優雅ないくじなし
在宅研修に移行し、おうちにいるのが楽しくなるようにと、花を買った。コデマリという、白く小さな花を鞠のように咲かす花。一緒にあると映えるから、ユーカリも一本付けてもらった。
それまで花瓶に飾っていたのは桜なのだが、だいぶしおれてしまっていた。サンキューね、また来年ね、そっと声をかけ、コデマリにバトンタッチ。
これがなかなか良い。悪くない。うん。一人暮らしをエンジョイしてる感じがある。在宅研修はzoomを使って行うのだが、せっかくならと画面にコデマリが映るような角度でパソコンを開いている。まあ、いわばアピールである。
この2日間は天気もいいので、1日2時間ほど外に出している。水を取り替え、日光と風に当てる。
ところがこのコデマリ、いかんせん散りやすい。少し揺らしただけでも花びらがはらはらと遊びに行ってしまう。まてまて、まだここにいなさいな、と思いながら私はせっせと花びらを拾う。だからもっぱら、コデマリのお世話はベランダで行うことになる。
このままだと、ベランダがコデマリの花びらで埋まってしまう。わたしは家が好きだが、それは人の気配があるからこそなのだと最近気づいた。すこしずつ、不安ともいえないような不安が、散り積もっていく。はやく終わりますように。はやく、会いたい人たちと、何の気兼ねもなく語り合える日がもどりますように。願いを込めながら、わたしはせっせと花びらを拾う。