新型コロナウイルスで一家全滅した話【実体験】
このページに辿り着いた人は、今まさに新型コロナウイルスに罹患した、もしくは、その不安に直面している人かもしれない。
これは、そんな誰かの役に立てばという思いから、2022年秋の終わりに、突如新型コロナウイルスで一家全滅させられた私の体験をまとめたものである。
最初に
新型コロナウイルスに感染すると、とてもつらいです。
症状もですが、それに加えて基本的に助けてくれる人がいないからです。
新型コロナウイルスに感染すると、蔓延防止のため自主隔離をしなければなりません。
感染を拡げてはいけないので、同居の家族とも距離をとらなければならないし、家族と離れて暮らしている場合、苦しくても手伝いにきてもらうことはできません。
国や行政が支援を行っているとはいえ、自分一人で病気と闘い、必要であれば感染した家族の看病、家事もしなければなりません。
そして、回復の兆しが見えないその瞬間、必ず、心が折れそうになります。
実際に新型コロナウイルスを体験した私が伝えたいのは、「できるだけかからないようにしよう」ということです。
「もうかかっているかもしれない」という人、感染から回復までの私の軌跡を以下にまとめましたので、参考になれば幸いです。
突然の感染宣告
始まりは夫の体調不良だった。
ある朝、夜勤を終えた夫と顔を合わせると、体がだるいと言い出した。熱を測ると、37度台。夫はそのまま寝室に引っ込み、夕方まで寝て過ごした。
そして次に目を覚ました時には、症状は急激に悪化していた。
喉の痛みと激しい咳、息苦しさ。熱を測ると、38.5°。
「ああ、これはインフルエンザだ」
その時、夫と私はそう思った。新型コロナウイルスなら、熱は37度台だろうし、こんな風に突然症状が悪化するのは、インフルエンザに違いないと思ったのだ。
夫は、とにかくつらそうだった。激しい咳が出て、胸が痛い。夫の様子に、私は近隣で発熱外来をやっている病院を探した。
インフルエンザであれば、治療薬を飲めばすぐに体調が回復すると夫と私は固く信じていた。
しかし、近所の総合病院の発熱外来に問い合わせてみると、今夜は予約がいっぱいで翌日の朝にならないと予約が取れないという。
仕方なく近所の内科のホームページを片っ端から調べ、電話でも問い合わせてみたのだが、
「発熱外来は午前中しかやっていない」
「発熱外来は今夜はお休み」
「コロナの検査はするけど、診察はしません」
と、どこもすぐには診てくれない。
コロナ以前であれば、風邪をひいても近所の病院に歩いて受診に行けばそれでよかった。
高熱があればさっさとインフルエンザの検査をしてもらえたし、解熱剤も処方された。
けれど今の世の中では、風邪の症状があれば事前に診てもらえるか問い合わせなければならないし、迂闊に院内に立ち入れば病院側に迷惑をかけてしまうことになるのだ。
そして結局、その月曜日の夜、夫を診てくれる病院は見つからなかった。
夜、寝室からは夫が苦しそうに咳き込むのが聞こえてきた。不安を抱えながら眠り、朝がきた。夫の症状は変わらず。
私は発熱外来の予約を取るべく近所の総合病院に電話をかけた。
が、繋がらない。何度かけても通話中。
30回以上かけたところでようやく繋がり、当日の午前中になんとか予約を取ることができた。
病院へは夫一人で向かった。
車で行き、病院の駐車場に車を停め、車内から問診をしてもらい新型コロナウイルスの検査をすることになった。
十数分後には結果が告げられた。陽性だった。
自宅でその報告を受けた私は衝撃を受けた。まさか、新型コロナウイルスに感染しているとは想像していなかったからだ。
しかし思い返せば発症の二日前、夫は街に出ていた。普段は在宅勤務なので人と接することはほとんどないから、その時にどこかで感染したのかもしれない。
これからどうなるのか。思えば、新型コロナウイルスに感染した場合の感染者の対応についてなにも知らない。
ただ一つだけ明らかなのは、自分と0歳の子供は濃厚接触者となるため、外に出ては行けないということだった。
