「湯の川温泉」でワーケーションをしてきた話【温泉編】
引き続き、6泊7日の北海道・湯の川温泉での「温泉ワーケーション」の模様をお伝えしたい。
今回は滞在の拠点となった宿の温泉を紹介したい。
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松前藩主も入浴した湯
湯の川温泉は、登別、定山渓と並ぶ「北海道三大温泉郷」のひとつ。観光地として人気の高い函館の市街地からバスで20~30分ほどの距離なので、観光の拠点として湯の川温泉に滞在する観光客は多い。
おすすめは市電。いわゆる路面電車が走っていて、函館駅から湯の川温泉までを30分ほどで結んでいる。ゆっくりと車窓から街並みを眺めるのも楽しい。
湯の川温泉の開湯は定かではないが、1453年に湧き湯を見つけた木こりが負傷した際に腕の痛みを湯治して癒していたとか。 後に薬師如来をつくり、小さな祠を建てて祀ったことが湯川村薬師堂(現在の湯倉神社)の発祥とされている。
江戸時代には松前藩の藩主が湯治をしている。1653年、松前藩主九代・高広が難病にかかった。病は日に日に悪化していったが、母の清涼院は「松前城の東にある温泉に行けば、どんな病も治る」という夢を見る。その温泉に高広を湯治させるとまもなく全快。藩はお礼に薬師堂をを再建、鰐口を奉納した。
また、箱館戦争のときには旧幕府軍の負傷兵が療養していたという記録も残る。榎本武揚や土方歳三も入浴したのだろうか。
加水・加温・消毒なしの「源泉かけ流し」
さて、今回「温泉ワーケーション」の拠点となった「笑 函館屋」の温泉を紹介しよう。
1階にある浴室は男女別で、朝に男女が入れ替わるスタイル。夕方から夜にかけての男湯は、内湯が2つと半露天風呂がひとつ。内湯は大きいほうは42℃くらいの適温、小さいほうは35℃ほどのかなりのぬる湯。半露天風呂は41℃くらいで少しぬるめだった。
個人的には泉温もサイズも内湯の手前の大きな湯船がお気に入りで、毎回この湯船につかった。
源泉は5つの井の混合泉で、泉質はナトリウム・カルシウム‐塩化物泉。無色透明だが、たしかな塩分を感じる湯。成分総計は8.295g/㎏なので、少し重め。
無色透明だが、湯口には析出物がびっちりと付着していることから、成分の濃さが感じられる。ちなみに、湯の川温泉には一部に緑色に濁る源泉もあるが、基本的には透明湯が多い。
湯の川温泉は大型の旅館が多いこともあって循環している湯船が多いが、「笑 函館屋」は源泉かけ流し。加水、加温、消毒もなしという理想的な湯使いを実現している。
源泉が60℃を超える高温なので湯口からの投入量は少なめだが、源泉かけ流しにこだわっている点は好印象である。
朝に入れ替わる男湯は、内湯と露天がひとつずつ。内湯は20人くらいが入れそうな大きな湯船で、42℃くらいの適温。同宿の湯船のなかでは、いちばん湯の鮮度がよく感じられ、浸かり心地のよい湯船だった。
なお、露天風呂は7~8人は入れそうな岩風呂。一方の半露天よりも風情はある。
近くには温泉銭湯もあり
難点を挙げるとすれば、入浴時間が15時~朝9時までで、昼間の時間は入浴できないことだろうか。温泉ワーケーションで連泊する立場としては、一日中どこかの湯船に入浴できるのが理想だが、清掃もしなければならないので致し方ないだろう。
滞在中の入浴スケジュールは、起床後、(宿泊客が少ない)15時頃、そして就寝前の3回が基本だった。個人的には1日3~4回が理想なので、昼間に入浴できないことによるストレスはほぼ感じなかった。
どうしても昼間の時間帯も入浴したいなら、温泉街にある温泉銭湯を利用するのも手だ。宿から徒歩5分くらいの距離に「大盛湯」がある。函館の温泉銭湯は湯が熱いことで知られるが、アツ湯が好きな人はぜひチャレンジしてみてほしい。
ワーケーションに適した部屋や設備が整った宿は、温泉は二の次になりがちだが、「笑 函館屋」は温泉の質にもこだわりを感じる。湯を重視する人も充実した「温泉ワーケーション」ができる佳宿である。
〈次回に続く〉