ご褒美としての「温泉ワーケーション」
せっかくワーケーションに行くなら、高級旅館に泊まって贅沢な時間を過ごしたい――。ワーケーションの半分は「バケーション」なのだから、そういう選択肢があるのは当然だ。
今回は、「高級旅館で温泉ワーケーション」という選択肢について考えてみよう。
「高級旅館」の定義とは?
何をもって「高級旅館」と呼ぶか? その定義は人によってさまざまだろう。金銭感覚や価値観も異なる。
たまにしか贅沢をしない人にとっては、1泊2万円を超えたら「高級」という位置づけとなるかもしれない。一方で富裕層の中には10万円を超える宿を高級旅館と呼ぶ人もいるだろう。
高級旅館の定義は、それぞれの人の心の中にある。私にとっての高級旅館の定義は、「ストレスを感じることなく過ごせる宿」である。
料金だけで高級かどうかは測れない
温泉の質がよければ満足する私の場合、世間一般で「高級」と位置づけられる旅館に泊まるケースはそう多くはない。
その限られた経験から言えることは、高級旅館はとにかく隙が少ない。旅館に泊まると、たいていは「テレビのリモコンに埃がたまっている」「浴場の桶が揃っていない」「仲居さんの言葉遣いが気になる」「天ぷらや焼き魚が冷めている」といった些細な部分が目につくものである。
私はもともと、こうしたことをそれほど気にするタイプではないし、「値段相応だから仕方ない」と心の中で片づけてしまう。
だが、いわゆる高級旅館に位置づけられる宿の多くは、こうした些細なイライラが生じる隙がない。ストレスなく、快適に過ごすことができる。だから、誰かを安心して連れていくことができる。実際、私が大事な家族や恋人と泊まるときに選ぶのは「ストレスのない高級旅館」である。
反対に、どんなに料金が高額で、料理がすばらしくても、清掃が行き届いてなかったり、スタッフの言動が気になったりするような宿は、私の中では「高級旅館」の範疇には入らない。
高級旅館での連泊は現実的ではない
さて、少し前置きが長くなった。温泉ワーケーションで高級旅館を利用するという選択肢は「あり」だろうか、それとも「なし」だろうか。結論を先にいえば、条件付きで「あり」だ
私は「温泉ワーケーション」における宿選びの条件として、①源泉の質が高いこと、②仕事ができる最低限の環境が整っていること、③連泊ができることの3つを挙げている。
①はその旅館にもよる。高級だからといって温泉がいいとは限らない。清潔感や豪華さを優先し、循環ろ過しているケースは少なくない。温泉の質と宿泊料金は反比例するというのが、温泉業界では常識である。
②については、まずほとんどの宿がクリアするだろう。Wi-Fiは間違いなく飛んでいる。だが、仕事が目的で高級旅館に宿泊する人は少ないため、特別仕事がしやすい環境とはいえない。
③の連泊については、現実的ではないだろう。お金に糸目をつけない富裕層であれば別だが、高級旅館に連泊できるほどの資金をもっている人は少数派だ。そもそも高級旅館の料理がどれほどおいしくても、連日あの量を食べるのはしんどいだろう。
以上の3条件から考えると、高級旅館で温泉ワーケーションはあまり現実的とはいえない。ワーケーションではなく、普通の旅行で宿泊すればいいという考え方もできる。実際、私も高級旅館でワーケーションをしたいとはあまり思わない。
徹底して非日常を体験する
ただ、温泉ワーケーションの目的に照らし合わせれば、「絶対になし」とはいえない。
「温泉で心身を休めながら、仕事の成果につなげる」ことが温泉ワーケーションの目的のひとつであるなら、温泉につかりながら、ビジネスプランやアイデアを練るといった利用法はありではないだろうか。
先ほど述べたように、高級旅館の定義はそれぞれ異なるが、「自分にとって特別な時間を提供してくれる宿」であることは共通しているだろう。日常から離れて、高級感あふれる場でとことんリラックスし、ゆっくり思考をめぐらせる時間をつくる。自分にとって非日常の環境だからこそ、クリエイティブな発想も生まれやすい。
たとえば、1泊もしくは2泊のスケジュールで高級旅館に滞在し、徹底的にリラックスし、思索にふける。PCは持ち込まず、スマホの電源もオフにする。そんな非日常のリラックスした時間を演出できるなら、ワーケーションとして高級旅館に泊まる意味もあるだろう。
「年に一度は、自分や家族へのご褒美を兼ねて高級旅館で温泉ワーケーション」という選択肢もあっていい。
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