「湯の川温泉」でワーケーションをしてきた話【移動編】

5月の平日を利用して6泊7日の「温泉ワーケーション」に出かけてきた。数回にわたって執筆していくが、今回は、プロローグとしてワーケーションの滞在先に向かう途中で起きたトラブルについて触れておきたい。

まさかの「視界不良」

舞台は北海道函館市にある「湯の川温泉」。

「日本一空港から近い温泉街」とされるアクセスの良さが魅力である。函館空港から車で5分ほどの距離なので、電車よりも飛行機のほうが便利だ。一般に空港は市街地から離れたところにあるので、函館空港のようなパターンは珍しい。

札幌在住の私は、往路は飛行機で一気に飛び、復路は特急列車でゆっくり返る計画だった。ところが、往路の飛行機で予想外の事態が発生した。

新千歳空港から飛んだ便が、函館空港の「霧による視界不良」のため、引き返すことになったのだ。

着陸寸前でまさかのリターン

北海道の場合、冬の間は降雪などで飛行機が飛ばないことはよくあるので、そのようなトラブルが起きる可能性は織り込んでいるが、まさか霧による視界不良とは・・・。当日は天気もよかったし、完全に想定外だった。

搭乗する前に「引き返す可能性がある」というアナウンスはあったが、ほとんど気にかけていなかった。なぜなら、過去に5回くらいそのような便に乗ったことがあるが、いずれも無事に着陸していたから。万一のときに乗客のクレームを和らげるために、リスクは低くても念のためアナウンスするのだろう、くらいに思っていた。

新千歳から函館空港までは40分のフライトである。あっという間に着陸態勢に入った。だが、「視界不良のため着陸できない」とのアナウンス。霧が晴れるまで上空を旋回するという。

1時間くらい旋回を続けていて、さすがに機内には嫌な予感が漂い始めたが、「着陸を試みる」という機長のアナウンスにひと安心。

風も強いのか、がたがたと揺られながら飛行機を高度を下げていく。滑走路が見えて、飛行機の車輪も出てきた。「よし大丈夫だ!」

ところが、いよいよ着陸寸前というタイミングで、機体が大きく揺れた。次の瞬間、飛行機は急激に高度を上げて、再び上空へ。

ぐんぐんと高度を上げて再び旋回を始めたが、機長からは非情なアナウンス。

「霧がはれる見込みがないため新千歳空港に引き返す」

着陸寸前だっただけにショックだったが、安全第一であるから仕方ない。他の乗客も覚悟ができていたのだろうか、ため息がもれる程度で騒ぎ出す人はいなかった。

急遽、電車移動に

30分ほどで新千歳空港に着陸。すごろくで「スタートに戻る」というマスに止まってしまった気分。

後日、函館空港のスタッフに聞くと、着陸断念から数十分で霧ははれたという。あまりにタイミングが悪かったということか。その証拠に他の便はすべて無事に発着できていた。

気を取り直して、陸路で函館へ向かうことに。飛行機の振替便を利用するか、電車かバスで移動するかの選択を迫られたが、振替便は夕方まで便がなく、席が取れたとしても何時間も待つことになるので、特急列車で移動することを決断。30分後に南千歳駅から函館行きの特急に乗れたのはラッキーだった。

当初の計画では、函館に12時くらいに到着する予定だったが、結局、特急が函館に着いたのは17時過ぎ。ずいぶんと遠回りすることになったが、思い通りにいかないのが旅の醍醐味でもある。このくらいのトラブルは旅のエッセンスになる。本を読める時間がたっぷりとれたのでよかったとしよう。

唯一困ったのは、移動中に食事を一切とれなかったこと。昼ご飯は函館についてから食べる予定だったので、朝食を食べてから何も口にしていなかった。しかも、飛行機から特急列車に乗り換える際、時間があまりなく移動を急いでいたので、食事のことを考える余裕がなかった。

ひとたび南千歳駅から列車に乗れば函館まで3時間超かかる。車内販売がないことは知っていたが、「このままでは夜まで何も食べられない」と気づいたのは南千歳駅のホームの上。駅弁も売店もない。万事休す。

数分後に滑り込んできた列車にそのまま乗り込むこととなってしまった。非常食としてお菓子のひとつでも買っておけばよかった・・・と後悔したのだった。

腹ペコのまま函館に到着。ワーケーションで滞在する宿は素泊まりだったので、急ぐ必要はない。函館ラーメンを食べてから湯の川温泉街へと向かった。

〈次回へ続く〉


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高橋一喜|温泉ライター
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