「110番通報生活」の果てに
芸歴3年目のピン芸人・村民代表南川と申します。
キナリ杯エントリー用に、noteに初めて「文」を載せます。
上京したてで直面したご近所トラブルの話。
僕は上京して初めて住んだアパートで、僕は入居2日目から4ケ月ほどご近所トラブルに巻き込まれていた。
※画像はフリー素材。あくまでイメージ。
実際住んでいたところは、洋式のドアだったし、壁は白く塗ってあったけれど体感はこんなもん。
上京してから最初に住んだアパートは、木造で築50年の1K。
1階と2階に2部屋ずつあった。全部で4部屋。
僕は102号室。
・入居してすぐガス漏れと水漏れが発覚する。電気が漏れていればライフライン漏れ大三元。
・隣の部屋の音はおろか明かりも漏れる。
・天井裏をネズミが駆けまわっている。
・部屋の中もたまにネズミが駆けている。
・玄関の陰になっている部分に拳くらいの穴が空いている。そこをガムテープで塞いだらネズミが室内には現れなくなった。
・エアコンはあるけどリモコンがまともに機能しないから、エアコンが無いのと一緒。
・玄関のドアが密閉されない。CDを二、三枚通せる隙間がずっとある。
・どこにもつながっていないスイッチがある。
・アパート横の道路を車が通ると、アパートが揺れる。
・全体的に斜め。
など、やんちゃなアパート。
内見でちょっと見たくらいではそんな問題点には気付きようがない。
内見の段階では201と102が空いていて、どちらも見せていただいたが、201はちょっと踏み入れただけで「斜め!!!!!!!!!」と分かるくらい斜めだったから102を選んだ。
入居したら102も斜めだった。
僕は芸人として活動する前は札幌でサラリーマンをしていた。
その時に住んでいた部屋は、RC造で2部屋あって、上記の問題点は当然ながら1個もなかった。
あと、綺麗だった。
やんちゃアパートで暮らしながら「サラリーマンじゃなくなったんだなぁ」とひしひしと感じた上京したての日々。2017年の2月末。
入居した翌日。
朝10時ころに洗濯機を回すと、天井からゴンゴンゴンゴンと異音。
「振動かな」と思いながら洗濯を終える。
数日後。
昼過ぎに洗濯機を回すと、またしても天井からゴンゴンゴンゴンと異音。
洗濯機を回しているタイミングだけ鳴る。
数日後。
また昼過ぎに洗濯機を回していると、天井からゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンと異音。
今度は多いし大きい。上の住人が叩いているようだ。
変な時間に洗濯していたわけでもないし、洗濯機から異音がしていたわけでもないので、もしかしたら何かを伝えようとしているのかもしれない。
202号室まで行ってノックしてみる。
「すみません、102号室の者です。どうされましたか?」
「オルァ!!殺すぞ!!ヴァァァ!!」
会話できない人が住んでいることだけは分かった。
できるだけ関わらないようにしようと心に決めて202号室の前を離れる。
早い段階で知れてよかった。
202号室には、柔らかく柔らかく柔らかく、さらに柔らかく表現すると「愉快すぎるお爺さん」(※以後、愉爺)が住んでいた。
普通に表現したら、キチ〇イが住んでいた。
夜10時ころに窓を開けたら
「ヴァ!!!オラァ!!!」と叫ぶ愉爺
カーペットにうっかりリモコンを落としたら
むちゃくちゃに床を叩き始める愉爺
外で犬が吠えていたら
「殺すぞ!!!!!!!!オラァ!!!」と叫ぶ愉爺
人の形をしているだけで、もう人じゃないのかもしれない。
そんな愉爺は、ごく稀に外出している。
シルバーのボロボロの自転車でどこかに行っているようで。
愉爺が自転車を停めているところを目撃したことがあり、202の怪物の正体とボロボロの自転車の所有者を知った。
アパートが平和なのは、シルバーのボロボロの自転車が無い時だけだった。
普通に玄関の前にゴミを撒かれたり、ドアノブに何かしらで湿らせた新聞紙を巻かれたりもした。
あと、こっちが何をしたわけじゃなくても、床や壁を叩いていた。
夜中の3時とかに平気で叩き出すから寝られたもんじゃない。
流石に我慢ならなくなって、管理会社に電話。
「あー、やりましたか…
202は65歳の無職の爺さんが住んでるんですよ。
以前、別の部屋の入居者が女性だったときは大人しかったんですけどね…」
普通に202の愉爺の個人情報を言うもんだから笑ってしまった。
人が亡くなっていなくても、「人の形をしているだけの怪物」が住んでいたら、それはもう告知事項だろうに。
愉爺みたいな状態になっても、還暦を過ぎるまで生きていられる社会の仕組みがある日本は凄い国だなと思った。
なんでこんな奴が「生活」を営めているんだ?
