ダイニングテーブル、キッチンカウンター、ちゃぶ台。
普段、自分から好んで観るタイプの映画ではないけど、せっかく試写状を頂いたので観るか、という作品も実際にはいくつもある。
この映画も、タイトルからすでにあまり興味は惹かれなかったし、キャッチコピーもあらすじもピン!と来なかったのが本音。
それに緊急事態宣言中で試写は完全予約制ということもあり、面倒くさかったのでスルーしてしまった。
おそらく、そういう思いを抱いたマスコミ関係者や映画関係者も多く居たのではないだろうか?試写会が始まるタイミングで、ご丁寧に改めてウェブ上での試写案内がメールで送られてきた。
そこまで勧められるなら、と観た。
「明日の食卓」
主演の三女優、世間的に「ぶっちぎりの演技派」という感じの評価ではないかもしれないけど、ボクは3人とも好きな女優さん。
特に菅野美穂さんに関しては1995年に発売された写真集「17ans」で、当時駆け出しのグラフィックデザイナーだったボクは製作側の一人として、ほんの少しだけどもお手伝いさせてもらったこともあり、それ以来なんとなくいつも気になる女優さんだったし、高畑充希さんも、尾野真千子さんも、主演できる技術はありながらも、いわゆる女優らしいキラキラギラギラな派手さがない分、ボクは好きなタイプの女優さん。
だから、ある意味自分の中でのハードルを高めに設定して見始めたんだけども、この3人の女優さんはもちろんのこと、子役3人、周りの役者さん全てが見事な演技だった。
肝心のストーリーは、、、、
たまたま同じ名前(ユウ)の子供をもつ3人の母親の、それぞれの物語が現代ならではの問題を抱えて思い悩み、時に前向きに、時にひたむきに、時に自暴自棄になる。その先には、、、、
古今東西失われることのない「家族・親子・夫婦」という関係性を扱った普遍的なテーマだから誰にでも置き換えられて共感を得るという、意地悪な言い方をすれば「まぁ、よくあるテーマと手法」。
なんだけども、3人の女優さんはじめ、その他の役者さんも、そしてストーリー自体も全て派手さがないから絶妙なリアリティーが物語が進むにつれてどんどん増していく様子は、ちょっと怖い。
怖い、というか異様な空気がこちらまで伝わってくるのが見事。
哀しさと残酷さと理不尽さと無力さの先に希望という光りがあります。
なんていう使い古された綺麗ごとじゃなくて、
それでも生きていくと決めた、諦めに似た強さを感じる作品だった。
ヒット間違いなし!の作品でもないだろうし、話題性抜群!でもない。
それでも観て良かった作品は過去にいくつもあって、これもそういう作品になると思う。