母子カプセル(母子密着)の原因と対策|愛着不全の母親は子どもと共依存になりやすい
【質問】母子カプセルは愛着不全ですか?
※今回の記事はラジオでも視聴できます。テキストを見ながらどうぞ▼
【お返事】その通りです。母子カプセルは、成人学童期つまり愛着不全の母親によって形成されるものです。心理的な背景としては、自分の親から得られなかった不全感を、子どもに満たしてほしいという気持ちが働いています。
※この記事は、Twitterの質問箱に来た質問を深掘りして回答したものです。
■母子カプセルの問題点や原因
共依存にならないための母子カプセルの外し方▶この公認心理師さんの記事を参考に、私の補足を入れながら、母子カプセルについて解説しましょう。
◇母子カプセルの問題点
母子カプセルとは母子密着の状態のことで、次の特徴があります。
母子の心理的な距離感が近すぎると母子カプセルが形成される
母子カプセルの中では共依存の世界が展開される
共依存関係は、こどものこころの成長に悪影響を及ぼす
通常のこころの発達は、次のように進みます。
乳幼児期(3歳くらいまで)は、母子カプセルが形成され、お世話をされる。この時期の母子カプセルは健全です。
学童期(4歳以降~11歳程度)は、親から身体的な距離が離れていく時期です。しかし心理的な距離感は、まだ近いまま。
思春期(11歳~25歳程度)は、親から心理的な距離も離れて、自立が図られる。ここで社会へ出ていく準備が整います。
成人期(25歳以降)で、こどもは親から自然に巣立っていく
母子カプセルを形成していると、この親からの自然な巣立ちが阻害されるのです。母子カプセルとは、
心理的な距離が近い
その関係が悪影響を及ぼしている
そんな状態なので、通常のこころの発達でいうところの「学童期の関係がいまだに続いている状態」といえます。
◇母子カプセルの母親側の原因
母子カプセルを形成する原因は、ほぼ100%母親側の問題です。一般的には、次のような原因とされています。
夫婦関係がうまくいっていない。
そのため母親のこころが満たされずに不安定になって、そのはけ口を子どもに求めてしまう。例えば、子どもにグチをずっと言い続ける等。自分に自信がない。
自分を承認してもらうために、子どもを母子カプセルの中に取り込む。
夫婦関係については表面的な話と言えそうです。なぜうまくいかないか?その言及がないからです。ここには、当然、夫の問題、妻の問題もあり、その延長線上で夫婦関係のもつれが起きているわけです。
本質的には母子カプセルの原因は母親自身の、次のような成育歴、心理的状況にあるのです。
母親自身も、自分の母との関係で、母子カプセルの中で生きてきた。
自分の父との関係でも、父子カプセルが生じている場合もあります。母子、父子、この2つのカプセルが合わさると、母親が子どもと形成するカプセルはより強固になります。子どもは窒息死してしまいます。
母親も、自分の親との関係で、自信がもてず、自分の気持ちを信じることさえできず、自分の気持ちを押し殺して生きてきた。
母親自身も、愛情飢餓に陥っていて、親の愛情を求め続けている。その代替として、子どもに満たしてもらおうとする。
■母子カプセルと愛着不全
母子カプセルは、学童期の母子関係がずっと続いている状態でした。これは高橋和巳先生の呼び方だと「成人学童期」にあたります。私の呼び方では「愛着不全」ですね。
この母子カプセルは、1人の子どもに対して生じるものではなく、すべての子どもに影響が出てしまいます。つまり母子カプセルを作る母親だった場合、その子ども全員に対して、この母子カプセルは存在するのです。例えば、子どもが3人いれば、3つの母子カプセルが存在します。
母子カプセルを作らない母親、つまり普通の健全な、共依存ではない親子関係を作れる場合、例え父子カプセルと作る夫だったとしても、子どもは父親との関係を緩くつなげながら自立していくでしょう。それくらい母子カプセルというものは強力なのです。
■母子カプセルを壊すためには~子ども編
子どもが学童期、つまり小学校4、5年くらいまでは、母子カプセルはさほど問題にならないかもしれません。なぜなら、その頃までは、心理的な距離は通常では近いからです。子どもにとって学童期は、親(特に母親)の倫理規範をモデル化する時期ですので、こころ的には密着状態が続いているからです。
思春期に入ると、子どもは、この心理的距離を離す作業に入ります。ここでカプセルが壊れていかないと、子どもの人生は息苦しいものになります。心理的な母子カプセルが壊れるということは、子どもにとっては自立であり、アイデンティティの形成がここで成されます。
ただ、母子カプセルが問題になっている場合、カプセルが強固すぎて子どもは自分の力でそれを壊すことはできなくなります。強固なカプセルを壊すには、強じんな、怒りのパワーが必要になります。つまり、ここで激しい思春期を迎えることになります。
激しい思春期は、母子カプセルの強じんさを物語っているものとも言えそうです。しかし、子どもは母子カプセルを壊している意識はありません。不良の友だちと付き合ったりするのは、この怒りのパワーを充填するためとも言えます。この怒りによってカプセルが崩壊すると、子どもは一気に世界へ向かって羽ばたいていくでしょう。
結果、実家には戻らなくなりますが、それでいいのです。母親は置いてけぼりの気持ちを感じるでしょう。この気持ちは、母親を覚醒させ、自分と自分の親との関係まで気がついてくると、カウンセリングに登場するようになります。
■母子カプセルを壊すためには~母親編
母親側が母子カプセルを壊すためにできることは、自分と自分の親との関係を見直していくことです。自分もカプセルの中に生きた人生だったなと概観する作業ですので、とてもつらいです。見直していく途中、まだ自分も親に依存しているなと、気がつくかもしれません。
その中で、自分がどれほどまでにガマンして生きてきたかを実感し、自分のこころの中で、まだ子どもが泣いていることに気がつくでしょう。
母親自身の愛着不全の状態を克服すること、これが母子カプセルを壊すために母親ができることです。個人でやれることは少ないですが、例えば…
自分の気持ちを表現するようにする
自分の中にある怒りを知る
その怒りを(自分の親に)表現する。人によっては芸術の中に表現する人もいます。
つまり、愛着不全の人は、気持ちが封鎖されています。そして怒りの問題が大きいです。愛着スタイルでいうと【不安型愛着スタイル】の人です。見捨てられ不安に起因する怒りの問題。この解決には、家族関係に詳しいカウンセラーに相談することがいいでしょう。
■まとめ
母子カプセルとは、母子間の心理的な距離が近いこと
通常では、思春期に母子カプセルが壊れる
母子カプセルの原因は、100%母親の成育歴の問題。母親自身も自分の母親とカプセルを作っていた。
子どもは思春期に、怒りのパワーでカプセルを壊して自立していく
母親は、自分の親との関係を見直していく中で、自分のガマンの人生を知ってカプセルが解けていく。
⇒解決しない悩みのある方は、ソレア心理カウンセリングセンター へご相談ください。
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