来たるべきAI時代の為に元請け会社が今から取り組むべき事
異常な速さで進化を続けるAIを筆頭とする技術革新によって建築業界で起こり得るイノベーションのお話をしてきました。
このシリーズも今回で最後になります。
まだ読んでない方は前々回↓
そして前回↓
から読んで頂ければ理解が深まります。
さて、こんな未来を想定した上で、我々元請け会社は今から何ができるのか。
どんな事に気を付けながら来るXデーを迎えるべきなのか。
私なりに今考えている事をまとめてみたいと思います。
1.新しい技術には率先して触れておく
これは建築業界に関わらず、全ての方に言える事だと思っています。
例えば、前2回でも触れましたが福井コンピューターアーキテクト㈱が提供しているサービス。
①リノベーション現況調査アプリ リノベっち
そして(株)アンドパッドが提供している現場の効率化から経営改善まで一元で管理が可能なクラウド型の建築・建設プロジェクト管理サービス。
②施工管理ツール ANDPAD
ここまでは使ってるよ、という方はいらっしゃると思いますが、他にも建築以外の生成AIに触れてみるのがいいと思います。
③人工知能チャットボット ChatGPT
https://chat.openai.com/auth/login
④画像生成AI Midjourney(ミッドジャーニー)
https://www.midjourney.com/home?callbackUrl=%2Fexplore
生成AIに関しては使いこなす必要はないですが、一度使ってみて体感する事はとても大切だと思っています。
私も両方触ってみましたが「あー、これは何のスキルがない人でも手軽にクリエイターになれちゃうわ」という感想を持ちました。
まだ建築業界で活用できるような、例えば敷地条件を入力すれば間取りや仕様が自動生成される建築AIのようなサービスは出ていませんが、それが本当に社会に実装されたら誰もが建築士の代わりに家を設計出来ることが可能になります。しかも、10分程度で、です。
まずは今の技術でどんな事ができるのか
生成AIによってどのように、どんな物が生み出せるのか
把握しておくことは非常に重要だと考えています。
戦に例えるとしたら、敵側の手札をなるべく知っておくと有利だよね、って事ですね。
注:例として敵側としていますが、AIは決して我々の敵ではありませんので(笑)
2.誰もが建築生成AIでイケてる建築物を作れる時代に
上記した最新技術の中で、①と②は業務の効率化を図り生産性を上げる事ができる、といういわゆるDX化に留まりますが、③と④にもその側面がある一方で、更には人間に代わって「生み出す」という能力を有しています。
まだまだ発展途上ですが、膨大なデータを解析し、あっという間に巷の建築士が設計するようなプランを僅か数秒で作り上げる事ができる、みたいな事になり得ると考えています。
何ならラフプランさえ出来ていれば、そこから確認申請に必要な図面や書類を一気に出力可能になる、何て事も十分考えられます。
最近ニュースではイラストレーターや作曲家が「このままじゃ私たちの仕事がなくなっちゃうじゃないかー!生成AIはんたーい!!」と訴えている場面も目にすると思います。
これは他人ごとではなく、上記のような建築生成AIが世に出た瞬間も、きっと一定数の建築関係者から同様の訴えがあるかと思います。
工務店などはむしろ業務の効率化を図れるので嬉しい反面、特に確認申請代行をメインにしているような会社は致命傷になりかねませんよね。
後は例えば、著名な建築家さんを名指しで「建築家〇〇さんの〇〇の家風で」みたいな指示をすると、それっぽい建築物を生成してくれる、みたいな事も起こります。
この辺りの著作権の扱いなどが現状グレーゾーンで、多くのクリエイターさんが危惧して訴えている部分でもあります。
そんな時代において我々が選択できる道としては
A:生成AIの業界進出を拒み続けるも、世の流れに飲まれて仕事がなくなっていく=生成AIに代替される(敵とみなしている)
B:背に腹は代えられないので、生成AIを使いこなし数をこなしてなんとかしのいでいく=生成AIを乗りこなす(味方とみなしている)
C:生成AIが生み出す事ができない分野に特化する=生成AIと距離をとる(傍観できる立場)
という風に考えられます。
Aは残念ですが、仕事を変えて頑張りましょう(笑)
現実的な打ち手としてはBですが、当然同業他社も同じ動きをします。特に大手企業はバッチリ対応するでしょうから(もうAIを準備してる、という話も耳にします)今まで建築士が担ってきた建築、設計の業務の価値がグッと下がります。
何の知識もない一般の方が建築生成AIを使いこなし、ベテラン建築士に匹敵するクオリティーの建築物を作り上げる事が出来るようになる。
誰もが出来るようになると、その行為の価値は当然下がります。例えば新築住宅一軒で設計費10万円とか。今の10分の1位になるかも。凄い時代ですね。
当然、今の売り上げをキープするには10倍の物件をこなさなければいけませんが、そもそも新築住宅の着工数は減っています。人口減少、そして婚姻世帯の減少も相まって今後も減り続けるでしょう。
工務店として設計だけではなくて工事を請け負っていればそちらで売り上げは立ちますし、むしろ今まで設計にかけていた労力が減るのでメリットも享受できます。
が、正直設計のみではなかなか厳しいかもしれませんね…
残るはCの道。さて、そんな道はあるのでしょうか。
3.建築生成AIには生み出す事の出来ない分野で尖れ!
