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「舞台」
「舞台」
過ぎた時は戻せない。
たった一度のこの舞台。
リハーサルなんてない。
踊れない者に明日はない。
とりあえず
この心臓と手足を動かし
下手でもひたすらに踊り演じた。
冷たい客席に向かって。
立ち止まり考える余裕もない。
と思い込みたい。
弱い自分を肯定するための言い訳か?
今さらと言って
納得できる時が来るのを
待ちたいだけか。
ただ、
幸せになりたかっただけ。
ただ、
自分を愛したかっただけ。
それだけだったのにな。
それがとてつもなく虚しく。
私がいたあの頃に戻りたい。
戻れない。
ただ、
幸せにしたかっただけ。
ただ、
あなたを愛していただけ。
それだけだったのにな。
それがとてつもなく切なく。
あなたがいたあの頃に戻りたい。
戻れない。
踊り疲れて
演じきれずに倒れそうになる。
その瞬間
たとえ幻だとしても
あなたの声が聞こえたならば
あなたの姿が見えたならば
もう一度立ち上がり
私は踊り始めるだろう。
私は踊り続けるだろう。
この舞台で孤り。