Sequoia Capital 投資先宇宙スタートアップ
こちらは衛星データを活用したデータ解析コンテスト「Solafune」を運営しているメンバーが、日々収集している宇宙に関連するニュースや情報を個人的に欲しい形でまとめて整理したものを記事化して外部に公開するという内容のnoteです。
今回の内容は以前の「Y Combinator 投資先の宇宙スタートアップ」「Andreessen Horowitz(通称:a16z)投資先の宇宙スタートアップ」に続き世界で最も有名なVCのひとつである Sequoia Capital です。Sequoia Capital といえば、Google、Apple、YouTube、Zoom、Yahoo!、WhatsApp、NVIDIA、Instagramなど数多くの世界的な企業に投資した実績があり、世界中の起業家及び投資家が注目しているVCです。今回はそのSequoia Capitalが投資している宇宙スタートアップについてまとめました。
1. Orbital Insight (衛星データ活用サービス)
Image Credit: Orbital Insight
Orbital Insight は衛星データを解析してあらゆる産業に解析結果や関連サービスを提供している企業です。大量の衛星データを目的の用途に合わせて加工し、活用するためには人力でも多大なコストがかかります。同社は機械学習技術を活用することで膨大な数のデータを処理し、ビジネス利用を実現しています。
同社の有名な事例としては、石油タンクをモニタリングして、タンクの屋根の浮き沈みによってできる影から残量を予測し、市場価格を予測するというシステムです。他にも商業施設の駐車場に止まっている車の台数をカウントし、業績の予測に活用するなど、同社のクライアントとなる企業のニーズに合わせてシステムを作る「受託開発」的にビジネスを展開しています(していました)。
最近では Orbital Insight GoというSaaSも展開しており、物体検出や環境の変化など、汎用化できるシステムの利用ライセンスを提供するサービスもリリースしています。また、日本国内にも進出しており、東京海上日動との提携なども発表しています。
Orbital Insight は2013年にJames Crawfordによって創業された会社です。James は Google や NASA での業務経験があり、業界では名の知れた人物です。創業時のシードラウンドから Sequoia Capital から出資を受けており、2015年のシリーズAから2019年のシリーズDの投資に至るまでのほとんどのラウンドでSequoia Capital がリード投資家となっています。計5回のラウンドでの投資額は$128.7M (約140億円)に達しており、シリーズCでは伊藤忠商事が入るなど日本の会社も投資を行っています。
会社サイト→ https://orbitalinsight.com/
日本語サイト→ https://jp.orbitalinsight.com/
2. Vector Launch (超小型ロケット)
Image Credit: Orbital Insight
Vector Launch は2016年にJim Cantrellによって創業された超小型ロケットを扱う企業です。同社は2017年当初、小型の衛星(数十kgから100kg程度)を運ぶことのできる超小型ロケットを年に100基打ち上げることを目標としていました。
2017年に行われたシリーズAの投資では Sequoia Capital がリードし、Shasta Ventures、Lightspeed Venture Partnesなど15社から計$21M(約23億円)の出資を受けており、2019年まで計9回のラウンドでの合計出資額は$102.8M(約112億円)に達していました。
しかし、同社は2019年2月に米国の連邦破産法第11条にしたがって破産申請をし、再建を図ることとなりました。CEOであったJimは退任し、従業員も150人以上がレイオフされる結果となりました。ロケットの開発と打ち上げが計画通りに進まず、Sequoia Capital が投資を中止したことが原因の一つであると考えられています。投資額から考察すると(100億円溶かすには早すぎる)、マイルストーンを達成した段階で追加出資が行われる契約で、今回その目標を達成できずに追加出資を打ち切られたのではないでしょうか。
より詳しい考察についてはインターステラテクノロジズ社の稲川貴大氏のnoteがとても参考になります。
会社サイト→https://www.vector-launch.com/
まとめ
Sequoia Capital は2社とも早い段階から入り、リードで投資し続けるというポジションをとっています。両社とも業界では有名な人物がファウンダーであり、そのような企業に投資家が早い段階から大きく張るというのは宇宙業界では多く見られます。Orbital Insight のように創業初期から投資を実行し、衛星データの活用という領域を世界的にリードする企業に成長を遂げている一方で、Vector Launchのように約3年というスピードで破産申請をすることになった企業に投資を実行してしまった事例もあります。
経営面・技術面のマイルストーンの設計、技術蓋然性の判断、現実とのギャップなど、フロンティアやディープテックと呼ばれる領域では不可欠な要素を確認しながら、多くの人がポテンシャルに気づいていない段階でリソースを張ることの難しさが伝わってくるような投資事例です。
参考
・Crunchbase - Orbital Insight
・Sequoia Capital HP - Orbital Insight
・TechBlitz interview - Orbital Insight
・Crunchbase - Vector Launch
・SpaceX Vet's Startup Readies Small Rockets for Takeoff
・Vector Partners with Sequoia and Secures $21M in Series A Funding
・Vector Space launches Galactic Sky software platform and satellite design division to provide access to satellites, space data
・110億円調達米国ロケットベンチャー破産はナゼ?
Solafuneについて
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