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旅行会社の人が、「アフターコロナの旅行業界」について考える
緊急事態宣言が始まって約1ヶ月。
リモートワークによって働き方も変化しつつあり、「オンラインの飲み会」といった新しい娯楽の手段が増えてきましたね。
自粛緩和が発表されたが、実際いつ元の世界に戻るのかは、わからない。
そもそも戻らない気がする。
アフターコロナの社会も変化を続けることが予想されます。
そんな中、旅行業界がどのように変化していくのか、旅行会社勤務の私から見て、現状を踏まえて考察していきます。
コロナ禍における旅行会社の現状
現在、旅行会社は、COVID-19の影響を受け、数多くの企業が休業や倒産の危機に瀕しています。
実際、私が勤めている旅行会社も休業を推進しており、緊急事態宣言後、私は3日間しか出勤していないです。
この記事は、トラベルビジョンが旅行会社の経営陣を対象に、4月時点での現状についてアンケートを行ったものです。
まず、決算が赤字になると答えた企業が7割以上存在するというデータ。
大規模な外出自粛や、海外や観光地の立ち入り制限があるため、旅行需要が下がっています。
需要があっても、そもそも旅行する手段がないため、旅行業界が赤字経営になるのは、至極当然のことです。
もちろん、廃業・倒産の可能性がある企業は、この大幅赤字が原因として挙げられます。
だが、意外なことに、従業員の給与をカットすると答えた企業は、3割にも満たない。
原因としては、2つ挙げられます。
まず、業務量の減少や休業等により、従業員の出勤日数や残業時間が減ったことで、人件費が抑えられていること。
旅行業界は、業務量が多く、残業時間も業務量に比例して多い業界です。
ホントに残業多い。
そのため、業務の軽減で、就労時間が減ることによって、かなりのコストカットができると考えられますね。
次に、雇用調整助成金や新型コロナウイルス特別貸付といった制度の利用。
旅行業界は、COVID-19の影響を早期から受けていたため、これらの助成金や融資といった制度に比較的早く対応でき、恩恵を受けることができたと考えられます。
以上のように、旅行業界はCOVID-19の影響をもろに受け、経営が厳しい状況にあります。
制度などを利用して倒産や廃業に耐えてはいるが、旅行ができる社会に戻ることが、何よりもの回復への近道であると考えます。
アフターコロナの旅行業界
それでは、アフターコロナの旅行業界は、一体どうなるのか。
5月14日、日本旅行業界(JATA)が「旅行業における新型コロナウイルス対応ガイドライン」を発表しました。
”具体的な感染防止対策の基本原則としては、従業員と顧客および顧客同士の接触をできるだけ避けること、来店人数の制限、マスクの着用、消毒設備の設置、店舗などの換気、顧客に対する旅行時の感染防止策の周知・啓発などを明記。また、旅行会社店舗内と旅行中の顧客について留意点を記した。”
引用:トラベルボイス
より具体的にすると、
旅行予約は、電話やメール、オンラインでの予約を主とし、密を避ける。
旅行業務は、感染状況に応じて旅行サービスを提供できているかを重視する。
といったものです。
このガイドラインは、アフターコロナの社会においても、旅行者が密を避けたいという潜在的な感情がある、前提に成り立っています。
旅行業界のアフターコロナへの対応は、いかに「密を避ける」ことを旅行客に伝えられるか、が重要性を帯びてきますね。
これらを踏まえ、具体的にアフターコロナの旅行業界がどうなるかを考察します。
アフターコロナ考察①|内的な旅行需要の増加
外出自粛が緩まった後の旅行業界では、一時的な旅行需要の爆発が考えられます。
自粛によるストレスの発散や、欲求を満たすための旅行需要増加。
しかし、この特需により、元の状態まで戻るというのは、非常に甘い考えです。もちろん、ある程度の回復は見込まれますが、COVID-19の第二波の可能性なども考えると、全快はありえない。
そこで、考えられるのが、「より内的な旅行」に対する需要です。
これまでの旅行は、「県から県へ」、「国から国へ」と、境界を跨ぐものが楽しまれてきました。
