軽度知的能力障害は見た目では分かりにくい|専門家でさえ見逃すことがあります

【質問】年の瀬に今年ずっと不安だったことを質問失礼します。「軽度知的障害」とyoutubeで検索して出てくる方々が、いくら見ても自分より賢く 見えることです。きちんと療育手帳を取られている方々です。質問箱に時々出てくるMRのイメージ(客観性や内省がない)とは全く被りません。この方々は先生が以前言われてた「博愛 」を持ってるためにコミュニケーションの障害を感じさせないのでしょうか。

【お返事】知的能力障害の基準を再度確認してみます。現在DSM-5ではIQによる分類はなくなりましたが、数値で切り分けるほうが分かりやすいので、臨床の場面では相変わらず知能検査の数値に基づいて、診断してサポートにつなげています。療育手帳(東京都では「愛の手帳」といいます)とは、知的能力障害があることを証明するものです。

※今回の記事はラジオでも視聴できます。テキストを見ながらどうぞ▼

※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。

■知能の分類

知能のレベルには、次のような等級があります。大阪市のサイトから転記しました。行政ではこのように場合分けをしています。

  • A判定(最重度)知能指数(IQ)20以下

  • A判定(重度) 知能指数(IQ)21~35

  • B判定(中度) 知能指数(IQ)36~50

  • C判定(軽度) 知能指数(IQ)51~75

これによると、軽度知的能力障害の方はC判定です。C判定くらいの知能になってくると、普通の方(IQ85以上)とはなかなか見分けが難しくなります。パッと見ではわからないくらいです。特にIQ75くらいになると、専門家でも間違えることもあります。知的障害がないと判断されて、知能検査を受ける機会を逃します。質問者さんは、軽度知的能力障害の方に関しての質問ですので、このC判定の方々ですね。専門家でさえ間違えるため、一般の方が間違えるのは仕方がありません。

しかし、逆に、専門家なら、知能検査を取らなくても、知能の問題がありそうだとかは、分かるようになっていないといけないということです。

実は、このC判定、IQが51~75とかなり幅があることが分かります。つまり、軽度知的能力障害(C判定)といっても幅があって、だいたい3つくらいに分けたほうがいいのです。それぞれ特徴が違うからです。しかし「知的能力障害と認識されていない」ところは共通です。

  • IQ 50~60:日常生活に援助が必要で、対人関係が未熟で、情動や行動を制御できない。知的能力障害と認識されていない。

  • IQ 60~70:日常生活はほぼ自立している。社会的な自立は難しい。知的能力障害と認識されていない。

  • IQ 70~75:仕事や家庭生活は不安定だが、社会的に一応は自立している。知的能力障害と認識されていない。臨床的には、IQ85くらいまでの境界知能も含める。

知能検査を実施したことがあっても、カウンセリングで社会性などを判断できなければ、話を聴いただけでは、軽度知的能力障害かどうかは分からないかもしれません。

この「社会性」というのは、なかなか表面的には分かりづらいということです。しかし、ある程度慣れてきた人なら、YouTubeなどの話を聴くだけでパッと分かるでしょう。

IQ70くらいになると大学へ進学も可能ですので、見誤る可能性もあります。経歴では分かりにくいのですね。実際は知能検査はなかなかできないので、社会性という視点で判断し、知能検査につなげる場合もあります。

■知能検査をしなくても知能レベルは判断できる

今日の私のツイートです。

知能検査をしなくても、相談者の人の知能レベルを、その会話から判断できるようになりましょう。カウンセリングを数年やりつつ知能検査を数年やればだいたい分かるようになります。これができるようになると、対象になっている人物の知能レベルまで見えてきます。ジェノグラムに記入しておきましょう☺

DSM-5では次の3つの領域について知能を総合的に判断します。

  • 概念的領域:学業成績(読み書きそろばん)

  • 社会的領域:他人の思考・感情を理解できる

  • 実用的領域:身だしなみ、仕事、家事などができる

知能のレベルについては次の4つです。IQは参考です。IQ50 以下、つまり中等度以下の人はひと目で分かります。それに比べて軽度は難しいですね。

  • 軽度(C): IQ50~70

  • 中等度(B): IQ35~50

  • 重度(A): IQ20~35

  • 最重度(A): IQ20以下

◇知能検査の結果では判断できない場合

知能検査は、2時間くらいかけて集中してやります。そのため、成人であっても、その時の調子の悪さで集中力が欠けて、実際より低くでる可能性も大いにあります。

例えば、検査者が目の前に座ってやるテストなので、人が怖い人にとっては、緊張が高くなり、結果も悪くなりがちでしょう。または、虐待されてきた子どもは常識を親から教えてもらっていないので、とんちんかんな回答をする可能性が高いです。

ですから、そういう生育歴までを総合的に捉えて、知能検査は利用していく必要があります。知能検査の結果を鵜呑みにしないことも大切です。

■博愛と知的能力障害

博愛とは、特別な人だけではなく、すべての人を愛すること。ダウン症の人は博愛と言われていますが、知的能力はIQ30~50なので中等度に入ります。つまり、普通の人が見ても知的障害だとわかる人々ですね。

中等度の知能というのは、純粋無垢なところがあり可愛がられるのかもしれません☺

山下清や仙台四郎も、一般の人が見ても知的障害だと分かるくらいでしたので、中等度の知的障害だったのでしょう。すると、博愛の資質があったのかもしれませんね。以前、軽度知的能力障害と博愛についての記事を書いたのですが、これは修正する必要があるかもしれませんね。軽度というより中等度ですね。ただ、博愛と知的能力障害の研究がないので、もう少し議論を浮遊させておきます。

■まとめ

  • 軽度知的能力障害の人は、一般の人には見わけがつかない。専門家さえも間違える。

  • 専門家は知能検査しなくても、だいたいの知能レベルは推定できるように訓練しよう。

  • 博愛気質をもった知的能力障害の人々のレベルは、軽度ではなく中等度である可能性もある。

⇒解決しない悩みのある方は、ソレア心理カウンセリングセンター へご相談ください。

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