メイク

私は今、メイク台の前に座っている。
自分の顔を鏡で見つめ、メイクをしている時によく考えることがある。
メイクとは、不思議なものだ。
メイクを始めるまでは、何もしていない状態が普通だったにもかかわらず、メイクをしていないと外に出れないと思う人までいる。
少しずつ濃くなっていく自分の顔を見ながら
今日も色んなことを考えていた。
「メイクが上手ですね」という言葉はとても厄介である。
いっけん、メイクの技術が高く、映えているといった褒め言葉のように聞こえるが、
受け取り方によっては、メイクによって素顔からの変化がすごいですねと少しマイナスな言葉のように聞こえる場合もある。
しかし、自分のためにバッチリとメイクをして来てくれた人に向かって、何も言わないのは失礼である。そんな時にどんな言葉をかけたら良いのか。どんな言葉が喜ぶのか。　
といった事を考えているうちに私は、もう仕上げのリップに入っていた。
メイクが終わり、私は街へ出かける。
今日は、気になる異性の方との食事だ。
私は、「かわいい」と思ってもらえればそれでいい。