診断当日には子供と自分も発症
帰宅後、夫はこれまで通り寝室で休養することに。
新型コロナウイルス感染後の隔離については、調整後に保健所から連絡がくるとのことだった。
が、夫は重症化リスクが低いので、病院やホテルではなく自宅療養になるだろうと私は予想していた。
そして実際その通りになるのだが、保健所から連絡があったのは祝日を挟んで翌々日のことだった。
住所や年齢の聞き取りをされ、なにかあった時の連絡先を教えられ、夫は当然のように自宅療養となった。重症化するリスクが低いと判断されたのだから仕方がないが、ただ寝て治るのを待つというのはなかなかつらい。
発症してから夫は食事をとる元気もなく、ひたすら寝て過ごしていた。
病院からは解熱剤と咳止めと痰切りの薬を七日分処方されたので、それが効くことを祈るより他ない。
症状が出てから夫はずっと寝室にいたが、廊下とトイレは共用だった。それに、発症前からウイルスを出しているのだから、私や子供が発症するのも時間の問題だと思っていた。
私は、体が動くうちにできることを済ませようと洗濯物を済ましてお風呂にも入っておいた。
結果的に、この行動は正解だった。というのも、夫が新型コロナ陽性と診断されたその数時間後には、子供も発症したからだ。
0歳の娘は突然元気がなくなり、夕食中に泣き出した。布団に連れて行くと、だるそうにすぐに眠ってしまった。起きてから熱を測ると、38.5°。
絶望した。そういえば私もさっきから喉が痛い。始まったようだ。
新型コロナウイルス発症から回復まで
その日は子供と一緒に早々に寝ることに。
しかし、その夜は長かった。
体がつらいのか子供は何度も目を覚まし、乳を飲んでは眠るというのを繰り返した。
私も悪寒に襲われ中々寝つくことができなかった。この悪寒がまた強力なやつで、暖房を入れても重ね着をしても、寒気が背中に張りついてとれないのだ。
体調がどんどん悪化しているのが自分でもわかった。
翌朝。夫の発症後三日目。
夫の体調は改善の兆しもなく、解熱剤を飲んでも熱は38度台のままだった。保健所からは、毎日酸素飽和度をパルスオキシメータで測り、93%以下になったら連絡するように言われていたのだが、一時は94%まで下がった。
子供の方は、熱が上がったり下がったり。でも、いつもの元気はなく、食事も柔らかいものしか食べられなくなっていた。
私はというと、熱は37度台で、症状は典型的な風邪という感じだった。
ただ、体が痛くて仕方がなかった。
その日は祝日だったので、無理に病院に行くことはせず自宅で様子を見ることにした。基本的に寝て過ごしたが、私の体調はどんどん悪化していった。
そして翌日。
夫の体調は相変わらず。熱は下がったものの、激しい咳、息苦しさが続き、食事もとれていなかった。
この辺りから、流石に心配になってきたのだが私の方もかなりきつい状態だった。症状自体は風邪という感じだったのだが、とにかく体がだるくて痛い。そんな中、子供の世話と最低限の家事をなんとか一人でやっていた。
そう、一人。
これが一番こたえた。
夫は虫の息で、子供もぐったりして不機嫌。子供は眠りが浅く何度も起きるから、私自身細切れの睡眠しかとれていなかった。
夜も1、2時間ごとに起きるので、まるで新生児期のように乳やミルクをやったり抱っこをしてやったり。
発症からたったの二日間で、私は心身ともに疲れ果てていた。
ただ幸い、子供と自分は前日より体調が良くなり、熱も下がっていた。
とはいえ、子供を連れて病院へ行くほどの気力はない。
そこで市に確認したところ、今の私たちの状態の場合、必ずしも受診の必要はないとのことだった。曰く、新型コロナウイルス陽性になったものとして行動すれば良いとのことだった。
そのため、あえて病院には行かずに体を休めることに専念することにした。
(ただし、子供は0歳のため、症状が急変する可能性もあるため緊急の受診先を教えてもらった)
前日に義母がスーパーに買い出しに行ってくれていたので食べ物には困っていなかったが、それがなければ市に買い物代行を頼んでいただろう。
