終末とさきがけ
巨大隕石の衝突はいよいよ三日後に迫っていた。
けれど今更慌てるような人はいなかった。
実際に隕石が観測がされたのは五年前で発狂して自殺するような奴はこの何年かで大方死んでしまったし終末だからとヤケクソに暴れるような連中も充分暴れ尽くしたらしい。
NASAやらナントカ財団やら様々な機関が手の限りを尽くしてもどうにもならなかったのだ。
だから今は最後の時間を平和に過ごしたいという人々が穏やかに過ごしているだけだっだ。
それでいて今日は花が咲いていた。
隕石の影響で気候がめちゃくちゃになったのかは知らないが花が咲いている。
それも全部の花だ。桜に紫陽花に朝顔にひまわりにコスモスに、本当に全部の花が咲いていた。
次の日、動物達が現れた。ミミズが土から這い出してセミが鳴いて鈴虫も鳴いた。
昨日さなぎになった芋虫が蝶々になって飛んでいた。孔雀は目一杯鮮やかな尾を広げている。ライオンがシマウマを追いかけている。マグロは泳ぐことをやめない。
以前の白亜紀の大量絶滅では恐竜を中心に七割以上の生き物が絶滅したらしい。
その時はどこかで細々と暮らしていた哺乳類が生き残って今の人類に進化したのだ。
きっとその時も今日と一緒だったんだろう。みんな必死に生きようとしていた。だから誰かが生き残るのだ。
次の日、人々は歌っていた。人それぞれ違う歌を違うリズムで違うメロディーでそして同じハーモニーで歌っていた。
風に舞う花びらには全ての色があった。
地と海と空で蠢き続ける生命には全ての音があった。
「光あれ」
次の日、光があった。
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