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絶景温泉200#17【層雲峡温泉の柱状節理】

新しくスタートした連載「絶景温泉200」。著書『絶景温泉100』(幻冬舎)で取り上げた温泉に加えて、さらに100の絶景温泉を順次紹介していこうという企画である。

第17回は、層雲峡温泉の柱状節理(北海道)

「層雲峡は未だ世に知られざるが、天下の絶勝也」

北海道の景勝地をたびたび著書等で絶賛したのは、明治・大正時代の詩人・随筆家、大町桂月である。旅と酒をこよなく愛し、東北や北海道の名勝を訪ね歩いた。紀行作家の名手としても名を馳せた。

層雲峡温泉(上川郡上川町)は、2000㍍級の山々が連なり、「北海道の屋根」と称される大雪山国立公園の北に位置するいで湯。石狩川沿いに十数軒の宿が並ぶ。

温泉街から見えるのは、挟み込むようにそびえ立つ柱状節理(ちゅうじょうせつり)の絶景。柱状の岩石が連なる光景は、巨大な屏風のよう。

この独特の地形は火山活動の痕跡。かつて大雪山の大噴火によって層雲峡一帯は火砕流に覆われた。その厚さは200㍍。内部が冷え固まるときに柱のような縦の割れ目ができ、それが石狩川の流れに削られ、荒々しい層雲峡の風景が生まれたという。

層雲峡の温泉街を歩く。ホテルなど建物の向こうに、姿勢正しい柱状節理が屹立している。どこかヨーロッパの街並みを思わせる風景である。

層雲峡の名付け親は大町桂月である。アイヌ語の「ソウンペッ(滝のある川)」にちなむ双雲別川をヒントに「層雲峡」と命名した。

当時はまだ知名度のなかったこの地で温泉宿を営んでいた実業家が、全国的に名の知られていた桂月を招いて命名させたとか。桂月は作家であると同時に、今でいう広告代理店やインスタグラマーの役割を担っていたのだろう。

柱状節理はさまざまな絶景をつくりだしている。温泉街から3㎞の距離にある「銀河・流星の滝」まで足を延ばす。隣り合う2本の美しい滝が柱状節理の断崖を流れ落ちる。日本の滝百選にも入っている名瀑。特に白糸のように落ちる銀河の滝は、芸術作品を思わせる繊細さである。

温泉街から黒岳(1984㍍)の5合目まで延びるロープウェイからの景色も一見の価値あり。眼下には柱状節理の峡谷美、見上げれば迫力満点の大雪山の山々。晴れていれば黒岳の頂上まで見える。夏は雲海、秋は紅葉、冬は雪景色を楽しめる。

温泉街には日帰り入浴施設「黒岳の湯」がある。2階が内湯、3階が露天風呂とサウナというつくり。泉質は単純温泉だが、焦げたような独特の香りを放つ透明湯はかけ流しで、茶色の湯の花が舞う本格派。男湯の露天からは柱状節理の風景も望める。

登山客らしき2人組みが「黒岳がキレイに見られてよかった」「日頃の行いがよいからかな」と語らいながら充実の笑み。登山後の温泉はさぞかし気持ちがいいことだろう。

温泉街で最も高台に位置する「ホテル大雪」もおすすめ。3つの大浴場と2つの露天風呂はロケーションがすばらしく、柱状節理の絶景も拝むことができる。

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高橋一喜|温泉ライター
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