と思うことはままあれど、愉爺クラスの妖怪は初めてだ。
また何かあったら連絡してとのことだったので、その日は電話を切る。
当然また何かあるけれど、すぐに追い出せるわけではなさそうだし、床ドンの度に電話するのも面倒なので、ゴミ撒きクラスのことをやってきたら管理会社に連絡しようと決めた。
3月末に用事があって岩手に帰っていると、管理会社から電話。
「大丈夫でしたか?」
「何ですか?」
「202の爺さんの件で、警察来たじゃないですか。」
愉爺が101、102、201のドアを叩いて喚き散らしていたところを近隣住民が通報したらしい。
もう追い出してくれ。
管理会社も愉爺の危うさにやっと気付いたようで、
・何かあったらすぐ110番
・ゴミ撒きなどをしていたら記録を残して管理会社に送付
することになった。
家賃は6000円安くなった。
他の住人とも連携を取らないと殺されかねないと思い、東京に戻ったその日に101、201の部屋を尋ねてみる。
101は不在。
結局、101の人が引っ越すまでちゃんと話す機会は無かった。
201は在宅。
同い年くらいのお兄さんがゆっくりと扉を開けて出てきた。
201のお兄さんも愉爺害を受けていたので、僕が尋ねたときは警戒しすぎて「また違うキチ〇イが来た」と思ったらしい。
年齢は1歳上だった。
僕が入居した半月後に201に引っ越してきていたとのこと。
入居するなり愉爺害を喰らっていたのは僕だけじゃなかった。
話を聞くと、201のお兄さんも
・原付に吸い殻水をかけられる
・原付のゴミを乗せられる
・壁を叩かれる
・ドアに貼り紙をされる
・全然起きてるのに「いびきがうるせぇ!!」と怒鳴られる
など、ド派手にやられていた。
既に110番もしていたらしい。
連絡先を交換して、愉爺の情報を共有していくことにした。
その後も元気が止まらない愉爺。
メッセージ付きの段ボールを捨てる。
変な貼り紙をする。(いびき野郎どうのこうのと書いてあった。)
ゴミを駐輪スペースに置く。
などなど。
騒音も当然ながら健在。
4月11日
洗濯をしていたところでまた床連打が始まったため110番するも、
「緊急性が薄いからまずは相談窓口へ」と案内された。
4月12日
隣のアパートの集合ポストに愉爺が貼り紙をしていた。
僕は、当時は原付を持っていなかったし、ゴミも所定の日に透明の袋で出している。
あと、学生でもない。
201のお兄さんの原付を、102の僕のものだと思い込んでいるようだ。
201のお兄さんは、マナーを守って原付を止めているし、ゴミの日を破るタイプの人でもない。
愉爺は隣のアパートまで巻き込みはじめた。
ここからはもっと細かい記録になる。
(当時の管理会社へのタレコミメールが残っているものから。個人名は伏せています)
4月24日
〇9:15
管轄警察署相談窓口へ。Mさんという方の対応を受ける。
「何かあったらすぐに110番をお願いします。その積み重ねが大事です。」とのこと。
4月25日
〇0:37
激しい騒音が上から聞こえたため110番。
「警官と会いますか?会いませんか?」と聞かれたので、「会わない」と答える。
〇1時ころ
警官2人が到着。
警官が202号室に行き、ノックをするも反応なし。
警官が下に降りてきたところで、私が部屋から出て警官に経緯を説明。
〇1時半ころ
「私たちが202の前で控えてるので、一回お部屋に戻ってみてもらってもいいですか?」と言われ、部屋に戻る。
部屋の中を数歩歩いたところで、愉爺が「うるぁ!!」
その瞬間に警官が202のドアをノックすると愉爺が出てくる。口論スタート。
口論が始まってから、私は自室ドア前で待機。
愉爺が「隣のいびきがうるさい」「管理会社が俺の話を聞かない」「102の人間が不法投棄をする」をただただ言い張る。
隣のアパートの2階の方が出てきて、「うるせぇな!頭おかしいんじゃねえか?ゴミも漁ってるしよ!!」と吐き捨てる。
〇1:37
201のお兄さんに「いま警官と愉爺が戦っている」という旨のメールを送ると、1分で返信が来る。
→201のお兄さんは眠っていなかったから、いびきも出るはずが無い。
警官に誘導され、道路側に出る。この時点で警官は3人になっていた。
「近所で火事があり人がいなかったため、最寄りの交番の次に近い交番から来た」とのこと。
この時 僕の応対をしてくれた方の名は『T』さん。
状況を説明。経緯を改めて紙に書いて渡す。
〇2時ころ
