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自閉症だけではない、共感の病いのある人々|倫理規範と共感との深い関係

【質問】「ASDは共感しない」はざっくりすぎませんか?

【お返事】ご指摘ありがとうございます。下記のラジオについての質問ですね。

愛着障害は【親密さ】が問題|共感はするが、知られるのが怖いから隠している

愛着障害は共感していることを強調するために、一番共感の問題を持っている(皆さんご存じの)疾病をあげて説明しました。それが自閉圏の人々ということですね。ここでASDについてまとめておきます。

※今回の記事はラジオでも視聴できます。テキストを見ながらどうぞ▼

※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。

■倫理規範からみた自閉症【専門家向け】

自閉症については、自閉スペクトラム症、自閉症スペクトラム障害、自閉症スペクトラムなどの言い方がありますが、すべて同じです。この自閉症というのは、他の発達障害と比べると、特異な要素を持っています。どこが違うのかというと、

  • 年齢相応の理解ができないのが、MR, ADHD, LD

  • 理解の仕方が、普通の人とは違っているのが、ASD (*)。

(*)高橋和巳:カウンセリングセミナーテキスト、上級コースより, 2018

自閉症は、理解の仕方が違っているのです。どう違っているのかは、最近ラジオで話している【倫理規範】のものさしを使えば説明できます。結構、倫理規範は万能なものさしとなり得るのです。何かを考える際に倫理規範のことを思い出してみるのもいいですよ。

つまり、ASDの人は社会適応できない困り感があるのですが、社会適応を阻害しているものの本質は、脳機能障害による【倫理規範の理解不足】なのです。

倫理規範の理解不足とは、社会的コミュニケーションの理解ができないということです。DSMー5では、知的能力障害の適応能力を考える際に3つの領域に分けて考えます。つまり、概念的領域、社会的領域、実用的領域です。この社会的領域についての理解不足が、倫理規範の理解不足と同じものになります。

DSM-5によると、軽度の知的能力障害の社会的領域の欠如としては、「定型発達の同年代に比べて、対人的相互反応において未熟である。例えば、仲間の社会的な合図を正確に理解することが難しい」とあります。自閉症も、これと同等の困り感があるのです。

◇共感の病い

対人相互反応が未熟とは、共感が分からないということです。よく聞くASDの方の話に、内緒話をしているのに、ぺらぺらと他人に話してしまう等があります。相手が不安な表情で恋愛話をしているのに、その表情が読めずに、内緒の話という暗黙の了解が理解できないのです。これが、倫理規範の理解不足です。

表情が読めないというのは、共感できないということです。その結果、友だちから嫌われたりします。ASD当人は、どうして嫌われたか理解できません。

さて、倫理規範とは、社会で生きるためのルールで、かなり広範囲のものが含まれますが、上の例のような暗黙の了解を理解していることも、倫理規範の条件の一つです。学童期ではムリでしょうし、思春期ではしくじることもありますが、社会へ出るには、そういうスキル(理解)も必要になってくるのです。

■共感できない人々

共感の問題を持っている人々は、ASDに限らず、まだまだたくさんあります。

  • まず言えることは、生まれつきの脳機能の問題を持った人々が、共感しづらい人々といえます。

  • 脳機能の問題なので、発達障害(ADHD,ASD, LD)だけにとどまりません。境界知能を含めた知能の問題のある人々も入ります。

  • 統合失調症も入ります。統合失調症の方は、社会へ出る直前に発症することが多いので、大人の倫理規範が構築される直前でダウンすることになります。ですから、ある程度の規範への理解はあります。

  • さらに、現在の段階では知的には正常で、脳機能も正常といわれている、反社会性パーソナリティ障害の人々も、共感からは程遠いところにいます。よく知られた言葉でいうなら、サイコパスですね。正真正銘の人格障害ですね。

反抗挑戦性障害⇒素行症⇒反社会性パーソナリティ障害(サイコパス的な放火・窃盗のなども含む)、このような段階を経て、サイコパスになります。反抗挑戦性障害はADHDとの関連も研究されており、そうなると発達障害と地続きになるかもしれず、将来的には脳機能の問題も発見されるかもしれません。

◇心理的な要因で共感できない人とは?

共感できない人には脳機能の問題があることが分かりましたが、では心理的な要因で共感しない人々はいないのでしょうか?

共感はできるが、共感したくない気持ちが前面に出てしまって、自分本位の主張になってしまう人々はいますね。こちらは脳機能の問題ではありませんが、治療が必要な人々です。そんな人もソレアに来談されます。

■まとめ

  • 自閉症の人の共感できなさは、脳機能障害による倫理規範の理解不足である

  • そのため、定型発達の同年代に比べて、対人的相互反応において未熟である。例えば、仲間の社会的な合図を正確に理解することが難しい

  • 共感できない人は脳機能障害を持っている。

  • 心理的な要因で共感できない(共感したくない)人はいる。

ラジオのおやすみ談話室:流れ者と愛着不全

Twitterで、《愛着不全の人は【流れ者でいる】と良さそうです。(中略)「流れている」 状態が、安全基地であることもあるのです。ス ナフキンです》との投稿がありましたが、これは「愛着不全」であってますでしょうか?
内容的に「愛着障害」への言及に思 えたのですが...愛着不全も回復するまでは「流れる」こともおススメということですか?(愛着不全は治ると人と一般的な関わり方(距離感)になると以前拝読した記憶なので)

愛着不全と流れ者については、▼こちらのnoteに詳しく書いています。

愛着不全の人も親友は少ない|【回復のためには】親友と出会うこと、流れ者でいること。ここで話していることは…

  • 愛着障害も愛着不全も、友人などの安全基地は必要で、愛着障害の人は根っからの流れ者ですが、愛着不全の人も流れ者になれば、それが回復のキーポイントになります。

  • 愛着不全の人は、愛着障害の人から学ぶことは多いのです。愛着障害の人のようにスナフキンの資質があるわけではないので、スナフキンから学んで近づきましょう、ということなんですね。

愛着不全の人はなかなか流れ者になるには大変かと思います。なぜなら人に執着しますから。けれど環境的にそういう場に置かれた場合、必然的に執着していられなくなるので、人生が転回し始めるようです。愛着不全の人にとって流れ者になるのは、腹をくくるということでもあります。

■他の助けを求めるのもいいでしょう

もし、あなたが共感の病いを抱えている場合は、臨床心理士などの心理の専門家にアドバイスを求めるとよいでしょう。時間はかかっても、あなたのカウンセリングがうまくいきますように。

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