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欠けたボクを探して、その1。The Flickers「MISSING PIECE」について。

今回から始める「デザイン問答」なる、このコーナー。

この世の中に存在する全てのデザインに対して、ああでもないこうでもないと考察していきたいと思います。

が、他人のデザインにクチを出すほどの実績も権威もないので、基本的には自分の作品に対する主観的な感想をメインに、そのデザインにまつわる想いや思い出なんかがあれば、それを掘り下げていけたらいいな、と思っています。

カッコつけて言えば、まぁ、その、なんだ。アーカイブというか、レトロスペクティブというヤツか。

誰もまとめてくれないから自分でヒマを見つけて少しづつまとめてみようかな、という程度のスタンスです。

TLGFのサイトでも、オフィシャル作品、オルタナ作品と画像だけならいくつかの作品も見られますけども、当然ながらアップしていない作品の方が多いし、そこに込められた想いなんかは意外に伝わってなかったりとか、誤解されてたりとか、、、

まぁ、デザイナーは作品が全てだ、という考え方の人間なので、あんまり細かく説明するのも野暮だから、ほどほどに。

と、いうわけで、、、、

タイトルにもあるように「欠けたボクを探して」いくようなコンテンツになれば、それでオッケーかな、と思ってます。

どうそ、よろしくお願いします。

第一回目は、まさに「欠けたボクを探して」いるタイトルにピッタリな作品で、個人的には非常に残念なことでもあるんだけど、惜しくも解散してしまったバンド、The Flickersのラストアルバム「MISSING PIECE」を紹介します。

このバンドに関しての詳細は各自wikiってもらうとして、、、

まず、ボクが「あ、このバンド、カッコいい、、、」と思うバンドのほぼ全部(と断言してもいいくらい)が解散もしくは、実質的解散して、そのバンドの生涯を終えるという事実があることを先に述べておきます。

このバンドも、(ボクの中での)その悲しき方程式から解を導き出したが如く、何年かぶりにジャケットデザインをやらせてもらった途端、解散してしまいました。

もちろん、解散に至るまでの道のりは外部スタッフであるボクには及びもつかないほど苦悩と苦難があったであろうことは想像ができるので、その結論自体に、どうこう言うつもりもないです。

ただただ、残念という感想だけ。

それだけボクはこのバンドを「カッコいい」と思っていたし、今も聴き返すほどにボクの好きな音を鳴らして、ボクの心を揺さぶる言葉を紡いでいる。

そういうバンドは希有だから。そういう存在こそをバンドと呼ぶと思っているから。

あ、バンド論じゃなかった。

デザインについてのコーナーだった。

で、このジャケットデザインです。

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ここからの記述は、あくまでもボクの曖昧な記憶とボクの主観によるものなので、関係各位、もし間違いがあればガンガンにご指摘いただきたい。

で、ボクの記憶だと、この作品はスタッフから音源とタイトルを渡され、メンバーからはジャケットに対する「コレ!」と言った具体的で強い要望もなく、ボクのアイデア待ちだった気がする。

そもそも、ボクがこのバンドのジャケットを初めてデザインさせてもらったのはインディーズでのデビューミニアルバム「WONDERGROUND」だった。

ボク個人としては、かなり気に入った仕上がりになったし、続くインディーズセカンドミニアルバム「WAVEMENT」もデザインさせてもらったということで、スタッフ、メンバーも気に入ってくれていた、と思っていた。

ジャケットデザインそのものの世間の評価がどうあったのかは正直判らないけども、そんなこと全然関係ない、と思うくらい自分では音とデザインのマッチングは高いレベルだと思っていた。

でも、その後、彼らのジャケットデザインを依頼されることはなくなった。

色んな理由があるんだろうことは、ボクもこの仕事を20年以上もやっているから察する事も出来る。

でも、そういう事情さえも、ねじ伏せるだけのデザインのチカラがボクになかったのも、これまた事実だと思った。

先述したように、他人のデザインにケチをつけるほどの権威でもないが、好き/嫌いは言わせてもらおうと思う。

ボクがデザインしていない彼らのジャケットデザインは、どれも好きじゃないです。

デザインが良い/悪いではなく、好きじゃないなぁ、と。

だからこそ、このチームからの再びのオファーがあった時のボクの心の高揚たるや。

また、あのイカす音に自分のデザインを纏わせられる機会を与えてもらえる悦びよ。

そういう気持ちで満ちあふれていた。

そして聴かされた、彼らの今の音。

前作2枚の音源も、その時同時に聴かせてもらって、ボクの中で空白だった何年間かの彼らの葛藤を初めて知った。

ブレることの怖さを知った。ブレざるを得ないことの怖さも感じた。それが今の日本の音楽業界の事情だったとしても、ブレることとは無縁だと思われた彼らの音と存在価値でさえブレざるを得なかったんだろうな、と思った。厳密に言うと「ブレた」というよりも「迷った」んだろう。さらに言うと「迷った」というよりも「彷徨った」という方が正しいのかもしれない。

「彷徨った」と思っていたのはボクだけで、メンバー含め他のスタッフ全員は、それを「変化/進化」と捉えていたのかもしれない。

それは今となっては判らないし、別にどうでもいい。ボクにとって、その変化は「彷徨った」と受け止めたのは事実なんだから。

でも、その彷徨った末、今またボクに聴かされた音は、まさにアルバムのタイトル通り「無くした欠片」を探す自らの姿をさらけ出してくれている音だった。

カッコいい、と思った。

だから、ボクもカッコいいジャケットを作りたい、と心から思った。

「無くした欠片」を、もう一度見つけたいとボクも思った。

なんで、このデザインになったのか?というのは、まぁ、簡単な話、「欠片」というキーワードから「壊れた」という絵を思いつき、「壊れた音楽=壊れたCDケース」をモチーフにしたかったから。

それとは別案として、「紡ぎだす言葉=口もと」という絵も思いつき、バラバラに提案したものを安島くんから「それを一緒にして欲しい」という要望があり、ミックスしたものが、この出来上がったデザインだ。

とても良い。とても好きなデザインになった。

彼らの最後の作品となってしまったが、その最後を飾るデザインがボクの手で出来たことはとてもとても誇らしく思う。

そして、きっと彼らは今も「無くした欠片」を探しているんだろうと思うし、ボクもずっと「欠けたボク」をデザインを通して探し続けている。


最後にひとつ。

彼らのファーストミニアルバムに収録されている「orange sunshine distortion」というボクが大好きな曲があるんだけど、その中で「どいつもこいつもオ◯◯コ野郎」という、とてもナイーブで素敵な歌詞がある。

ぜひ、聴いてみて欲しい。

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