精神的に未熟な人と境界知能を見分けるには?|周辺情報を積み上げて核心へ迫ること

【質問】精神的に未熟な人と境界知能の違いについて教えていただきたいです。
自分の母親のことなのですが、会話をしている途中ですぐ話が飛んだり、人の気持ちを考えて行動するのが苦手だったり・・・ 母と話をするとぐったりと疲れてしまいます。
色々と悩み調べた結果、母親は精神的に未熟なタイプまたは境界知能なのでは? と思い、質問をさせていただきました。

【お返事】母親は、精神的に未熟な人か、境界知能なのか、どちらなのか?質問者さんは、よくそこまでたどり着きました。もしあなたが心理職でなければ、それで十分でしょう。

あなたがもしそれで何か悩みを抱えているのであれば、愛着の専門家にそのあとはバトンタッチしましょう。なぜなら、未熟な人と境界知能は被るところがあって、その2つの切り分けはとても難しいからです。心理職の人も、そこが最後の難関になるような領域です。

※今回の記事はラジオでも視聴できます。テキストを見ながらどうぞ▼

※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。

■周囲から本質を予測する~ブラックホールの探し方

この切り分けは、母親の子ども、つまりあなたの見立ても重要になってきます。母子間のやりとりだけでなく、あなた自身の困難さを考えることによって、母親の状態がいったいどこにあるのかが見えてきます。

ここでいうなら、未熟なのか境界知能なのか、です。

質問者さんは、色々と考えてみて、「自分の母親が未熟なのか、境界知能なのか」というところまで見えてきています。また「会話をしている途中ですぐ話が飛んだり、人の気持ちを考えて行動するのが苦手だったり・・・ 母と話をするとぐったりと疲れる」と、母親を客観的に見ることができています。これは質問者さんの成熟度を計るには重要な情報でしょう。つまり質問者さんは、成熟していて冷静に物事を判断できる方かもしれませんね。精神的に成人期まで十分に達している方かもしれません。

  • 母親が未熟であれば子どもも未熟さを引きずりますが

  • 母親が境界知能であれば、子どもは生きるのが大変ですが、成人期まで達することができます。

ここまで見てくると、【母親の境界知能】説が濃厚になってきます。

このように、母親だけ見ていても、母親の状態がいまいち分からない場合は、その母親に育てられた子どもがどういう人なのかを見て行くことも重要なのです。あるいは、母親の母も見て行く。親子三代見る。見立ては、そうやって立体的に作っていくと確定していきます。

これを私は、ブラックホールの探し方と同じと申し上げています。ブラックホールはそのものは見えないので、周辺部の情報から確定していくからです。

ただ、繰り返しになりますが、未熟と境界知能の切り分けは難しいです。もしあなたが心理職の人なら、自分の事例をもとに愛着に詳しい先生にスーパービジョンを受けつつ、何度も見立てにトライしてください。最初は分かりづらいと思いますが、数年、それで悪戦苦闘していれば、「こんな感じか」というものがつかめると思います。

■学業と知能検査

境界知能かどうかを知るには、WAISなどの知能検査すればわかるじゃん、と言われるかもしれませんが、数値的には分かっても、それから診断ができるかというと、微妙なところです。

境界知能は普通域に隣接しているギリギリの領域なので、テスト環境によっては左右されることもあるからです。ですから、言動をつぶさに検討していくことをやっていけば、知能テストよりも高い精度で見立てができるようになるでしょう。1回のセッションで、おおまかなものは分かるようになります。

生育環境が悪ければ、生活に集中することができず学業も低迷し、知能テストの点数も悪くなる場合があります。周囲に敏感になって、ワーキングメモリーを圧迫してなかなか覚えられず、感情が凍り付いている場合は処理速度が遅くなったりして、知能指数に影響を及ぼすでしょう。それに対して訴えを傾聴していくことは、知能以外の重要な情報もゲットできるます。カウンセラーは、知能テストを当てにして緊張が緩むより、傾聴に緊張していましょう。

■自覚した人は回復できる

上の質問に回答した直後に、「自分は上の質問に出てくるお母さんと同じだ」という人から質問をいただきました。

【質問2】「会話をしている途中ですぐ話が飛んだり、人の気持ちを考えて行動するのが苦手だったり・・・ 母と話をするとぐったりと疲れてしまう」 という質問箱の ご相談(2022.2.4)に冷汗出ました。 私は疲れさせる側の人間です。生きづらさからカウンセリングに通いはじめましたが、そ こでも同じように振る舞ってしまい自己嫌悪。良くなるためには正直に、という気持ちと、自分への嫌悪で自家中毒。見立てを聞けばいいのかもしれませんが怖い。話してると疲れる、何言ってるのか意味不明、同じミスを繰り返すな、と 何度となく友人や職場で言われて来ました。 喋る自分が嫌いです。言葉を無くしたい。

【お返事】今朝回答した質問の件ですね。「疲れさせる側の人間」と自覚されていることは素晴らしいと思います。そこに生きづらさを感じたのでしょう。カウンセリングも始められていらっしゃる。自覚しているというのは、スタートを切っているということです。

そうやって自覚していくことがまずは大切です。確かに、あなたの中にはどこかしら未熟な、育っていない部分があるかもしれませんが、その原因は、おそらくあなた自身が感情を感じないようにしてきたからかもしれません。自分の感情が分からなければ、人の気持ちなど分かりません。

カウンセリングを通してご自身の感情に出会って行ってください。見立てを聞くことよりも、そっちのほうが大切です。自分の感情がよく分かるようになると、他人の感情も手に取るように分かるようになるでしょう☺

■話し過ぎる人

「喋る自分が嫌い、言葉を無くしたい」という人は、しゃべっていないと不安な人が多いですね。沈黙が怖いのです。なぜなら、しゃべっていないと自分の感情が出てくるのでしょう。あるいは感じたくない空虚さが出てくるのでしょう。それだけ日常生活で追い詰められているのかもしれません。

カウンセリングを受けていらっしゃるので、そこで思いっきり話し倒してください。何十回のセッションが経過するかもしれませんが、あなたが話し尽くしたときがスタートです。

話すことがとめどなくわいてくるというのは、不安なのだと思います。その不安の感情を話しつくすことから始めてください。こころの上澄みに澱んでいる多くの言葉を全て出しつくすと、あなたはこころの深部へ初めて潜っていけるでしょう。

■まとめ

  • 精神的に未熟な人と境界知能を分けるのは心理職でも難しい。

  • 周辺部の情報から中心部を予測する。今回の例として、子ども(質問者さん)の成熟度から母親の見立てを予測しました。実際は、もっと多くの情報から、関係性から、予測精度を上げる感じです。

  • 知能検査だけからは、知能は測定できない。

  • 精神的に未熟であっても、それを自覚できれば回復のスタートラインにはつける。

  • まずは話し尽くすことから始めましょう。

⇒解決しない悩みのある方は、ソレア心理カウンセリングセンター へご相談ください。

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