同じ建築といっても、色んな分野、種類に分けられます。
一般的な新築住宅の建築においては現状でもDX化や合理化が図られていますから、今後もこのまま進むでしょう。
前回まで話してきた「簡単リフォームアプリ」でカバーできる範囲は限られるかもしれません。
表面的なリフォームや、キッチンなどを更新するリフォームなどは簡単にできるでしょう。もしかしたら丸ごと一棟フルリノベーションにも対応できるアプリの開発もされるかもしれません。
詳しくありませんが、大型の建築物においてはゼネコン主導で合理化を図らなければ、慢性的に不足している職人や従事者の確保が解消されることはないので、こちらも進まざるを得ないでしょう。
私の考える建築生成AIには代替できない分野というのは、上記以外の分野についてです。
私が実際に知っていて、恐らく今後もAIに代替される可能性は低いだろうなという方をピックアップして紹介してみます。
一級建築士事務所 アトリエ縁 清水さん
代表の清水さんからはいつも多くの学びや気付きを頂き、勝手に師匠と仰いでおります。家が近い事もあり、お酒を持参して建築話をしに行く事もしばしば。
日本の伝統的な建築物の修繕に伴う調査、設計、監理を全国で請け負っており、その知識と経験は非常に貴重だと捉えています。
有限会社 曳家岡本 岡本さん
現役の職人でもありながらブログや書籍の出版など情報提供も率先して行っている代表の岡本さん。一切の妥協をしてなるものか、というその真摯に木造建築と向き合う姿勢にいつも背筋を伸ばされる思いです。
曳家岡本の仕事ぶりは全国から依頼がくるという事実が証明してくれていると捉えています。
私もまだまだ未熟者ですし、多くの素晴らしい建築に携わる方を知っている訳でもありません。
そして個人的に古いモノコト、伝統的な文化、歴史を感じられるものなどが好きなので、どうしてもそっち方面へ向かってしまいます(笑)
そんな私ですが、上記のお2人は特に「建築生成AIでは代替不能である」と言えると考えています。
その理由としては
・ネットで検索しても膨大な資料が出てこない分野である
・毎回前提条件や目標が違うので、体系化しにくい分野である
多くの住宅に用いられている在来工法や2×4工法という構造手法は、近年提唱され実績を積み重ね、既に体系化された素晴らしい人類の叡智と言えます。
だからこそ、生成AIにとっても得意分野になってしまいます。
ですが、100年200年という歴史的建造物は、その範囲を遥かに超えます。解析は可能ですが、まだまだデータは少ない。
何よりも、数をこなせないと儲からないので(笑)歴史的な建造物はAIやアプリ開発者からしても、労力をかける対象にはなり得ないと思っています。
さて、全3回に渡ってお話してきた建築業界の未来の可能性について、如何でしたでしょうか?
どうか当事者の建築従事者の方は落ち込んだりしないで下さい(笑)
そうではなくて、私の推論も参考に自分でもちょっと先の未来を見通してみて下さい。私とは持っている知識も経験も違うでしょうから、また違った未来の可能性が見えているかもしれません。
そしてそれを共有して、自分に何ができるのか。何をして準備するべきなのか。
是非、そういった建設的で前向きな議論のきっかけになれば幸いです。
という事で本日の告知タイム↓笑
私が3代目の校長を務める、住まいの学校、略して「住学」というコミュニティーがあります。
メインはfacebookのグループ内で↓
インスタアカウントもあります↓
主に新潟県内の業界人がワイワイとやっております。
基本的には誰でも参加できます。会費はありません。一般人でも学生さんでもOK。
2か月に一度、勉強会&懇親会を開催しています。
また、メンバーが手掛けた物件を住学内で見学に行く番外編や、構造部・省エネ部など個別の部活動なんかもアリ。
1人で悩んで悶々としている位なら、同業者に会って話してみるとすぐに共感して貰えたりします。
興味のある方は、是非お気軽にご参加下さいませ!