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大沢温泉は「初めての湯治」に最適な宿
前回の記事で「温泉ワーケーションの拠点として湯治宿が有力候補になる」とお伝えしたが、これまで湯治宿に泊まったことがない人も多いだろう。そこで、今回は初心者でも比較的安心して滞在できる湯治宿を紹介したい。
〈前回の記事はこちら〉
湯治宿って、本当に大丈夫?
「そもそも療養目的でない人が湯治宿に泊まっていもいいの?」
「湯治宿って古くてボロいイメージ。私に耐えられるかな?」
「なんだかんだいって、安かろう悪かろうじゃないのか?」
このような心配が頭をもたげる人もいるかもしれない。たしかに、なかには温泉初心者には居心地の悪いディープな宿や、神経質な人やキレイ好きな人には耐えがたい環境の宿も存在する。連泊することが前提となるので、苦痛を感じるような宿は避けたいところだ。
そこで今回紹介するのは、湯治宿の料金設定でありながら、初心者でも比較的安心して滞在できる宿である。
宮沢賢治も愛した大沢温泉
宮沢賢治の故郷でもある岩手県花巻市にある「大沢温泉」は、豊沢川沿いの峡谷に点在する8つの温泉地から構成される花巻南温泉郷のひとつ。足元湧出泉で、立ったまま入浴する「白猿の湯」が有名な鉛温泉藤三旅館も、この温泉郷を構成する出湯のひとつだ。
大沢温泉には、宮沢賢治も少年時代から何度も訪れ、学生のときには悪ふざけをして湯を汲み上げる水車を止めてしまい、風呂場が大騒ぎになったというエピソードが残っているとか。
大沢温泉は一軒宿だが、規模は大きい。一般客向けの立派な新館「山水閣」、南部藩主の定宿で茅葺きの建物が風情ある「菊水館」、湯治客向けの昔ながらの「湯治屋」の3軒で構成される。
昔ながらの湯治宿が現代風にリニューアルされるケースは少なくないが、大沢温泉のように昔からの湯治客も大事にしながら、新しいお客のニーズにも応えるという経営姿勢には共感できる。
湯治宿とは思えない丁寧な接客
「湯治屋」の帳場でチェックインをすますと、ダンディーな従業員が荷物をもって、館内の説明をしながら部屋まで案内してくれた。接客は普通の旅館以上に丁寧で好感がもてる。
多くの湯治宿では、ここまでの対応をされることはない。いい意味でも、悪い意味でもぶっきらぼうな場合が多い。従業員の方いわく、「湯治を知らない若い人にも湯治文化の良さを知ってもらいたい」とのこと。たしかに、古びた湯治宿に抵抗がある人にとっては、ぐっと敷居が下がり、好印象につながるだろう。
昔ながらの木造で畳敷きの部屋は年季が入っていて壁も薄いが、そのぶん風情がある。ピカピカに清掃が行き届いているのは、さすが歴史のある温泉宿である。
なお、2015年から全館Wi-Fi完備である。壁が薄い部屋だとウェブ会議などは気を遣う必要はあるが、最低限の仕事環境は備わっているといえそうだ。
自炊にチャレンジするのも一興
湯治屋に宿泊した場合は、自ら料理をつくるのが基本。共同の炊事場にはひと通りの設備が整っていて、夕方になると多くの湯治客が料理を始める。なお、売店には食材も充実しているので、現地調達でもなんとかなる。
旅先で料理をするのもレジャーのひとつととらえれば、けっこう楽しいと思うが、どうだろう。
「自炊はちょっと・・・」という人でも大丈夫。館内にはメニューが充実した食事処があるので食事に困ることはない。
やさしい泉質と絶景の露天風呂
当然、温泉もすばらしい。山水閣、菊水館、湯治屋それぞれに個性的な浴室があり、湯めぐりをするのも楽しいが、いちばんのお気に入りは宿の名物でもある「大沢の湯」。
30人くらいが同時に入浴できそうな混浴の露天風呂で、湯船のすぐ横を豊沢川が静かに流れるロケーションがいい。清流をボーっと眺めながら、湯船に浸かっていると、時が経つのを忘れてしまいそうになる。
しっとりすべすべとした透明湯は、源泉かけ流し。強烈な個性を主張するタイプではないが、やさしい肌触りが印象に残る。万人に愛されそうな湯である。
世の中のいわゆる名湯と呼ばれる温泉のなかには、湯の個性が強すぎて「1度入れば十分」と思うようなものもある。しかし、大沢温泉の湯は、長時間入っていても体にやさしいし、何度も入りたいという気になる。変なたとえかもしれないが、恋人にしたいタイプではなく、結婚したいタイプの湯である。
このようなやさしい肌触りの湯は、連泊が基本となる「温泉ワーケーション」に適している。湯あたりする心配も少ないし、滞在中に何度も入浴を楽しむことができる。
料金は驚きの2000円台から
肝心の料金は、1泊素泊まりで2593~4121円(1人泊の場合。シーズンで異なる)。ちなみに2人で宿泊の場合は2389~2899円である。かなりリーズナブルだといえよう。
ただし、布団や浴衣、アメニティーなどは別途料金がかかるので、持参できるものはできるかぎり用意していったほうがいい。
大沢温泉は、湯治初心者や若い女性の利用も多いという。気軽に温泉ワーケーションを体験できる宿としておすすめである。
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![高橋一喜|温泉ライター](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/56316518/profile_66518b3600b0cb8bf2e0054cfabb8aef.png?width=600&crop=1:1,smart)