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胃カメラ、大腸カメラ体験談


●検査を決断するに至るまで

25歳の私はつい最近、胃と大腸の内視鏡検査を同時に受けてきた。
一般的に内視鏡をやるにはまだ若い年齢なのだろう。

私は不安を感じやすい極度のビビり症であり、内視鏡検査を受けた潰瘍性大腸炎の知人が「もう2度とやりたくない」と口にするのを聞いて、あまりの恐怖で敬遠していた。
そんな私がこの検査をする決断に踏み切ったきっかけは3つある。
1つ目は尋常じゃなく胃腸が弱いからだ。
2つ目は仕事で医療が充実していない田舎に配属されることになったからだ。
3つ目は眠っているうちに検査が終わるという内視鏡クリニックを母がおすすめしてくれたからだ。

最低でも年に1回は救急車を呼ぶレベルの激烈な腹痛があったし、下痢と便秘を繰り返したり、食べると必ず腹痛を起こす時期があったり、トイレが異常に長かったり、トドの鳴き声のような長いげっぷが出たり、お腹の膨張感や不快感に苛まれていた時期が2〜3年前からあった。

もちろん内科にも行ったが、エコーをしても問題は無く、「過敏性腸症候群ですね。」の一言で終わりだった。
処方された薬もあまり効果が実感できなかった。

都会に住んでいた私は「今度また症状が出たらその時に内視鏡に行けばいいや。」と逃げ続けていたが、今度はそうもいかない。
街の病院に行くにも片道7時間ほどかかる田舎で勤務する事になってしまったからだ。

4月1日からの勤務という事もあり、「引っ越す前に体のメンテナンスをした方がいい。」と親の助言を受けて、歯や目などありとあらゆるところを治してきた。
残すところ胃カメラ、大腸カメラだけである。


●検査前日

病院から指示を受けたもの以外は飲食禁止となる。
失恋してから拒食症だった私にとって食事制限は特段つらいものではなかった。
むしろ「前日にものを食べていいのか?」と不安にすらなったくらいだ。

21時以降は完全に絶食で、処方された下剤を飲んで就寝する。
この下剤は服用した約10時間後に腸の蠕動運動を促して朝に排便をさせるという下剤らしい。
心配性の私はこの下剤の事を調べ、「通常は15滴を水に溶かして飲む事。内視鏡検査の前日は150滴すべてを飲む事。」を知り、「普通は15滴でいいのに1度に10倍の量を飲むってヤバくないか…?」という不安から半分ほどしか飲めなかったのであった。
そして夜は明日の検査が不安で3時間しか眠れなかった。


●検査当日

6時30分に起床。前日に飲んだ下剤の効果は現れなかった。
「やっぱり全部飲んでおくべきだったか?」と後悔した。

8時30分に病院へ行き、下剤を飲み続ける修行が始まった。
本当は自宅で飲んでからの来院だったのだが、過去に下剤でアレルギーを起こしたことがある私は病院で飲むことを選択した。

幸いアレルギーは起こらなかった。
おそらくあのアレルギー反応はスト缶と眠剤を飲んで寝た二日酔いの朝に、脱水のままスポドリで古い下剤を一気飲みしたという愚行による過剰反応だったと推察される。
更に拒食による栄養不足が重なっていたのだろう。
そりゃ異常が出なきゃ逆におかしい。
コロナワクチンでも何も起こらなかったのだからPEGアレルギーはないと考えて妥当であった。
兎に角ここで私はPEGアレルギーではないと断定できたので1つ安心できた。

下剤はストゼロ梅味の炭酸抜きに昆布と鉄を1週間漬け込んだ味がした。
味覚が終わってる私にとっては特段不味いものではなかった。
キツかったのは大量の液体を飲むことで体温が下がりとても寒かった事と、煙草が吸えなかった事くらいだ。

下剤を4、5杯飲んだところでもよおした。
普段から小食だからか個体として出るものはなく、最初から液体として出てきた。
その後何度もトイレに行ったが、普段から下痢と便秘を繰り返してはトイレの住人となっている私にとってそれほど苦痛ではなかった。

内視鏡検査が嫌すぎた私はわざと時間をかけてゆっくりと下剤を飲んでいたが、それでも13時には飲み終わってしまい、14時30分を予定していた検査は繰り上がって13時30分からになってしまった。


●いよいよ検査…!