愉爺が「隣が出ていくまで、俺はいくらでもやるぞ。」と吐き捨て、扉を閉める。
警官曰く、愉爺は「床は叩いていない。壁を叩いた。」と主張したとのこと。
警官3人が帰る。
〇5時ころ
再び上から騒音。その音で目が覚める。
その日も朝からバイトがあって眠っておきたかったため、110番はせず寝る。
〇14:42
管轄の警察署生活相談窓口に朝5時の件を連絡。
女性が対応。
「その時に110番してくれないとどうしようもないので、その場で110番してください。」と言われる。
4月26日
〇0:09
愉爺の部屋から、1分に渡る連続壁叩き。45秒録音成功。
一回きりだったので、110番せず。
〇2:39
再び愉爺の部屋から0:09のような連続壁叩きがあり110番。
「警官と会いますか?会いませんか?」と聞かれたので、「会わない」と答える。
〇3時ころ
警官1人到着。202号室に行ってくれる。
愉爺は今回すぐに出てくる。
そのタイミングで私は下で待機。
愉爺は前日深夜とほぼほぼ同じことばかり言っている。
近隣の住人から「寝られないから勘弁してくださいよ。」と一声。
201のお兄さんも少し外に出ていた。
〇3時20分ころ
話が終わり始める。
警官「とにかく静かにしてくださいね。」
愉爺「うるせぇ、いくらでもやってやる!」
愉爺さん、扉を閉める。
警官が階段を降りた途端、202からドガンと一撃。
〇3時半ころ
警官に、そこまでの経緯を紙に書いて渡す。
警官が帰る。
5月14日
◯4:30頃
202号室から「ドンドンドンドン…」と、壁か床を叩く音が聞こえ、起こされる。
1分ほど連続して叩いている。
当日は朝から予定があったため、そこでは110番せず我慢してまた眠る。
◯6:10頃
再び202号室から「ドンドンドンドン…」と、壁か床を叩く音が聞こえる。
ここでも1分ほど連続して叩いている。
◯6:20頃
110番通報。
「警官には会わない」と伝える。
◯6:30頃
警官到着。
ドアの覗き穴から見ていたら、202には行かず、
僕の部屋のあたりをしきりに見ている。
不思議に思い、出てみると「あぁ良かった起きてた。」と。
来てくれたのは、
201のお兄さんが原付に吸殻水をかけられて通報したときに来て、
「これで202に行って刺激したらより激しくなるから」
「難しいですよねー」
「引っ越せば解決」
「慣れるしかない」
「世の中にはいろんな人がいますから」
「そういうのは管理会社の仕事で、警察は踏み込めない」
「署の相談窓口に行ってください」
などの格言を残して、202に全く行こうとしなかった警官(Hさんというお名前らしい)
H「部屋入って大丈夫ですか?」
自分の部屋(102号室)の玄関で会話。
しかし、それで202から連打されるのも101の方を起こすのも嫌なので、出てもらい外で会話。
そこでも、
「これで202に行って刺激したらより激しくなるから」
「難しいですよねー」
「引っ越せば解決」
「慣れるしかない」
「世の中にはいろんな人がいますから」
「そういうのは管理会社の仕事で、警察は踏み込めない」
「署の相談窓口に行ってください」
と言うだけ。
H「刺激して激化するのも良くないですし。」
自「4:30と6時過ぎに床や壁を叩かれてる時点でもう激しいと思うんですけど。以前も201の方は原付にいたずらされてますよ。」
H「いま騒いでいるわけじゃないから、私としても踏み込めないんですよ。」
H「やっぱりね、管理会社の仕事なんですよ。管理会社には行ったんですか?」
自「連絡済みです。退去勧告を出すなど、働きかけをしてくれています。」
H「署の相談窓口には行ったんですか?」
自「行きました。継続的な110番をお願いします、と言われたので、今日も110番しました。」
などの会話もあったが、
最後には「相談窓口へ行け」「管理会社の仕事」「202行ったら刺激してしまってもっと激しくなるから」で話をまとめようとしはじめる。
「前も言ったように、慣れるか引っ越すかですよ。」と言われたところで
カチンと来てしまい、お礼だけ言って終わらせる。
◯6:50頃
警官Hさんが帰る
5月23日
8:54 連続した壁たたき(録音しました)
5月25日
朝 アパート前のゴミ置き場に大量のゴミを放置(本人とは確認できず)
5月26日
23時頃、23:30 連続した壁たたき(録音しました)
5月28日
0:12 外で吠えていた犬に対して「うるせぇな!んなろぉ!うるぁ!うるぁ!」と叫び声をあげる
