職業としての「温泉ライター」
noteを始めてから、まもなく1カ月が経とうとしています。最初の記事で、簡単なプロフィールを書きましたが、使い方がよくわからないまま投稿してしまったので、あらためて自己紹介と温泉ライターという仕事についてまとめておきます。
〈初投稿はこちら〉
温泉に興味をもったきっかけ
温泉に興味を抱いたのは、新卒で会社員になってからまもない頃、今から20年前のことです。当時の私は、温泉どころか、家の風呂も大嫌いで、まさに烏の行水でした。温泉旅館に泊まっても、ろくに湯船につからず、シャワーで済ませていたほどです。
そんな私の人生を変えたのが、当時お付き合いしていた彼女と一緒に訪れた和歌山県の南紀白浜温泉。旅行の目的は、ズバリ、アドベンチャーワールドで産まれたばかりのパンダだったのですが、この地で温泉にドハマりすることになったのです。
南紀白浜の観光スポットをめぐっていると、彼女が「崎の湯」に行ってみたいと言い始めました。波打ち際の野趣あふれる露天風呂として、ガイドブックに載っていました。
「服を脱ぐの面倒くさいな」
正直、そう思ったのですが、「彼女がよろこぶなら」と快諾。海岸線に向かって車を走らせました。
崎の湯は、万葉の昔から存在する歴史ある湯壷として知られ、露天風呂のみの日帰り入浴施設になっています。脱衣所で裸になって外に出ると、太平洋の波が間近まで押し寄せるダイナミックな湯船が目に飛び込んできました。
なんだ、これは・・・。
その野性味あふれるロケーションと絶景に息をのみました。それまでの私なら5分もすれば湯船からあがっていたはずですが、このときばかりは景色に見とれながら何度も出たり入ったりを繰り返し、先にあがっていた彼女に「ずいぶん遅かったね」と言われたのを覚えています。
これからです。温泉にハマっていったのは。
「日本一周3000温泉」をめぐる旅へ出発
衝撃的な出会いのあと、温泉に興味をもって調べてみると、日本中に個性的な温泉が存在すること、泉質によって湯の特徴が異なること、天地の恵みである源泉は一つとして同じものは存在しないことなどを知りました。
俄然、温泉に興味を抱いた私は、週末になるたびに温泉地へ出かけました。入れば入るほど、知れば知るほど、温泉の魅力に取りつかれていきました。そして、いつしか「日本全国の温泉地をめぐりたい」という野望を抱くに至ったのです。一度のめりこんだら徹底的に究めたくなる、という自分の性格には逆らえませんでした。
しかし、週末だけ温泉地を訪ねても、巡れる温泉の数には限度があります。なにしろ日本には約3000もの温泉地、そして2万2000を超える温泉入浴施設があるのですから。これでは全国をまわる前におじいちゃんになってしまいます。そこで私は決意しました。
会社を辞めて、日本一周温泉めぐりの旅に出かけよう。
目標は3000カ所としました。これだけめぐれば日本全国あらかたの温泉施設を踏破できると考えたからです。予算は貯金していた500万円。計算すると、予算内で3000カ所をめぐるには、1日8湯以上に入る必要がありました。旅が長引くほど、予算も膨らむからです。温泉ののんびりしたイメージとは程遠い過酷な旅となることが予想されました。
そして2008年3月に出発。2009年5月までに無事3016湯に入湯し、日本一周の旅を終えました。この1年以上に及ぶ旅の記録は、『日本一周3016湯』(幻冬舎)という本に結実しました。
なにしろ3000を超える温泉に入ったので、書きたいことは山ほどあります。削りに削って500ページとなりましたが、担当の編集者には「当社の新書で最高記録のページ数です(当時)。ボリュームも多いから校正も大変でした」と労いとも嫌味ともつかない言葉をかけられました。
「温泉マニア」としての仕事
正直に言うと、この本を出版するまでは、温泉を仕事にすることは考えていませんでした。もともとビジネス書などの書籍をつくる編集者だったので、フリーランスの立場でビジネス書を手がけていこうとは考えていましたが、温泉ライターのような仕事をするイメージは持ち合わせていなかったのです。
なにより、趣味を仕事にすることに抵抗がありました。仕事でお金をもらってしまうと、自分が好きではない温泉も褒めなければいけない状況も生まれかねませんし、純粋に温泉を愉しむことができなくなってしまうことも恐れていました。
一方で、『日本一周3016湯』を出版してから、「温泉マニア」「温泉の専門家」と見なされるようになり、さまざまなメディアから声がかかるようになりました。
テレビでは「有吉ゼミ」「マツコ有吉の怒り新党」「あさチャン」「ヒルナンデス!」「ごごナマ」などに出演し、芸能人のみなさんと温泉めぐりをするロケも体験しました。ラジオ番組も10回近く出演しました。
また、「じゃらん」「旅の手帖」「温泉批評」などそれまで愛読していた雑誌にも声をかけていただきました。そのほか、数は多くありませんが、講演やコンサルティングなどの依頼も受けました。
その間に出版の企画も舞い込みました。『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)といった新しい切り口にも挑戦しました。
こうして3016湯をめぐる旅をきっかけに、さまざまな経験をさせていただきました。温泉の魅力を伝えるお手伝いも多少はできたのかもしれません。
それでも、温泉を本業にすることにはあまり前向きにはなれませんでした。基本的に温泉にまつわるオファーを断ることはほとんどありませんでしたが、あくまでも趣味の延長という感覚で、終始「受け身」でした。やはり温泉を仕事にすることで、個人的に温泉を愉しむことができなくなる、という漠然とした不安があったからです。
温泉の魅力をもっと伝えたい
しかし、今は少し考えが変わってきています。
「もっと温泉の魅力をたくさんの人に伝えたい」。そのような思いを、これまで以上に強くもっています。
きっかけは、やはりコロナ禍です。観光業界はもちろん、温泉施設も大きなダメージを受けているのはご承知の通りです。もともと温泉施設の数は近年過剰ともいえる状態で、生存競争は激しさを増していましたが、コロナ禍をきっかけにその動きに拍車がかかっています。しかも、温泉好きにも評価されているような佳宿やすばらしい源泉をもつ温泉施設までもが淘汰されようとしています。
どの業界でも新陳代謝があるのは当然ですが、このままでは個別の温泉施設にとどまらず、温泉地や温泉文化ごと廃れてしまうのではないか、という危機感をもっています。
もちろん、私ひとりにできることは限られますが、微力でも温泉の魅力をもっと発信していきたい。もっと温泉の可能性を広げたい。そう考えるようになったのです。
また、ある人から、こんなことを言われたのも心が動いた一因です。
「3000以上の温泉に入るなんて、バカげたことをした人はほとんどいないんだから、そのバカげた経験はもっと大切にしたほうがいい」
今、これまでのような受け身の姿勢ではなく、自ら積極的に発信していこうとシフトチェンジをしている最中です。noteを始めたのもその一環です。
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