新型コロナウイルスにかかった場合、「陽性診断から一週間経過、かつ症状軽快から24時間経過後」には隔離を解除してもよいことになっている。
ということは、一週間も経てば元気になるだろうということを心の支えにその状況うをやり過ごした。
昼過ぎになると夫も起きてきて、三日ぶりくらいに家族三人リビングで過ごした。
子供は最初お父さんのことがわからなかったのか、少し離れたところから夫の顔をうかがっていた。
ここ数日、私も夫とろくな会話をしていなかった。発症してから夫はひどく喉が腫れて、声がほとんど出ない状態だった。
その日は少し回復していたので、開催中のサッカーワールドカップの話をしたり、ハイライト映像で日本の戦いを振り返ったりしながら、ゼリーなどの食べられそうなものをお腹に詰め込んだ(そして夫は予想通りお腹を壊した)。
三人とも熱が下がり、いっときよりだいぶ元気になっていた。明日にはもっと楽になっているだろうね、なんて夫婦で話していた。
しかし、この予想はその日の夜には裏切られることになる。
夕方、しばらく子供をお風呂に入れていなかったので、私は子供と二人湯船にさっと浸かることにした。
そこまではよかったのだが、風呂から上がってしばらくすると、異様に体が痛み悪寒が再び襲ってきた。
体温を測ってみると、子供は相変わらずの微熱だったが私の方は37.9°。まだこの悪夢は続くのかと、半ば絶望しつつ眠りについた。
夜中何度も子供に起こされつつ翌朝。微熱が続き、体のだるさと痛みもひどくなっていた。加えて寝不足で、私は前日より体調が悪くなっていた。
夫の方も同じような状態で、平熱に戻ってはいたが咳と痰が切れず苦しそうだった。
ただ一人、娘はかなり元気になっていた。熱もなく、放っておくと一人で遊んでおり、もう心配はなさそうだった。
私はできるだけ体を休めて過ごしたが、夜になっても微熱と体の痛みがとれなかった。
あんまり痛くて眠れないので、授乳中でも飲んでいい解熱鎮痛剤を飲んでみた。
そしてこれが、物凄く効いた。
15分後には熱が下がり、30分後には嘘のように体が楽になった。
授乳中は薬を飲むのに慎重になってしまうが、こんなことならもっと早く飲んでおけばよかった。体が楽になったおかげで、その後はスッと眠りについた。
夜が明けて、夫のコロナ発症から6日が経った。
昨夜以来薬は飲んでいなかったが、熱はなく体も楽だった。
夫もだいぶ元気になっており、時々起きてきては冷蔵庫の中を漁っていた。
この頃には、家族三人とも治りかけと言っていい状態で、気持ちにもだいぶ余裕が出てきていた。
この数日間で夫は5キロ、私は2キロ痩せた。
この日からはどんどん体調が良くなっていき、隔離期間が明ける頃には、普段通りの生活ができるようになった。
ただ、一つだけ気になることがあった。
それは、新型コロナウイルスの後遺症。
自分が発症してから4日が経ったこの日から、私は嗅覚異常を体験することになる。
嗅覚障害 臭いがしない
異常に気づいたのは、熱も下がり体も元気になった4日目のことだった。
きっかけは、子供のオムツの臭いを感じなかったことだ。
おかしいと思い、冷蔵庫の中にあった大根の漬物の臭いを嗅いでみた。が、無臭。
大根の臭いも酢の臭いも、まったく感じなかった。
奇妙なのは、味は感じるし鼻が詰まっている訳でもないということだった。
調べてみると、嗅覚障害を発症しても二週間程度で自然に良くなるということらしいので、あまり慌てず様子を見ることにした。
これまで、嗅覚がないと味覚もなくなると思っていたのだが、どうも感覚とはそう単純なものでもないらしく、私の場合「味は普段通り感じる」、感じだった。
ただ、「風味」というのは確かに感じなくなっているのか、大葉だとかダシだとかの鼻に抜けていくような香りはほとんどわからなくなっていた。
そうすると、和食というのは美味しさが半減することに気づいた。
どうしても味の濃い、わかりやすい食べ物が食べたくなってしまう。
アジア料理の風味を感じることに慣れていない外国人が和食を食べると、ひょっとするとこんな気持ちなのかもしれない。