名前を呼ばれて控え室に通された。
ロッカーに荷物を入れて検査着に着替える。
今にも心臓が口から飛び出そうである。

鼻からの胃カメラを希望した為、鼻の通りをよくする液体を両鼻にぶち込まれたが特に痛みはなかった。
胃を綺麗に見るための薬も飲まされたが、これも甘くて美味しかった。
ベッドに寝かされて点滴が打たれる。
前の人の検査が終わるまでそのままベッドで寝て待っているように指示されたが、下剤の効果がまだ残っており2回ほどトイレに駆け込んだ。

「〇〇さん、検査ですよ。」
いよいよ私の番となり名前が呼ばれた。
この世の終わりのような顔で検査室に入る。
物々しい機械が仰々しく並んでおり、ベッドに横たわるのも躊躇われた。
何をする機械なのか全て説明してほしい。
友人も眠りながらの検査を受けた事があるらしいが、「途中で目が覚めて辛かった。」という話を聞いていたので更に不安に拍車をかけていた。

ベッドに座り、胃カメラをするための麻酔を喉に吹きかけられる。これも痛くはなく、辛くなかった。
歯医者の麻酔のようにだんだんと喉がビリビリと痺れてきて上手く唾を飲み込めなくなる感覚があった。

医者「はい、ベッドに横向きになって寝てくださいね〜。これから眠くなる薬入れますからね〜。」
私「え、これもう薬入ってますか?」
医者「入ってますよ〜」
私「え、全然眠くならn」

そこからの記憶は全く無い。
目を開くと1時間半が経っていたのだ。

看護師「〇〇さん、終わりましたよ〜。」
私「………?これからカメラですか?」
看護師「終わりましたよ〜。笑」

どうやら私は令和のジョン・タイターになってしまったらしい。


●検査結果

おそらく鳩が豆鉄砲を食らったような顔のまま点滴を抜かれた私は、私服に着替えて待合室に返された。
静脈麻酔には健忘作用があるらしく、検査後の記憶についてはかなり朧げなのである。
どうやって椅子まで移動したか、どうやってメガネをかけたか、どうやって着替えて、何を説明されたのかはっきりとは覚えていない。
その為ここからは母から聞いた話である。

私は車で迎えに来てくれていた母と一緒に検査結果を聞いた。
直腸辺りにあったポリープを1つ切除した以外に何も異常は無いとのことだった。
一応病理検査には出すが、ほぼ確実に良性らしい。
母が色々と医者に質問をしていたのをうっすらと覚えている。
胃腸のガスを取る薬と腸内細菌を整える薬を処方してもらった。
ポリープを取った為、激しい運動とアルコールとお風呂は控えるように言われ検査は終了した。

自宅への道中、緊張が解けたからであろう。
私は「お腹が空いた。」と言い、途中でコンビニに寄ってもらって菓子パンとカフェラテを買っていたらしい。
下剤の影響もまだ残っており、トイレにも寄ってもらったらしい。

自宅に着いたところから段々と意識がはっきりとしてきた。
術後の痛みや違和感は一切ない。
ただ一時的に見当識機能が曖昧になるだけだ。
あと目のまわりがカピカピだったから涙を流していたんだと思う。

体の中にカメラを入れられたという事実を全然実感出来ていなかった私は、自宅でトイレをしたときにポリープを切った時に剥がれたのであろう赤い腸壁が水面に浮いているのを見て、ようやくカメラが入っていたことを実感した。
その日の夜は回復食として湯豆腐を食べた後にシャワーを浴びて安眠した。


●検査を終えて

あんなにも不安で嫌だった内視鏡検査がこんなにもあっけなく終わってしまったことに未だ当惑している。
タイムリープすぎて「明日が本当の検査日なんじゃないか?」とすら思う。
「終わったぁ!」という達成感も、「何もなかった!よかったぁ」という安堵感もいまいちピンとこない。

でも確かに検査をして、何も異常がなかったという事実はある。
カメラを敬遠してずっと不安を抱えたままだったが、無痛の検査で安心を買えたのはとても大きい。
気持ちが軽くなった。

これからは腸内環境に気を遣って生きようと思う。
また数年後に胃カメラと大腸カメラをやるときはここでやりたい。

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