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飲食店大進化論Ⅱ投稿集202312

【2023年12月分X/Twitter履歴】
 
コロナ禍を経て高級料理にはフルサービスを大衆料理はそれ相応にと比例関係が崩れている。高級と安価の二極分化が進み中途半端な設定では客足が遠のくばかりだがその上で高級店が省力化によってコスパを追求したり安価な店が提供価値の向上で目的指向客への対応力を高めたりしている。


コロナ後は「ぼっち客」にも違和感がなくなった。外食の省力化業態で際立っているのはファインダイニングの料理内容をサービスの簡素化でカジュアル化したグルメ立ち食いとフルサービスの焼肉店と同じ格付けの高級食材を扱いながらホール接客を省いてリーズナブルを可能にしたセルフ焼肉だ。
 
コロナ以降ファミレスのグレードアップに貢献しているのが高級ファミレスへの業態変更だ。大量生産によるローコスト戦略を捨て丁寧な仕込み料理や脱マニュアルの客席サービスで質の高さを売りにした。デフレ期にはマッチングエラーで定着できなかったが外食の意味が変わり期待される。
 
コロナ感染と迷惑動画騒動を受けて大手チェーンでも皿に乗った寿司がレーンで回転しない店が増えている。タッチパネル注文の普及も大きいが店舗のシステム化をオペレーションから味の追求に乗りかえた感じだ。ローカルではグルメ回転寿司が成功したが回転寿司の高級化が拡大している。
 
回転寿司と高級寿司の間を狙った、グルメ回転寿司よりもアッパーな新業態がウケている。内装デザインやBGMがオシャレなカフェバー業態や完全個室の隠れ家業態などでインパクトのある創作寿司を含め専門店としてのクオリティを提供する。高級居酒屋とはひとあじ違う専門性が強みだろう。

朝日新聞デジタル (asahi.com)
今年の一皿は「ご馳走おにぎり」 華やかな見た目、専門店も増加
https://www.asahi.com/articles/ASRD45CQTRD4UTFL00P.html
2023年の「今年の一皿」に、飲食店で提供され、具材がふんだんに盛りつけられて華やかな見た目の「ご馳走(ちそう)おにぎり」が選ばれた。食をテーマに調査研究を行う「ぐるなび総研」が4日、発表した。その年の世相を反映し象徴する食の一品を選び、14年から発表。今年が10回目。
 
今年のトレンドは「ご馳走おにぎり」だそうだ。JA全農でおにぎり専門店を企画していた頃が思い出される。あの時は白米の旨さで本物勝負したのでオリジナルブレンドと今ずり米が売りだったが、今は豊富な具材と見た目の華やかさが高級おにぎりの人気を押し上げている。時代は変わった。
 
稲作が始まった弥生時代のおにぎりが"おにぎり1.0"だとすれば、具材と海苔との組み合わせを発明した江戸時代のが"おにぎり2.0"だ。 1978年に生まれたフィルム包装のコンビニおにぎりが"おにぎり3.0"になる。それから45年たち生まれたご馳走おにぎりブームが"おにぎり4.0"と考えている。

出典:ごちそうおにぎりと豚汁のお店 豚米

おにぎり専門店のチェーン展開は88年で「魚沼倶楽部」から。和食ファストフードとして業態開発され枠組みが確立されたのが93年で「おだむすび」から。ファッション立地にこだわりオシャレ感とライブ感を持ち込んだのが98年で「ONY」から。農業法人のブランド化が03年で「雷神光」からだった。

出典:米処 雷神光 東京ミッドタウン店

おにぎり専門店は素材や調理法がシンプルで専門用具もいらないので初期投資が少なくてすむ。高度な調理ノウハウも不要なため新規参入も容易だが進化が著しいコンビニおにぎりとも競合するために具材の高級化やサイドメニューの魅力化が重要。宿六の様にミシュラン入りの店も出てきている。

出典:おにぎり浅草宿六

以前はカジュアルダイニングにこだわりを持たせたカジュアルプラスに時代の波が寄せていると言っていたが、輸入物価高の影響は想像以上でハード面への投資意欲を削いだのか、コロナ禍以降思ったほど動かなかった。しかし高級化の流れはあるから、ソフト面の強化した業態のカジュアルファインに活路が見える。
 
どんな時代になってもお客様の胃袋を「がっつり」つかんでいる店は生き残る。 反対に言えば店に来ることを店の味を楽しむことをライフスタイルの一部にしてしまわなければ推しの店としてずっと足しげく通い続ける常連客になってくれない。常連客に飽きられずに愛される武器を見つけて磨き込む。

飲食業はお値打ち感に惹かれて来店するフロー客とプレミアム感が気に入って来店してくれるストック客に二分される。 圧倒的に多いのはフロー客だから利便性を追求して便利な店を目指してきたが、コロナ禍で風向きが変わりストック客を確保するためのサービス見直しも必要になっている。

食べログは当初「失敗しない店探し」が売りだった。 営業を開始した2005年あたりは飲食店も玉石混合だったがその後の20年でブラッシュアップされてきたから料理内容で競合店との差別化を図るのは難しくなっている。そうなると便利性を強化するか意味性を高めるか別の工夫が求められる。
 
お客様に食事を販売する「ものづくり」のプロダクトビジネスで発展してきたのが飲食業だ。集客しやすい土地に場を用意し、コスパのよい料理を作り、でき立てアツアツを提供してきた。今はより人のつながりが求められているから「よりそい」のためにソリューションビジネスへの転換を考えるべきだ。

