軽度知的能力障害は見た目では分かりにくい|専門家でさえ見逃すことがあります
【お返事】知的能力障害の基準を再度確認してみます。現在DSM-5ではIQによる分類はなくなりましたが、数値で切り分けるほうが分かりやすいので、臨床の場面では相変わらず知能検査の数値に基づいて、診断してサポートにつなげています。療育手帳(東京都では「愛の手帳」といいます)とは、知的能力障害があることを証明するものです。
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※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。
■知能の分類
知能のレベルには、次のような等級があります。大阪市のサイトから転記しました。行政ではこのように場合分けをしています。
A判定(最重度)知能指数(IQ)20以下
A判定(重度) 知能指数(IQ)21~35
B判定(中度) 知能指数(IQ)36~50
C判定(軽度) 知能指数(IQ)51~75
これによると、軽度知的能力障害の方はC判定です。C判定くらいの知能になってくると、普通の方(IQ85以上)とはなかなか見分けが難しくなります。パッと見ではわからないくらいです。特にIQ75くらいになると、専門家でも間違えることもあります。知的障害がないと判断されて、知能検査を受ける機会を逃します。質問者さんは、軽度知的能力障害の方に関しての質問ですので、このC判定の方々ですね。専門家でさえ間違えるため、一般の方が間違えるのは仕方がありません。
しかし、逆に、専門家なら、知能検査を取らなくても、知能の問題がありそうだとかは、分かるようになっていないといけないということです。
実は、このC判定、IQが51~75とかなり幅があることが分かります。つまり、軽度知的能力障害(C判定)といっても幅があって、だいたい3つくらいに分けたほうがいいのです。それぞれ特徴が違うからです。しかし「知的能力障害と認識されていない」ところは共通です。
IQ 50~60:日常生活に援助が必要で、対人関係が未熟で、情動や行動を制御できない。知的能力障害と認識されていない。
IQ 60~70:日常生活はほぼ自立している。社会的な自立は難しい。知的能力障害と認識されていない。
IQ 70~75:仕事や家庭生活は不安定だが、社会的に一応は自立している。知的能力障害と認識されていない。臨床的には、IQ85くらいまでの境界知能も含める。
知能検査を実施したことがあっても、カウンセリングで社会性などを判断できなければ、話を聴いただけでは、軽度知的能力障害かどうかは分からないかもしれません。
この「社会性」というのは、なかなか表面的には分かりづらいということです。しかし、ある程度慣れてきた人なら、YouTubeなどの話を聴くだけでパッと分かるでしょう。
IQ70くらいになると大学へ進学も可能ですので、見誤る可能性もあります。経歴では分かりにくいのですね。実際は知能検査はなかなかできないので、社会性という視点で判断し、知能検査につなげる場合もあります。
■知能検査をしなくても知能レベルは判断できる
今日の私のツイートです。
DSM-5では次の3つの領域について知能を総合的に判断します。
概念的領域:学業成績(読み書きそろばん)
社会的領域:他人の思考・感情を理解できる
実用的領域:身だしなみ、仕事、家事などができる
知能のレベルについては次の4つです。IQは参考です。IQ50 以下、つまり中等度以下の人はひと目で分かります。それに比べて軽度は難しいですね。
軽度(C): IQ50~70
中等度(B): IQ35~50
重度(A): IQ20~35
最重度(A): IQ20以下
◇知能検査の結果では判断できない場合
知能検査は、2時間くらいかけて集中してやります。そのため、成人であっても、その時の調子の悪さで集中力が欠けて、実際より低くでる可能性も大いにあります。
例えば、検査者が目の前に座ってやるテストなので、人が怖い人にとっては、緊張が高くなり、結果も悪くなりがちでしょう。または、虐待されてきた子どもは常識を親から教えてもらっていないので、とんちんかんな回答をする可能性が高いです。
ですから、そういう生育歴までを総合的に捉えて、知能検査は利用していく必要があります。知能検査の結果を鵜呑みにしないことも大切です。
■博愛と知的能力障害
博愛とは、特別な人だけではなく、すべての人を愛すること。ダウン症の人は博愛と言われていますが、知的能力はIQ30~50なので中等度に入ります。つまり、普通の人が見ても知的障害だとわかる人々ですね。
中等度の知能というのは、純粋無垢なところがあり可愛がられるのかもしれません☺
山下清や仙台四郎も、一般の人が見ても知的障害だと分かるくらいでしたので、中等度の知的障害だったのでしょう。すると、博愛の資質があったのかもしれませんね。以前、軽度知的能力障害と博愛についての記事を書いたのですが、これは修正する必要があるかもしれませんね。軽度というより中等度ですね。ただ、博愛と知的能力障害の研究がないので、もう少し議論を浮遊させておきます。
■まとめ
軽度知的能力障害の人は、一般の人には見わけがつかない。専門家さえも間違える。
専門家は知能検査しなくても、だいたいの知能レベルは推定できるように訓練しよう。
博愛気質をもった知的能力障害の人々のレベルは、軽度ではなく中等度である可能性もある。
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