ツルボエンジン
「この爆音で直送Party
Windowsガラス割ってパリーン
お前の耳のトンネルに LRTwinturbo」
(ピーナッツくん・TwinTurbo)
「ファン」を「フアン」と発音しているお年寄りに出会ったことはないだろうか?
私はある。というか、祖父母(1945年生まれ)がそうである。
「ドーナツ」を「ドーナッツ」と発音していることに気づいた時は特に気にしなかったのだが、「ツナ」は「ツナー」「タトゥー」は「タトー」というように具体例が増えるにつれ、私の疑念は確信に変わった。彼らは外来語を日本語的に発音することに関して、独自のセンスを持っている。
祖父母の息子である私の父にこの話をしてみたところ、興味深い事実が提供された。
祖父の母である曽祖母(1923年生まれ)は、国鉄がJRになってからも、しばらく「国鉄」と言い続けた。しかし、曽祖母はある時に「国鉄」と言わなくなり、代わりに「ゼイアール」と言うようになった。父は最後まで指摘しなかった。
また、おそらく曽祖母の視力が落ちてから出会ったであろう「減塩醤油」のことを、彼女はずっと「滅塩(めつえん)醤油」と呼んでいたらしい。塩滅の刃を連載するなら、上弦の壱はラーメンだろう。お年寄りが塩分を滅したい気持ちは分からなくもない。
また、曽祖母の夫である曽祖父(1918年生まれ)も、カタカナ語おもしろ選手権において優秀な成績を残していた。
ある時曽祖父と父が会話していると、曽祖父が「あの車はツルボやから」と発言した。「ツルボ」が何を示すか理解できなかった父は、「ツルボってなんや」と聞き返した。祖父は言った。「ほら、後ろに貼ってあるやろ、ツルボって」
父は理解した。ターボだ。曽祖父は、”TURBO”を「ツルボ」と読んでいたのだ。
曽祖父がドイツ語を嗜んでいたはずはないが、ドイツ語の才能はあったのかもしれない。