について」佐々木幹朗

朗唱の声はいつも意味として理解するより早く、つぎの声が発せられてしまう。イメージが追い付かない。そうすると頭でわからないぶん、心と身体で感じることだけが頼りになる。
「始原の声」吉成秀夫

22 実際に即興朗読をしてみよう

先ほど作った詩を読み+もう一行を即興で読んでみましょう!


(メモ)朗読のポイント

声の使い方
トーンとピッチ: 詩の雰囲気に合わせて声のトーンやピッチを調整します。例えば、悲しい詩なら低めのトーン、楽しい詩なら高めのトーンが効果的です。
速度: 詩のリズムに合わせてスピードを変えることも重要です。感情がこもった部分はゆっくり、緊張感のある部分は速く朗読するなど、メリハリをつけましょう。

感情の表現
感情を込める: 自分の感情を声に乗せることが大切です。詩の内容に共感し、その感情を表現しましょう。
視覚的イメージ: 詩の中のイメージを思い描き、それを声に反映させるとより効果的です。

間の取り方
ポーズを使う: 重要な言葉やフレーズの前後で間を取ることで、聴衆に考える時間を与え、メッセージを強調できます。
リズムを感じる: 詩のリズムに従って、自然な間を意識しましょう。

発音と明瞭さ
はっきりとした発音: 言葉を明瞭に発音することが重要です。特に音の響きや韻を意識して、聞き取りやすくしましょう。
呼吸法: 正しい呼吸を使って、声を安定させることも大切です。


いいなと思ったら応援しよう!