飲食店は調理人を中心にしたものづくりビジネスであり客数アップで稼いできた。過去実績からオーダーを予測してレコメンドするので消費行動を流れで捉えるAIDMAの法則(注意→興味→欲求→記憶→購入)で業態フレームを組み立ててきたが、今は外食デフレが限界を超えており対処が難しくなっている。
 
コロナで生じた社会構造の変化やお客様行動の変容に適応させるために飲食店はよりそいビジネスを模索するべきだ。 食のよりそいビジネスは外食の動機づくりから出発する。ビジネスチャンスはSIPSの法則(共感→確認→参加→共有)で捉えると継続的な関係性を生み出す方向が見えやすい。
 
飲食店は統計資料を駆使して集団属性からお客様を捉えるのではなくお客様のペインポイントから市場の気分を捉えカスタマージャーニーを描くことでお客様によりそう食事が見えてくる。 リアル店舗のオフラインサービスをデジタル化によってオンライサービスに組み込み関係性を構築する。
 
最近の無線センサーやIPカメラは高性能かつ廉価だからお客様の店内行動を追跡することが容易になった。IoT機器を導入していない飲食店でもしっかり客席を定点観察していれば飲食店集客に役立つ利用客のペインポイントが見えてくる。お客様の本音が見つかったら、そこには必ず繁盛するヒントが隠れているからだ。
 
飲食店がものづくりビジネスであるうちはお客様との関係性を築けるのがホールのみだった。接客をフロントエンドに店舗/食材/調理/料理をバックエンドとするバリューチェーンだったが、よりそいビジネスに移行させようとする柔軟に関係性を築くために全ての機能がフロントエンドになる。

高度なテーブルサービスを提供してきた飲食店は、今こそ店舗でキッチンとダイニングを一体化させた集客ビジネスという常識を外しキッチンサービスとホールサービスを分離し独立した事業として競わせるべきではないか。そうすれば各々の持ち味が生きて時代変化への対応がしやすくなる。
 
今の飲食店に求められているのはコミュニティの場形成だと思う。客席数/業態/店格、程度の差はあれど全てに共通する。中心にあるのは料理かも食材かも或いは調理法かも。中の人だって女将、板長あるいは看板娘がある。店のデザイン/テーマだってある。推しの要素がファンダムを生み出す。
 
推しとの関係性にはゴールがない。ただひたすら体験を伴う消費行動に対してお金を奪われる。 特段意味を持たないどうでもいいコンテンツであるほど夢中になれるし、日常生活と無関係に隔絶されていればいるほど現実逃避できる。感覚的な満足感が明日への活力になる。そこがポイントだ。
 
推しの店に対して散財するのは何かを購入するというよりも、推しに対する投資として贈り物にお金を使うという感覚に近い。体験価値を最大化するために推しの対象に入れ込み何度も足を運んだり大量に購入したりするようになる。熱心なファンになれば利用料金の値頃感など関係なくなる。
 
今はリアルとデジタルが融合し始めている。Web1.0がリアルとデジタルを結びつけWeb2.0でリアルとデジタルの行き来がしやすくなった。Web3.0はリアルとデジタルの垣根がなくなる世界だ。 飲食はリアル店舗で食事提供する商売から、デジタルの中でリアル体験させられる場提供に進化する。


 飲食店は料理だけではなく食事体験を売っている。いくらぐらいが適当と感じるかは主観の問題だから人によって評価はバラバラだ。 コスパは空腹を満たす餌であれば自炊との比較になるだろうし店格や評判が選択の物差しかもしれない。お客様の物差しを使って店づくりすれば繁盛に近づく。
 
コロナ禍で人と人の関係性が問われるようになって以来、感覚的な共感力が店選びのファクターになった。 飲食店はお客様にとって特別になる必要がある。なくてはならない存在になるためにはどこをブラッシュアップすればエモいかを考えたい。実際「エモさ」の発信力が客入りに影響している。
 
レビューを見ればサービス力が料理同様重要な要素でありサービスの設計いかんでお店の評価が変わることを実感する。 特にコロナ以降は外食のエンタメ化が顕著であり単に旨いだけではお客様をつなぎ留められなくなっている。エンタメでは推すというファンの行動変容が全ての基軸になる。
 
情報の氾濫で人々は時間に対してセンシティブになっている。時間を費やすだけで、それが自分の関心に値するものだったかを気にしている。だから料理のコスパに勝負をかけても不十分だ。外食のエンタメ化が進み「エモい」を体験するためにどれくらいの時間を投資したかが重要になっている。
 
日本の外食市場は1997年をピークに縮小したままだ。人口減少と外食比低下は端から分かっていたことだが抜本的な対策が打てていない。むしろ値下げ競争で外食デフレが深刻化し消耗戦で企業体力を奪われてしまっている。安売りは楽だったが、その結果付加価値で儲ける発想が失われている。
 
飲食店はコロナ禍を経てホスピタリティを盾に積み残してきた課題が露呈してしまった。因習にガードされた生産効率の低さ、シフトの影に隠れたブラック企業体質、他業界に比べて出遅れたデジタル対応、店舗立地への依存度の高さなど。多少の化粧直しでは間に合わない。大変革が必要だ。
 
アニメやゲームの世界は制作委員会という異業界の参加方式を生み出し共同権利保有による複合エンタメ化を可能にした。キャラクターなど著作権よりもグッズなどの派生ビジネスで稼ぎ利益の一部が制作委員会に還元される。発想を変えればこのやり方で新しいレストラン開発が可能になる。


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