先延ばしを簡単に解決する方法
今回は「予想通りに不合理」という本を読んで、印象に残った話を紹介しつつ、本書を通して僕がこれから意識していきたいことについて書いていきます。
まず、本書の内容を大まかに説明すると、行動経済学の実験の内容と共に、人間がいかに不合理な選択をするかを紹介してくれる本です。今回は、数多くの実験の中から印象に残った3つの実験を紹介していきます。
先延ばしを解決する方法
先延ばしは誰もが悩んでいることではないでしょうか。
貯金、ダイエット、筋トレなど。やるべきと分かっていてもなかなか始められませんよね。
結論から書くと、先延ばしは「決意表明」をすることで解決できます。つまり、「締め切りを事前に設定し公開する」ということです。
本書ではこんな実験が紹介されていました。
とある大学の学生を3つのグループに分けて、それぞれで3つのレポートの提出期限を変えました。
1つ目のグループでは、学期末までに3つ全てのレポートに提出期限を学生自身に決めさせて、その期限までに提出させる。つまり、レポート1はこの日まで、レポート2はこの日まで、レポート3はこの日までに提出すると事前に決めさせました。
2つ目のグループでは、3つのレポートの締め切りを学期末のみに設定しました。
3つ目のグループでは、教授が3つのレポートに3つの締め切りを設定しました。
この3つのグループで最終成績が最も良かったのはどのグループだと思いますか?
答えは、3つ目のグループが一番成績が良く、次に1つ目のグループ、次に2つ目のグループでした。
この結果、先延ばしには自由を厳しく制限することが一番効果があることが分かりましたが、学生に締め切りをあらかじめ決意表明できるようにするだけで、成績が良くなることが分かりました。
1つ目のグループの学生は、2つ目のグループの学生と同じように3つのレポートの期限を学期末に設定することができた訳です。しかし、ほとんどの学生がそれをしなかった。つまり、学生は自分の先延ばしの問題を理解していて、機会を与えればその問題に取り組み、成績を向上させることができるということです。
さらに、1つ目のグループの平均点を下げたのは、締め切りに適切な間隔をあけなかった(2つ目のグループとほぼ同じ締め切りに設定した)一部の学生でした。
この実験結果を僕の実生活で考えてみると、運動不足を解消したいので、運動する曜日とその結果をSNSもしくは友達に共有すると良さそうです。運動ならば、友達と一緒にやる約束をしても良いですね。
お金が絡まない方が人は熱心に働く
これは、少額でもお金が発生した時点で人の考え方、行動が変わってしまうという話です。当たり前のようにも思えますが、これは何故なのか。本書では、僕らは2つの異なる世界「社会規範が優勢な世界」と「市場規範が規則を作る世界」に同時に生きているからだと説明しています。
社会規範には、友人同士の頼みごとが含まれます。例えば、引っ越しの手伝いや、友人を家まで車で送ってあげるなど。とてもほのぼのしていて、即座にお返しをする必要のない世界です。
一方、市場規範には賃金、価格、賃貸料、利息、費用便益などが含まれます。対等な利益や迅速な支払い、支払った分に見合うものが手に入る世界です。
この2つの世界の効果を研究するためにこんな実験が行われました。
実験協力者にコンピュータの画面の左端に表示される円を、右側に表示される四角までドラッグする課題を行ってもらいました。四角までドラッグすると、画面から円が消えて、最初の位置に新たな円が現れる。実験協力者に出来るだけ多くの円をドラッグするように言い、5分間で円をいくつドラッグできるかを測定しました。
1つ目のグループには、5ドルを渡してからこの課題を行ってもらいました。労力に対してお金が支払われるため、市場規範が適用されるはずです。
2つ目のグループには、報酬をはるかに少なくして課題を行ってもらいました。これも1つ目と同じ理由で市場規範が適用されるはずです。
3つ目のグループには、社会的な頼みごととして課題を提示しました。このグループにはお金の話をせず、力を貸してくれないかと頼んだだけです。つまり、この状況ならば社会規範が適用されるはずです。
この結果、一番熱心に働いたグループはどこだったと思いますか?
