【研究最前線】水素を作る効率が4.9倍に! 東北大と東京理科大が新技術を開発 ─ クリーンエネルギー実現へ大きな一歩
東北大学と東京理科大学の研究チームが、従来の4.9倍も効率よく水素がつくれる、新技術の開発に成功したました。この技術は、未来のエネルギー問題を解決する大きな一歩となる可能性を秘めています。では、この画期的な研究成果についてわかりやすく解説していきますね。
水素って何がすごいの?
みなさんは「水素」と聞いて、何を思い浮かべますか?理科の実験で見た気体?燃料電池自動車?実は水素には、未来のエネルギー問題を解決する"切り札"としての期待が込められているんです。
なぜかというと、水素には2つの大きな特徴があります。1つ目は、重さの割にたくさんのエネルギーを持っていること。2つ目は、使った後に出てくるのが水だけという、とてもクリーンな燃料だということです。ガソリンや石炭を燃やすと二酸化炭素が出てきますが、水素は水になるだけなんです。
なぜ今、水素づくりの研究が必要なの?
「じゃあ、さっさと水素を使えばいいじゃない!」そう思われるかもしれません。でも、大きな課題があるんです。それは水素を作るのにコストがかかりすぎるという問題。
水素の主な作り方は天然ガスを使う方法です。でも、これでは結局、化石燃料に頼ることになってしまいます。そこで注目されているのが、水から水素を作り出す方法です。地球上には水がたくさんあるので、これが効率よくできれば理想的ですよね。
ただし、水から水素を作るには「触媒」と呼ばれる特別な物質が必要です。今使われている触媒の多くは、白金のような高価な金属でできています。この触媒のコストを下げながら、性能を上げることができれば...。そこに挑戦したのが、今回の研究なんです。
触媒活性が最大4.9倍に向上!
研究チームは、金と白金を組み合わせた新しい触媒を開発しました。この触媒は、水を分解して水素を作り出す反応(水素発生反応)の性能、つまり触媒活性を従来の4.9倍にまで高めることに成功したんです。
高価な金属の使用量を減らしながら、こんなに高い性能を引き出せたのは、研究チームが開発した特殊な「表面構造制御」という技術のおかげなんですよ。
どうやって性能を上げたの? 極小の「触媒」が主役
この研究のポイントは、ナノクラスターと呼ばれる超極小の金属粒子にあります。このナノクラスターは、なんと直径が1ナノメートル(10億分の1メートル)程度しかありません!人間の髪の毛の太さが約100,000ナノメートルなので、その小ささが想像できますね。
研究チームは、金と白金を組み合わせたナノクラスターを作り、その表面の構造を特殊な方法で制御することに成功しました。小さければ小さいほど、表面積の割合が大きくなり、より効率よく反応が進むんです。
触媒の表面を「配位子交換」でデザイン
では、どうやってこの超小さな触媒の性能を高めたのでしょうか?研究チームは「配位子交換」という特殊な技術を使って、触媒の表面構造を制御することに成功しました。
ちなみに配位子というのは、触媒の表面をおおって保護する分子のことです。従来の触媒では18個の配位子が表面を覆っていましたが、研究チームはこの配位子を12個に減らし、残りの部分には別の種類の配位子を3個だけ付けるという新しい設計を考え出したんです。
水素イオンが触媒に近づきやすくなる仕組み
この設計が効果的だったのは、触媒の表面で起こる反応の仕組みにあります。水から水素を作るには、水の中の水素イオン(プロトン)が触媒の金属の部分にたどり着く必要があります。しかし従来の触媒は、表面をおおう配位子が多すぎて、水素イオンが近づきにくい状態でした。
そこで新しい触媒では、配位子数を減らして配置を工夫したことで、水素イオンが金属コアに近づきやすくなったんです。その結果、水素を作る反応がスムーズになりました。
この技術がつくる未来の可能性
この成果は、水素製造だけにとどまらず、酸素を作る反応や二酸化炭素を別の物質に変える反応などの効率化が、可能になるんじゃないかって話です。まさに、環境にやさしい社会をつくる鍵となる技術ですよね。
将来この技術が実用化されれば、水素を今より格段に安く作れるようになるでしょう。そうなれば、水素を使った発電所が増えたり、燃料電池自動車がもっと普及したりする可能性が高まります。なので実用化に向けての取り組みにも注目していきたいです。