耳鼻科のホームページなどを覗いてみると、自宅でもできる治療方法として、色々な臭いを嗅いでみるという方法が紹介されていた。
試しにやってみると、お酢やコーヒー豆、アロマオイルのような強い臭いは感じることができた。
が、ダシだとかの優しい臭いはまだ嗅ぎ取ることができなかった。
あとは、不思議なことに不快な臭いも感じない。子供の排泄物や生ごみの臭いなどを感じ取ることができないのだ。
そのため、嗅覚が鈍くなると、意外なことにこれまで感じていた臭いに関するストレスを感じなくなった。
これはひょっとすると私だけの珍しいケースなのかもしれないが、不快な臭いを感じないというのもそれはそれで困り物だ。
子供がウンチをしても臭いでは気づかないし、食べ物が腐っているかどうかも、嗅いで確かめることができない(そのせいで、回復後冷蔵庫の作り置きを食べてお腹を壊した)。
これまで嗅覚とは、いい香りを嗅ぐためにあると無意識に思っていたが、本当は身を守るために存在する感覚なのだと実感することになった。
幸い、コロナ発症から一週間くらいから少しずつ嗅覚も戻り始め、十日から二週間程度でほぼ元通りになった。
行政のサポート
今回コロナ陽性となった私たちが受けた行政のサポートについて、以下に紹介しておく。
・パルスオキシメータの貸し出し(診断翌日に届きました)
・マスクなど、家庭内感染予防のための備品提供(電話をすると当日に届けてもらえました)
・相談窓口(受診すべきかどうか相談しました)
・買い物代行サービス(義母が食料を届けてくれたのでこれは利用せず)
もちろん、行政のサポートはありがたい。ありがたいのだけれど、今回コロナ陽性になって、私たちの住んでいる地域のサポートは十分ではないなと感じた。
なにが困るかというと、やはり外に出られない間の買い出しだ。
買い物代行サービスはあるにはあるが、土日祝日はやっておらず、また、冷凍食品や生鮮食品を買ってもらうこともできないらしかった。
近くに夫の実家があるので、義母に差し入れをもらえたのでなんとかなったが、一週間買い出しに行けないというのは子供のいる家庭には中々厳しいと思う。
普段買い溜めをしないという人も、万が一のためレトルト食品等を備蓄しておくことをオススメする。
最後に 身を守れるのは自分だけ
新型コロナウイルスに感染しても、大抵は一週間程度で良くなる。
恐れすぎるのは良くないが、できることならかからない方がいい。
特に幼い子供がいる家庭では、注意が必要だと感じました。
確かに自治体によっては感染者への支援も手厚く、隔離中の食料を送ってくれるところもあるらしい(うちの市はスーパーへの買い物代行だけでしたが……)。
でも、自分も子供も熱が出た時、ぐずる子供を抱っこすることになるのはほぼ間違いなく親であるあなたです。
それに恐らくは、一人きりで家族の看病と家事もしなければなりません。
体がつらくて眠りたくても、家事を代わりにやってくれる人はいません。
病院で診てもらいたくても、すぐには診てもらえない可能性もあります。
今回、どこで感染したのかはっきり知ることはできませんでしたが、発症の数日前、夫は街へ出ていました。
そこで感染したのかもしれないし、私がスーパーやコンビニでもらってきたのかもしれない。
それはわからないけれど、手洗いうがい、日頃から体調を整えるといった予防が大切だと感じたました。
「もう感染しているかも」という方は、できるだけ体を休めてください。
一週間程度できっと良くなります。一週間です。確かにつらいですが、かかってしまったら時が経つのをただ耐え忍ぶしかありません。
必要なら受診をして、飲めるなら薬を飲み、眠れなくとも体を休めてください。
もう一度、つらいのは一週間だけです。
元気になれば、また普段通りの生活に戻れます。私たち一家は今とても元気です。
だからどうかゆっくり休んでください。
今回の記事が、どなたかの役に立てば幸いです。
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