朝 アパート前のゴミ置き場に大量のゴミを放置(本人とは確認できず)
壮絶。
愉爺、ゴミ漁りもしてたんかい。
管理会社にメールしていない困りごとはもっとあった。
6月中旬
先輩の結婚式があり、また岩手に帰った。
結婚式はとても素敵だったし、実家は快適だったけれど、東京に戻れば上に愉爺が住んでいる。
憂鬱な気持ちでアパートに戻ると、愉爺の自転車が無い。
とりあえず落ち着いて家に入れる状態で良かった。
その日の夜にちょっと外に出ると、201のお兄さんと会った。
「ねぇ!大ニュース!202の奴、いなくなった!!!!」
翌日、管理会社にも確認したら、深くは言えないが愉爺はもうアパートには帰ってこないとのことだった。
深くは言えないが、警察とケースワーカーが動いたことは教えてくれた。
2月から始まった戦いは、6月に急に幕を閉じた。
我々は勝ったのだ。
201のお兄さんとは、被害報告をしあううちに仲良くなって、週1,2ペースで飲みに行くようになっていた。
共通の敵がいるもの同士は仲良くなる理論。
ただ、共通の敵が居なくなっても関係性は変わらず、僕が退去するまで頻繁にご飯に行ったり、お互いの部屋でボードゲームをして遊んだりしていた。
201のお兄さんのことを今は「ケンさん」と呼んでいる。
結果的に同じアパートに友達ができた点だけは、愉爺に感謝しなければならない。
その後、101の方は知らぬ間に退去。
愉爺が住んでいた202号室はリフォームされて、新しい住人が入ってきた。
ケンさんと僕は「また愉爺みたいなのが来たらどうしよう」と怯えていたが、新しい住人の方はチャイ(飲み物)屋さんをやっているお兄さんで、とても気さくで穏やかな方だった。
気付いたらアパート全員のライングループが完成。
アパートの皆で飲みに行ったり、台風の後にお互いの部屋の状況報告をしたり、おすそ分けをしたり。
(左から202新入居のお兄さん、201のケンさん、202のお兄さんの友達、僕)
愉爺に怯えながら暮らしていたアパートは、最高のアパートになっていた。
契約更新に伴い、僕は引っ越してルームシェアを始めることになった。
お仕事を休んで、その引っ越しを丸一日手伝ってくれたケンさん。
かわりばんこで運転しながらレンタカーで3往復くらい。
作業終了後、2人で飲みに行く。
「寂しくなりますね。」
「電車に30分乗れば行き来できる距離だし、いつでも遊びに来なよ。」
実際、引っ越してからすぐに遊びにいった。
「近所に良い雰囲気の喫茶店見つけたんだよ。引っ越す前に教えてあげられればよかったなー。」
前のアパートの近くにある良い雰囲気の喫茶店で、男2人で馬鹿話。
数週間前まで同じアパートに住んでいたのに、なぜだかとても懐かしく感じた。
しかし、引っ越しから半年もしないうちに、僕は新居で爆裂仲違い。
「2人なら払えるけど…」の家賃の部屋に1人で住むことになった。
困った僕は、愉爺との戦いで生き残った戦友・201のお兄さんことケンさんに電話。
「大丈夫!俺、荷物少ないから!」
ケンさんは3日後に引っ越してきてくれた。
そして今は、ケンさんも僕も
愉爺がいたアパートではないアパートの「101のお兄さん」になっている。
ご近所トラブルきっかけの縁で、今はルームシェアが始まっているのだから、何が起こるか分からない。
202号室に新たに入居したチャイ屋のお兄さんともたまに連絡を取っているし、外に出られたころはお店に遊びにいったりしていた。
3月中旬に「またみんなで飲みましょうね」という話をしていたが、このような情勢になってしまい、まだ実現していない。
収束したら実行しよう。
以上、ご近所トラブルの大波乱アパートが、最終的に最高アパートになった話。
※こちらは、以前 別のところで書いたものをnoteで投稿しなおしたものです。
ーーーーーーーーーーー
【村民代表南川が利用中】
よろしければこちらもチェックしてください。
・Twitter(@son_d_min)
メインの情報発信
・Instagram(@son_d_min)
たまに更新
・YouTubeチャンネル
ネタの動画があります。
・note
毎日更新。淡々と行動記録
・ブログ
たまに更新。ちゃんと文を書きたいときに使います。
・TikTok
たまに更新
・ツイキャス
たまに配信
https://twitcasting.tv/son_d_min/
・showroom
さらにたまに配信。ツイキャスと同時にやることもあります