南葛SCの本拠地・葛飾区を、地元在住ラッパーの「歌詞」と共に巡る。
最近、サッカー界で話題を呼んでいる南葛SC。
『男はつらいよ』や『こち亀』の舞台となった東京の下町・葛飾区からJリーグ参入を目指す社会人サッカークラブです。
代表を務めるのは、世界的サッカー漫画『キャプテン翼』の作者である高橋陽一先生。そして南葛SCという名前は、主人公・大空翼が所属するサッカークラブと同じ。”リアルキャプテン翼”としても知られています。
小学生の頃、近くの図書館でキャプテン翼を読んで夢中になっていた自分にとっては、いつか試合を見てみたいと思っていたチームです。
また、関東サッカーリーグ1部へと昇格した今シーズンは、開幕前に元日本代表の今野泰幸や稲本潤一、伊野波雅彦、関口訓充といった大物選手を獲得して話題に。
他にも、トレーニングウェアに選手個別パートナーをつけるなど前衛的な取り組みでも耳目を集めています。
そんな南葛SCのホームタウンである葛飾区に、僕はこの2か月で8回行ってきました。
昨年四国から上京して現在は板橋区に住んでいるのですが、葛飾区へは電車で往復2時間以上かかります。縁もゆかりもない土地に、なぜそこまで時間をかけて週1で通ったのか。
もちろん南葛SCの存在もきっかけの1つですが、大きな要因となったのはZORN。
葛飾区で育って今も住み続けている、日本トップクラスのラッパーです。昨年9月の記事でも取り上げましたが、改めて彼の人となりを紹介します。
ZORNは15歳でラッパーとしての活動を開始。しかしなかなか芽が出ず、荒れた家庭環境も影響して非行に走り、少年院を経験。更生後は月〜土曜日の週6でコーキング業に従事しました。
そして2人の子を持つシングルマザーの方と結婚した後も、働きながらひたむきに楽曲を製作。その結果、iTunes総合チャート1位を何度も取ったり、武道館や横浜アリーナでライブをしたりと、大きな飛躍を遂げました。
・「クタクタで終電、いつからか遊びより眠りを優先」
・「まずは夫婦円満、俺の意見より嫁の機嫌」
・「帰り道にぱぱすで買って帰るパンパース」
という歌詞が表すように、労働者・夫・父親としての日常生活を飾り気なく表現する、庶民的な「等身大のラッパー」として大成功を収めています。
また、武道館ライブの最後には
「明日も仕事なので帰ります。お疲れっす」
と言ってステージを後に。翌朝SNSに作業着姿を投稿し、大きな衝撃をもたらしました。
※昨年の夏にコーキング業を退職
一般庶民の目線から紡ぎ出される彼の歌詞には、葛飾区の風景や観光スポット、商業施設、住民の人柄など、地元の事柄が数多く登場。まさに街の代弁者です。
僕はhiphopが好きなのですが、そのなかでもZORNが特に大好きで、彼の曲を聴くことはもはや生活の一部になっていました。
すると、毎日欠かさず聴いているうちに、歌詞に出てくる葛飾区の光景を自分の目で確かめてみたくなったのです。ファンとして聖地巡礼をするつもりでした。
しかし現地を回っていると、いつの間にか葛飾区も好きになっていることに気付き、区内の各地を繰り返し巡ることに。その結果、どんどん街に愛着が湧いてきて、今では引っ越すことすら考え始めています。
ここからは、僕が2か月間で見てきた葛飾区の街並みと感じた魅力を、読者の皆さんに紹介したいと思います。Jリーグ入りを目指す南葛SCの本拠地をZORNの歌詞と共に巡ってみましょう。
地元愛に溢れた彼の言葉が、僕たちを丁重にもてなしてくれます。
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