愛着障害から回復した人の感想です|ポイントは、誤診・幻想・有効な心理療法
【お返事】感想をありがとうございます。ここに書かれているものは、愛着障害のカウンセリングでは最重要なものですので、ラジオで解説します。3つの視点があります。
愛着障害は誤診されやすい
愛着障害は、母親の幻想(ファンタジー)を壊すこと
認知行動療法はNG
※今回の記事は下記のラジオでも視聴できます。テキストを見ながらどうぞ
※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。
■愛着障害は誤診されていることが多い
愛着障害は、質問者さんのご指摘も含めて、下記の障害に誤診される場合があります。また複雑性PTSDは、ほぼ愛着障害と同じとみていいでしょう。
大うつ病(重症)
睡眠障害
双極性障害II型
ADHD(発達障害)
ASD(発達障害)
境界性パーソナリティ障害
回避性パーソナリティ障害
特に、以前は境界性パーソナリティ障害の誤診が多かったのですが、最近は双極性II型か発達障害の誤診が多いように思います。1つのブームのような感じですね。
大うつ病や睡眠障害というのは、あながち間違いとはいえないでしょう。実際に愛着障害は、治りにくいうつ病や睡眠障害の側面(併存)があるからです。これはあくまでも側面であって、治療すべきところは愛着障害です。ですから大うつ病や睡眠の治療ばかりしていても、抑うつ感や睡眠の質が向上することはありません。ターゲットとすべきは愛着の問題なのです。
どうやって愛着障害かを決定するかは、いろいろな記事で話していますので、そちらを参考にしてください(下記リンク記事です)。
大まかなガイドラインは、
相談者のナラティブ(カウンセラー側からの質問は控えること)
兄弟の見立て
親の見立て
祖父母の見立て
これらを複合的に見ながら、相談者を見立てていきます。ここはかなり専門的な作業になります。心理職の皆さんもかなり迷うところですね。私も途中で見立てを変更することもあります。
■愛着障害は、母親の幻想(ファンタジー)を壊すことが必要
愛着障害を治療する肝(きも)は、「母親(養育者)はよく面倒を見てくれた」という幻想を壊すところにあります。このファンタジーは幼い頃から持ち続けているものですので、ここを壊すのはとっても大変です。相談者のナラティブ(語り)の中から、この幻想を壊す証拠を拾い集めていかないといけませんし、この証拠によって、相談者が追い詰められてもいきます。
カウンセラーは別に追い詰めようとしているわけではないのですが、結果的にそうなってしまいます。そしてファンタジーが壊れるときは、激震が相談者のこころの中に走ります。こころの東日本大震災が発生するのです。ですから、この激震に耐えるだけの関係性を、相談者とカウンセラーの間で作っておく必要があります。
カウンセラーは証拠を拾い集めつつ、関係性という安全性を作りながら、この証拠を小出しにフィードバックしていきます。激震に耐えられそうもないと判断したときは、後追いはせず、また安全性の構築へ励みます。この小さな繰り返しの中で、相談者の準備が整えば、崩壊が始まります。それが始まったらカウンセラーは相談者を下支えします。決して、カウンセラーが動揺しないことです。
◇しかし、ファンタジーは壊せばいいというものでもない…
精神科医の中井久夫先生の「徴候・記憶・外傷」には、こんな説明がされています。
つまり真実をあばくことの危険性を示唆しています。真実を認識したら、それを自分の中に保持し続けるという選択肢もあるということです。愛着障害について考えると、カウンセリングせずに回復する人もいるということです。それらの人々は、このレポートにある人々に近い人なのかもしれません。
しかし、カウンセリングにやってきたら、そのときはファンタジーを一緒に見つめてあげましょう。それがカウンセラーの役目ですから。
■愛着障害には認知行動療法は向かない
認知行動療法とは、心理教育であり、成人向けにいくつかの授業(療法)を組み合わせた(パッケージ化した)もので、認知(の歪み)を修正するためのものです。すでに出来上がっている生き方を、少し生きやすい生き方に変えようとするものです。カウンセラーと相談者の立場は、教える者と教わる者の関係になります。先生と生徒の関係です。質問者さんがやっていたリネハンの弁証法的行動療法は、認知行動療法を境界性パーソナリティ障害用に特化したようなものです。
愛着障害に必要なものは、次の3つです。つまり0歳~20歳までを体験する必要があるのです。
基本的信頼感(0~2歳)の構築:母性が必要
有能感の構築(4~12歳)):頑張ればできるという感覚。これには父性が必要
アイデンティティの構築(11歳~25歳):自分は何者かという感覚。これには孤独と、一緒に歩んでくれる親友が必要
回復には、「母性、父性、親友」が必要なのです。ここには「先生」は出てきません。それゆえ認知行動療法よりも、受容・共感をベースにしたカウンセリングが有効なのです。カウンセラーは、母になり、父になり、親友になります。
■カウンセリングは終了しても、関係は続く
質問者さんの愛着障害のカウンセリングは2年で終了しましたが、この年数は人それぞれです。自分はどの辺りまで行くのがいいのかで、短くなったり長くなったりします。もちろん年齢もありますね。若い人ほど回復は早いです。
最後に、愛着障害のカウンセリングでもっとも大切なことは何かをお伝えしておきます。これは普通のカウンセリングでも同じなんですが、
カウンセリングが終わっても、関係性はずっと続く ということです。
愛着障害の人は、多くの人とは違う人生を生きることになります。それはカウンセリングが終わってもそうです。ホットな普通の生活になれるわけではありません。全般的にクールな生活です。ホットは相変わらず苦手ですが、楽にはなります。生きることが、浮遊するくらいに楽になる。解離しているわけではないですよ(笑)。
イメージは、スナフキンです
あるいは、強さが出てくる人は、クールなドクターXです。
そんな人生を送っているから、ときどき自分の位置を確認したくなるときがあるでしょう。そんなときはいつでもかつて通ったカウンセリングルームの扉を叩きましょう。カウンセラーはあなたを歓迎して迎えてくれるでしょう。そこで旧交を温めて、自分の位置を再確認して、また娑婆へお帰りください。
「あのカウンセラーとはつながっているんだ」という確信は、きっとあなたを安心させてくれるでしょう☺
余談:実は、質問者さんはGoogleのクチコミに書いていただいていました。カウンセリング経過を何度も、加筆修正いただきました。あるとき投稿できなくなったそうです。クチコミを何度も修正することはNGのようです。
⇒解決しない悩みのある方は、ソレア心理カウンセリングセンター へご相談ください。
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