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中国の With コロナ時代:AI画像診断時代の幕開け

<本文の想定読者>
※以下いずれかに当てはまる方
・医療+AI分野に興味関心のある方
・With/Afterコロナの変化に関心のある方
・中国医療業界の「いま」に興味関心のある方
・日中比較による将来像を少しでもイメージしたい方

<要約>

中国の医療AI開発と応用が推進している中、Withコロナ時代に入りました。
AI画像診断の発展スピードに大きく影響した3の要素を解説したいと思います。
 ①医療現場での強いニーズと積極的な協力態勢
 ②AI応用が全面的に病院に浸透し、開発主導権が病院へ移転
 ③行政の対応や規制緩和の現状

病院における強いニーズと期待値

中国の病院が医療AI開発と応用を積極的推進するようになった。
気がつかないうちに、病院の管理者と臨床科学室の管理者は次々と医療AIの主要な開発者と推進者になり、医療デジタル化のモデルチェンジプラットフォームの建設やAIアルゴリズム開発に注力し、医療AI開発を強く推進する力になっている。

以下の報告書では、その実態を明らかにしてくれた。

2018年10月、中華医学会放射学分会(CSR)と中国医学映像人工知能(AI)産学研究イノベーション連盟(CAIERA)が発足し、中国医療設備や人工知能連盟映像委員会と共に医学画像AI産業の現状と発展ニーズ調査を展開した。

結論の一部を引用:
  ・医師個人(及びチーム)が最も興味を持っている医学AI分野は病巣スクリーニング検査(84%)であり、次いで疾病診断(65%)、疾病予後分析及び治療効果評価(64%)であり、医療教育(41%)である。
  ・ 二、三級病院(注:概ね日本の2次3次医療圏に該当)の状況は全体と似ている。(注:病院階層によるニーズのばらつきがほぼない)
  ・医師は科学研究院との協力を最も期待し、全体の支持度は88%に達し、企業との協力を望む割合は50%で、自分でAIチームを作った割合が25%を占める。
  ・医師が最も希望するのは科学研究機関や企業が協力はAI設備とソフトウェアの試用(88%)を提供することで、次いで画像処理アルゴリズムの構築(73%)、その次に研究の構想と経費援助(いずれも60%以上)となっている。
  ・67%の医師が期待するAIの共同産出形態はAI製品で、次いで課題研究、論文発表、特許で、31%の医師が個人収益を期待している。うち、三級病院では課題研究と論文発表が期待されている。どちらも70%を占めている。次にAI製品、特許と個人収益である。

この医療現場からの圧倒的なポジティブな声と強いニーズが医療+AI産業の推進力となった。

今、中国の病院ではどのようなAI応用が実現できたか?

現在病院が積極的に推進している医療AIシステムの応用方式から、下記のいくつかの種類にまとめられます。

(1)患者医療体験の補強サービス
患者と医療者とのインタラクティブな医療体験を補助・代替する人工知能サービスの主な製品形態は、外来受診プロセスの全てにAIが関与・管理するAI総合受付・案内・問診サービス、AI経過観察(フォローアップ)などであり、すでに多くの総合病院で使われている。
中国での主なプレイヤーは:テンセントiFLYTEKYitu Healthcare など。

(2)AI画像診断支援とAI治療サービス 
今回の新型コロナウイルス肺炎患者の治療において、このような人工知能は大きな役割を果たしている。例えば、新型コロナウイルス肺炎補助診断システムは武漢同済病院などの国内病院だけでなく、イタリア、日本などの国の病院で新冠病例の診断に用いられる。

(3)臨床的意思決定のサポート(CDSS)サービス
数年の探索を経て、CDSSは徐々に応用を開始し、病院の核心システムに組み込まれ、リアルタイムで医師に助けを与える。例えば、嘉和海森臨床意思決定サポートシステムは北京大学の第三附属病院の臨床診断と治療をサポートしている。

(4)ヒューマンインターフェースの医療人工知能
このようなシステムは専門の医療器械を集めて、疾病の監視と補助治療を行う。例えば、レノボは解放軍総病院のために、高齢者向けの専門的な心電保護を行うためのスマート・心電監視装置と遠隔監視プラットフォームを提供し、建国70周年のイベントなどの活動を支援している。

Withコロナ時代の喫緊の課題

2月10日、国家人工知能標準化総合チーム秘書処(中国電子技術標準化研究院)は第一陣の34項が疫病防止に役立つ人工知能製品と解決案を集めた。中では一番目立ったのはAI医療のプロダクトで、総数13個もあった。

画像診断から薬物開発までの全ての工程において、Topクラスの企業者がいる。同時に、AI医療も抗疫前線に一番近い分野では、AI画像診断支援ツールは医師の効率向上や精度向上に貢献し、AI製薬ではウィルスの標的をテストすることができ、既存薬の新しい価値を見つけることに貢献している。

ただし、既存薬再開発でも、新型肺炎に対するAI画像診断ソフト開発でも、同じ問題を直面:許認可に必要なプロセスは整備されていないこと。

中国行政の動き:評価ポイントの公開

AI画像診断ソフトの医療機器分類コードは21-04-02で、管理カテゴリは第三類医療機器(注:日本の「高度管理医療機器」を相当)。

2020年のAI医療機器の審査状況から見ると、以下2つのみがAI機器の3種類の証明を獲得した。

+ 科亜医療のFFRCT
自社開発のDeepVesselおよびDeepFFR深層学習アルゴリズムを使用して、冠動脈コンピューター断層撮影(CTA)のイメージを使用して非侵襲的機能解析(CT-FFR)を実行
+ 楽普医療の心電分析ソフト 
AI医療機器画像診断においてFDA,EC,NMPA三つの認証が揃った心電分析ツール

ご覧の通り、現時点では肺、肝臓などの画像診断支援応用シーンにおいて、承認される企業はまだないが、新型コロナウイルス肺炎の診断のためのAI画像診断ツールの開発企業では臨床実験の完了を発表し始めたところがある。

この背景の下、3月5日、待ち構えた新冠肺炎ソフトの承認プロセス案がリリース。国家薬品監督管理局(以下国薬監局、略称NMPA、元CFDA)によると、新型の冠状ウイルス肺炎の発生状況に対応するために、科学的な審査の原則と製品の安全、有効、品質のコントロールできる要求に基づいて、国薬監局、医療機器技術審査センターから肺炎CT映像補助診断と評価用ソフトの評価ポイント(試行)を発行した。

具体的に、本制度では適用範囲、基本要求、リスク管理、ソフトウェア研究、臨床研究、説明書、ソフトウェア更新試験の7つの側面から、コロナ期間中の肺部CTのAI画像補助診断ツールの審査ポイントについて説明した。

この政策はまずWithコロナ時代の肺部AI補助診断ソフトの審査プロセスを確実に加速させることになるが、さらに重要なのは、今までコロナの蔓延の中、AI補助診断ソフトが発揮してきた役割を認め始めていることとも言える。

おわりに

現場での圧倒的ニーズで生まれてきた数多くのAI医療機器の中、AI画像診断に対する期待値が特に高いのは中国での現状。
中国では現在1/2の診療は三級甲等(注:中国での最高ランクの医療施設、日本での救急病院、大型総合病院や大学病院に相当)に集中している。医療リソースの高度集中による人手不足や診療精度や患者体験問題が次々とAIにより緩和され、特にAI画像診断の有用性がこのコロナ時期で証明された結果、行政がやっと動き始め、第一弾の規制緩和をリリースできた次第。
これからAI医療機器業界の春が本格的にやって来るのは楽しみ!

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