言葉に興味がある人・最近笑ってない人、みんな集まれー!『言語学バーリ・トゥード』 川添愛著
近年話題のAI。誰もが口を開けば「AIAI」言っている。歌手の「AIさん」なんて、自分の名前がここまで紛らわしいものになるだなんて、想像だにしていなかっただろう。
娘たちが受けているオンライン探求プログラムにも、AIをテーマとした回があった。
そこで先生が、「AIの技術は目覚ましい進歩を遂げています。ですが、そんなAIにもまだできないことがあります。それは何でしょう?」という質問を子どもたちに投げた。子どもたちは指名されたら答えるのだが、ある子は「食事ー!」と言い、また他の子は「けんか!」と答えた。そして「恋愛!」と答える子までいた。
そこで私は娘に入れ知恵を一つ。「知ってる?AIは『絶対に押すなよ』って言われたら、押さないんだよ。つまり、笑いを理解できない!ってこと。」。そう私に言われた娘たちは、理解したようなしてないようなで、挙手すらしなかった。「あー、答えたかったー。」と私。
どうして私がそんな「専門性」と「ユーモア」、両方を兼ね備えた入れ知恵ばできたのかって?!それは、
川添愛さんの『言語学バリー・トゥード』を読んだから!うふふ。
川添さんのご専門は、言語学と自然言語処理。AI研究にも携わったことがある、昭和生まれのプロレス好きだそうだ。
『Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか』という本書の副タイトルからもガチなプロレス好きというの分かる。本書の中でもプロレス関係のエピソードがふんだんに書かれていて、それを切り口にした専門的な思考が多くあった(というかほとんどがそれかも)。私は、プロレスのことは全くわからないけど、カフェで何度笑いを堪えたことか。語り口が独特でいて軽快。嫌なことがあった次の瞬間に読みたいくらい笑える。
本書の中で川添さんは、「言葉を適切に理解し行動できるAI」を実現する上で大きな課題がある、としている。その最もわかりやすい例として、『絶対に押すなよ』を挙げているのだ。
あのギャグは『意味と意図のずれ』により、笑いを生んでいる。
本書の解説を引用する。
「え?どこが違うの?」と思う人もいらっしゃるだろう、と川添さんも突っ込みを自分で入れながら、以下のように続ける。
このような「意味と意図のずれ」は日常的に起こっている。本書では「嫁姑のLINEでのやり取り」の話が書かれていて、これにも「あるある!実母とのやり取りでもあり過ぎて、返す言葉に困って放置しちゃう!」と物凄く納得した。
例えば昨年末の私と実母とのLINE上のやり取り。
ここでの母の意味は「お布団が足りない」。そして、それをそのまま解釈したのが私。でも、母の意図は「3家族も来たら困る。そんなに家だって広くないし。誰か遠慮しなさい。」だったんです。そんなのわかるかい!
最後に、本書の重要な部分を引用。
我々人間には、日々積み重ねてきた「各種人生経験」がある。そこを手掛かりに相手の「意図」を判断する。うん、その通り。本当にその通り。でも、母の意図がきちんと汲み取れる日は来るのだろうか。まだまだ修行が必要。
染