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Solanaは長期的視野で公共財プロトコルを育成

オープンソースのネットワークであるSolanaは、世界中の開発者のコミュニティが1秒以下のトランザクション確定時間で毎秒数千のトランザクションを処理できるグローバルなステートマシンを構築しようとする集団的努力の結晶であると言えます。Solanaネットワークの新しい用途を創造する新しいツールやプロトコルを誰でも立ち上げることができ、プロジェクトやビジネス、さらには産業全体を新たに創造することができます。

これらの独立したツールやプロトコルが分散性、不変性、持続可能性を向上させるために行う作業を支援することが重要です。そうした取り組みはツールやプロジェクトをより安全、よりセキュアにし、開発者とユーザーの信頼を高め、企業による採用への道をも切り開くことにつながります。Metaplexが本日発表した、Solana上のNFTの構築、管理、更新に使用できるオンチェーンプログラム「Token Metadata」は、これらの価値を体現するプロトコルの最新の例となります。

オープンソースソフトウェアの強みのひとつは、世界中の誰であれ、プロトコルの未来を定義できることにあります。このようなオープンソース開発の文化が、今日のクリプトのあり方を作り上げたと言えます。しかしこの業界は、トークンセールや資金調達に頼らない持続可能な収益モデルの実現に依然として悩まされています。オープンソースで、かつマネタイズ不可能なツールが技術的に成熟するにつれ、より多くのプロトコルが持続可能性を達成するために、寄付的補助金や中立的料金モデルに目を向けるようになることが解決策として期待されます。

分散化を通じたセキュリティ

Web3エコシステムの人々が分散性について語るとき、通常はレイヤー1やレイヤー2ネットワークの基礎的なインフラ(バリデーターの数、⦅訳注:ネットワークの過半を握るために必要なノード数を表す⦆ナカモト係数など)に言及します。しかし、分散性については、そうしたブロックチェーンの上に構築されるインフラ的なプロトコルについても考慮する必要があります。

プロトコルを分散化するための最良かつ最もシンプルな方法の1つは、Squadsのようなツールを用いた複数人署名(マルチシグ)セキュリティを利用することです。マルチシグを設定したウォレットは、資金移動やオンチェーンプログラムのアップグレードなどのアクションを実行するために、複数の独立したウォレットからの承認を必要とします。これは、ミサイルの発射ボタンは複数の場所から同時に押す必要があるのと似ています。プロジェクトはマルチシグを活用することで、一人の悪意ある攻撃者(またはハッカー)がコントロールを奪う可能性を大きく低下させることができます。

Metaplexはこれをさらに一歩進めて、プログラムの「不変性」を目指すと発表しました。暫定的に、MetaplexはToken Metadataプログラムの制御を複数の独立したセキュリティ会社に委託し、これらの会社でToken Metadataプログラムを管理するマルチシグを構築する予定です。Metaplexはこのプロセスを今後18ヶ月以内に行うことを約束しており、このプログラムに何らかの変更を加えようとする場合、マルチシグ上のエンティティのうちその変更に同意する者が定足数に達しない限り、Token Metadataプログラムは変更されないことになります。綿密なセキュリティ監査を実行する間、この重要なインフラ的ツールは以上のように分散性を維持します。

不変性と検証

プログラムのアップグレード権限を管理する次の段階として、プログラムの形式的検証を行い、現在の状態でプログラムを永久にロック(凍結)することになります。形式的検証とは、プログラムの命令セットが、開発者の意図した通りに、仕様で定義されたことしかできないことを数学的に証明するプロセスのことです。これにより、プログラムのユーザーに大きな安心感をもたらし、数年から数十年先までこのプログラムが公共財として残ることを保証することができます。

プログラムのコア機能の安全性が確定し、コードの監査が十分に行われた後、いよいよプロジェクトは不変性の実現へ移ります。不変性の実現プロセスでは、プログラムのアップグレード権限を制限した上でアップグレードキーをバーンすることで、ブロックチェーン上のプログラムの現在の状態を実質的に固定します。広範な監査と脅威分析が行われた後で実現される不変性は、オンチェーンプログラムセキュリティの最終的なゴールとなります。

Metaplexは今回の発表で不変性への第一歩を踏み出しましたが、他のプロトコルについても、メインネットでの十分なバトルテストの後、不変状態に移行することが期待されます。

経済的に持続可能なインフラを創る

DeFiプロトコルは、今日に至るまで長期的に持続可能な公共財の開発に成功した唯一のインフラプロトコルであり、通常これはトークンによって、またはプロトコルの構成上規定された一定割合の手数料を徴収することによって実現されています。

持続可能性には様々な形があります。Linuxはインターネットの基盤になることで持続可能性を実現し、それ故Linuxに依存している企業から多額の寄付を受けています。web3では、この持続可能性は「寄付型の」補助金という形をとることができます。この補助金は、ステーキングの報酬を得ることで、プロトコルの長期的な発展を支えるのに十分な金額となります。しかしDeFi以外のプロトコルは、第3の選択肢である固定料金モデルを模索し始めています。

固定料金モデルが機能するためには、料金は信頼できる中立的なものでなければならず、またインフラの一部を利用するすべてのユーザーに均等に適用されなければなりません。固定料金モデルの最もシンプルな形は郵便サービスです。100万ドルの小切手であろうと、友人からの手紙であろうと、国内のどこに手紙を出すのにも全く同じ費用がかかります。

Metaplexの中立的かつ無差別な手数料は、Token Metadataの持続可能性を確保するのに役立ちます。またこれらの手数料は、Metaplex Foundationが開発した手数料の対象とならない様々なオープンソースツールを支援するためにも使われることになります。

私は、今後Token-2022プログラムが実装されることで、持続可能な公共財を構築するための開発者の選択肢がさらに増え、トークンセール以外にも手数料モデルに多様性が生まれることを期待しています。


この記事の初出はEvolving Public Goods Protocols for the Long Term, May 23, 2023, Austin Federaです。
https://solana.com/news/evolving-public-goods-protocols-for-the-long-term


翻訳:さーもん(寺本)
https://twitter.com/salmon_crypto

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