SWI(サブミリ波観測器):JUICEミッションの革新的観測機器
SWI(サブミリ波観測器):JUICEミッションの革新的観測機器
概要
JUICE(Jupiter Icy Moons Explorer)ミッションに搭載されているSWI(Submillimeter Wave Instrument、サブミリ波観測器)は、木星とその衛星を観測するために設計された重要な科学機器です。SWIは、サブミリ波ヘテロダイン分光計という高感度の観測装置を備えており、ガスや大気の分子を非常に高い分解能で観測することができます。この機器は、木星やその衛星の大気の組成、気象、化学的構造に関する詳細な情報を取得し、太陽系の形成と進化の理解に貢献することを目指しています。
主な特徴と機能
SWIは2つの異なるチャンネルで動作し、それぞれ異なる波長範囲のスペクトルを観測します:
520 μm(530 GHz – 625 GHz)
250 μm(1080 GHz – 1275 GHz)
この幅広い観測範囲により、SWIは木星の大気やその周囲のガリレオ衛星の大気に存在する分子の詳細な観測が可能です。さらに、10^7という高いスペクトル分解能を誇り、観測対象の分子構造や運動について極めて精密なデータを収集することができます。
科学的目的
SWIは、以下のような科学的目標を達成することを目的としています:
木星の中層大気の化学組成と気象パターンの分析:
木星の成層圏や対流圏に存在する分子や微粒子を観測し、大気の構造や温度分布を調査します。
ガリレオ衛星の薄い大気と外気圏の研究:
木星の氷衛星(ガニメデ、カリスト、エウロパ)の表面や周囲の希薄な大気(外気圏)を調査します。これにより、衛星がどのような化学環境にあるかが明らかになります。
エウロパの氷火山プルームの観測:
エウロパの表面下に存在すると考えられている液体の海が氷火山活動によって放出される「プルーム」と呼ばれる噴出物の化学組成を調査します。この観測は、生命の存在に関する手がかりを提供する可能性があります。
木星とその衛星の主要な同位体比の決定:
SWIは、大気中に含まれるガスの同位体比を決定し、太陽系の形成時における物質の起源を解明します。
期待される成果
SWIが提供するデータは、木星とその衛星の進化、さらには太陽系全体の形成と進化について貴重な知見をもたらすでしょう。具体的には、以下の成果が期待されています:
ガリレオ衛星の生命居住可能性の評価:特にエウロパやガニメデなどの衛星内部に存在するかもしれない海洋の化学的特性や、そこでの生命の可能性に関する新たな洞察が得られるでしょう。
木星系の起源と進化の理解:木星の巨大ガス惑星としての特徴やその形成過程、そして木星が太陽系に与える影響についての知識が深まると期待されています。
エウロパ内部の化学的進化の解明:氷下の海と氷火山活動の詳細な観測により、エウロパの化学的進化に関する理解が進む可能性があります。
結論
SWIはJUICEミッションにおいて非常に重要な観測器であり、そのデータは太陽系内の大気と気象、さらには化学進化に関する理解を深める上で不可欠なものです。木星とその衛星の詳細な観測を通じて、太陽系形成時の情報が明らかにされ、木星系の進化、さらには他の惑星系の研究にも大きな貢献を果たすことでしょう。
Citations: [1] https://cosmos.isas.jaxa.jp/ja/onboard-juice-swi-ja/
[2] https://www.mps.mpg.de/planetary-science/juice-swi