今後の旅行では、県内や隣県への旅行の需要が増えると予想します。
まず、自治体や旅行サービス業者のメリットがあります。
人の流入出が抑えられることは、各自治体や観光施設において、感染の拡大を防止できます。
現時点でかなりの観光施設やホテルが、夏あたりまでの受け入れを制限しています。夏以降、突発的な改善はあまり考えられないので、各々でターゲットを絞った戦略をとることが考えられますね。
よって、受け入れ側にも、マイクロツーリズム的なな旅行は需要があると考えられます。
次に、旅行者へのメリットです。
旅行者の「潜在的なコロナに対する恐怖」は、しばらくはなくならないと予想できます。
これには、2つの恐怖があります。
まず、「自分が感染するかもしれない」という恐怖。
もう一つは、「見知らぬ地で移動に制限がかかるかもしれない」という恐怖。
2月末から3月にかけて、ヨーロッパでは大規模な入国制限がかかった。それにより、実際に帰れるかわからなくなった人、報道で見て焦った人、多くの人が影響を受けていると考えられます。
アフターコロナでも、この感覚は消えることはないので、旅行客の心的要因に影響を及ぼします。
以上の理由から、より内的でマイクロツーリズム的な旅行の需要が増えると考えられます。
旅行会社は、この需要をどう活かすかがカギです。
アフターコロナ考察②|ヴァーチャル旅行からの導入
アフターコロナでは、ヴァーチャルな旅行から実際の旅行への導線が増えると予想されます。
これは一体どういうことか。
現在、SNSでは、InstagramとYouTubeの二つが台頭しています。
これらのSNS媒体から情報を得て、購買活動に活かすことがマーケティングにおいても主流になってきました。
それは、旅行業界においても同じですね。
COVID-19の影響で、旅行のハードルが今までより上がったことにより、旅行に行く前により正確な情報を入手することが重要になります。
よって、今流行している「旅行のVR動画」や「旅行のvlog」により旅行の情報を得た消費者が、旅行に行くという導線が確立するだろうと思います。
では、旅行業界は、このSNS媒体を活かして、どう変化するか。
InstagramやYouTubeでインフルエンサーを積極的に利用する企業が増えると予想されます。
今までも、インフルエンサーを利用したマーケティングを行っている旅行会社は、あったと思いますが、より一層増えるだろうという予想です。
SNS媒体で消費をする層には、インフルエンサーの影響が大きく考えられます。
彼らは、魅力的に、かつ消費者に近い距離間で情報を発信している。
よって、インフルエンサーの発信に影響を受け、消費行動に移る人が多く存在します。
旅行に対する情報が重要化した社会では、デジタル媒体で魅力的な発信をできる企業が生き残るだろう。
アフターコロナ考察③|「密」情報の周知化
アフターコロナの旅行業界では、「密」情報を消費者に周知させることが重要になるだろうと考えます。
今までの旅行パンフレットでは、旅行の行程や注意事項などを記載することに留まっていました。
今後は、これらの情報に加え、感染対策や「密」についての情報を記載することになると考えます。
消費者が旅行の情報に求めることが変わっていくということです。
これまで重要視されていた「行き先」「プラン内容」「食事内容」等に加え、感染へのリスク対策を求められます。
「バイキングのトングは、どう処理しているのか」
「施設の係員は、マスクを着用しているのか」
といった、情報が求められます。
より真摯に感染への対策を行っている自治体・施設、その情報を開示している旅行会社が評価される時代になるだろう。
アフターコロナからウィズコロナへ
以上、アフターコロナで予想される旅行業界の変化について考察してみました。
この考察は、あくまでも私の考えですので、当たるかどうかはわからないです。
重要なのは、各々が先を見据えて考えを持つことです。
今後なにが起こるかわからない時代で変化を予測することで、重要な局面での対応ができると考えます。
アフターコロナの旅行業界と題しましたが、今後はコロナと向き合い「ウィズコロナ」の視点で業界を見ていくことが重要です。