答えは、3つ目のお金を支払っていないグループでした。1つ目の5ドルを受け取ったグループより僅かに多く、報酬を少なくしたグループよりはるかに多くの円をドラッグしたのです。
この結果から分かるように、報酬を受け取った2つのグループでは多くの報酬をもらったグループの方が多くの円をドラッグしました。
人がお金のためより信条のために熱心に働く例は他にもあります。
弁護士に対して、30ドル程度の低価格で困窮している退職者の相談に乗ってくれないかと依頼しました。この依頼を弁護士は断りました。しかし、困窮している退職者の相談に無報酬で乗ってくれないかと依頼すると圧倒的多数の弁護士が引き受けると答えたのです。
これは面白い話ですよね。30ドルより0ドルの方が魅力的に見えるとは思えません。では何故なのか。
お金の話が出た時、弁護士は市場規範を適用したため、市場での収入に比べてこの提示金額では足りないと考えたのです。
お金の話を抜きにすると、社会規範を適用し、進んで自分の時間を割く気になりました。
30ドルのボランティアと考えても良かったのでは?と思いますが、本書では考えのなかに市場規範が入り込むと、社会規範が消えてしまうからだと説明しています。
この内容を読んだ時、僕も同じことを経験したことがあったのでとても印象に残りました。以前に母親が開業するということで、HP制作を依頼されました。最初は無報酬の頼みごとでしたが、途中で少額の報酬が発生しました。それ以降、僕はどうしても報酬を時給換算してしまい、割に合わないなと頭のどこかで考え熱心に取り組むことができませんでした(締め切りギリギリで尻に火がついてしっかり終わらせました笑)。途中から報酬が発生したので、最初から報酬が発生していたら、僕はもしかすると断っていた可能性もあったのかもしれません。
人に何かを依頼するときには、それが十分な報酬になるのならばお金を支払うべきですが、それが無理ならば社会規範を適用してもらう方法を考えると良いかもしれません。
無料の力
これは想像しやすいと思いますが、無料を提示されるだけで人は合理的な選択ができなくなるという話です。
本書ではこんな実験が紹介されていました。
チョコレート屋で、誰もが知っているような高級なチョコとごく普通の安いチョコをテーブルに並べて、どちらか1つのみを購入できるようにしました。値段は高級チョコを15セント、普通のチョコを1セントにしました。
この価格設定の場合は、予想通り、お客さんは合理的な選択をしました。高級チョコと普通のチョコの値段と品質を比較してから、どちらかを選びました。その結果、73%が高級チョコを買い、27%が普通のチョコを買ったのです。
次に、高級チョコを14セント、普通のチョコを無料にしました。この結果どうなったか。69%が普通のチョコを選び、31%が高級チョコを買いました。普通の経済理論で考えれば、この値下げでは相対的な変化がないので、お客さんの行動は変わらないはずです。ただし、実際には無料のチョコに偏りました。何故なのか。
本書では、商取引にはメリットとデメリットがあるが、何かが無料になると僕らはデメリットを忘れ去り、実際の価値よりもずっと価値のあるものだと思い込んでしまうと説明しています。さらに、これは、人間が失うことを本質的に恐れているからではないかとも言っています。無料の真の魅力は恐れと結びついていて、無料を選べば目に見えて何かを失う心配はない。無料でないものを選ぶと危険性がどうしても残ってしまう。だから、無料を選んでしまう。
このブログを読んでいる人の中には、自分は無料の力を制御することができると考えている方もいるでしょう。では、問題出します。
無料で1000円分のAmazonギフト券を受け取るのと、700円出して2000円分のAmazonギフト券を受け取るのではどちらが良いですか?
ぜひ、即答を。
これから意識したいこと
本書を通して、意識していきたいことを色々と考えましたが、やはり「自分が直感的に正しいと思えるものでも、不合理な選択をすることがある」ということを理解する。に落ち着きました。
とても抽象的で難しい話ですが、自分の選択を常に疑いながら冷静に合理的に考えて行こうと思います。
また、このブログでも紹介した先延ばしの対処方法や、紹介はしていないけれど、本書で紹介されていた社会規範と市場規範の混同を避けること、アンカリング効果、プライミング効果、プラセボ効果など、具体的に意識できることは意識していこうと思います。
このブログで本書に少しでも興味を持った方がいましたら、ぜひ購入してみてください。