【産婦人科専門医のQ&A】vol.5 妊娠初期の過ごし方が知りたい。出生前診断もそろそろ……?
この連載では、読者から妊娠・出産・育児にまつわるさまざまな疑問を募集。そして、子宮頸がん予防やフェムテックなど、エビデンスに基づいた情報発信に力を入れている産婦人科専門医・稲葉可奈子先生にお答えいただきます。
第5回は、妊娠初期の過ごし方について。初期流産が多い12週までは、日常で不安になることも少なくない時期です。心すこやかに過ごすためにも、正しい知識を身につけておきましょう。
■妊娠初期は流産が多いと聞きました。何に気を付ければいいですか?
妊娠12週までに起きる初期流産は、ほとんどが胎児の染色体異常です。「最初から、それ以上は成長できない受精卵だった」ということ。妊娠初期にお酒や薬を飲んだり、忙しく働いたりしていたとしても、母体の行動が原因で流産するわけではありません。
そのうえで、どうしてもなにか気を付けたいとおっしゃるなら、心配しすぎず、ご自分の心身がリラックスできる時間を増やすのがよいと思います。ただし「身体を冷やさないように心がけるといいですよ」などとお伝えすると、流産したときに「身体を冷やしてしまったからだ!」とご自分を責めてしまう方がいらっしゃるので……大前提として「初期流産は母親のせいではない」ことは覚えておいてくださいね。
■4週で妊娠がわかりました。以降、1~2週間ごとに受診するように言われ、お金もかかるし頻度が多くて大変です。初期の検診は間引いても大丈夫ですか?
お忙しいなかで検診に通うのは大変ですよね。でも、間引かないことをおすすめします。
5週ごろはちゃんと子宮内に妊娠しているか、6~7週ごろは胎児の心拍が確認できるかをチェックしています。9~10週ごろは、胎児の成長を見ながら出産予定日を決めるタイミング。子宮外妊娠ではないことや、胎児が順調に成長しているかを確認するためには、初期は少しこまめな診察が必要なんです。
■周りへ妊娠を報告するタイミングに悩みます。お医者さんのおすすめ時期はありますか?
報告をする相手との関係性や妊娠経過によるものなので、一概におすすめできる時期はありません。ただ、流産の多い初期はとくに何があるかわからない時期なので、それを越える妊娠12週はひとつの目安といえるでしょう。ただ、つわりのひどい方は、12週までの初期の時期に日常生活や仕事に影響が出る可能性も。なので、周りのサポートが必要になる場合は、もう少し早めに報告・相談をするとよいと思います。
■筋トレやランニングが趣味です。妊娠しても、日ごろのトレーニングは続けていいですか?
ある程度の有酸素運動は、妊娠中の合併症や出産時のリスクを下げるというデータがあります。無理をせず、リラックスして楽しめる程度の運動はむしろおすすめです。ただし、気づかないうちに切迫早産になっていることもあるので、妊婦検診で主治医に「運動していいですか?」と確認しましょう。
■出生前診断を受けるのは妊娠初期だと聞きました。ちょっと気になるのですが……?
この数年で出生前診断の認知がぐっと広がってきたため、なんとなく気になる……という方が増えているようです。「たぶん大丈夫だろう」と深く考えずに検査をして、何らかの問題があるかもしれないという結果が戻ってきたとき「どうしたらいいの?」と慌てる方もいらっしゃいます。
出生前診断の多くは10~16週での診断が可能。でも、もしも結果によっては中絶を検討する可能性がある場合は、週数が進むほど母体に与える影響は大きくなります。なので、まずは検査を受ける前にパートナーと「何のために受けるのか」「異常がわかったらどうするのか」をよく話し合うことが大切。結果を知ったあとのアクションまで検討しておきましょう。
また、出生前診断にはさまざまな種類があります。それぞれ精度が異なるうえ、結果は確率でしか算出されないため、「100%大丈夫」という答えが出ることはありません。必要以上に不安になることがないよう、どんな検査なのかをきちんと理解してから受けるようにしましょう。詳しい説明やカウンセリングも用意されている病院での検査をおすすめします。