サクラミーツ文化祭に見たもの~光明か、あるいは蜃気楼~③(終)

 どうですか、そろそろ眠くなってきませんか。もしそんな効果があったなら、私のnoteは眠れない人にこそおすすめと、触れて回ろうと思います。
 ここから推しメンについて語るわけですが、ついでに実証実験ですね。


【推しメン・大沼晶保を中心に振り返る「サクラミーツ文化祭」】


 ここからは我が推しメンの一人、大沼晶保さんにフォーカスして「サクラミーツ文化祭」を振り返ります。

・沼ソング

 ファン向けのトークでしか聞けなかった知る人ぞ知る名曲の存在は、いつしかBuddies皆が知るところとなり、本人が趣味で作っていた音楽に、いつしかしっかりとしたオファーが届き始め、イオンカードライブのために作ったれっきとしたCMソングは今、ライブ会場のイオンカードブースでも流れています。
 メッセージ性は感じるが音にはめない、少しはみ出す独特な節回し、ワードセンスの歌詞が、美しい旋律だとは言えないかもしれないが何だか耳心地がいい音楽に乗って、どうしても耳に、心に引っ掛かる。
 櫻坂46唯一のシンガーソングライターである彼女の歌は、なるほど、敬愛する50TAさんの影響を強く受けているのが分かります。
 前回に引き続き、今回もイベントのオープニングテーマとして沼ソングとアニメーションが披露されましたが、今回は特に韻を強く意識されたようで、曲もポピュラー度が増しているように感じました。
 しかし、ファンをとても気遣った温かい気持ちとと共に、ちょっとクスッとしてほしいという茶目っ気が覗く、相変らずの癖が抜けない今回の歌は、体感的には過去最高傑作でした。
 沼ソングも、もう随分な曲数が集まりました。どれも大沼さんの優しい人柄を感じる素敵な歌ばかりで、でも時々100%笑いだけの作品もあり、引き出しは多彩です。
 そろそろベストアルバム、そろそろサブスク解禁、してくれたりしないものでしょうか。

・演技力

 大沼さんはどちらかと言えば不器用な方で、不得手なことが多い反面、特定のジャンルに異様に強い、特定の条件下に異様にはまる、そんなピーキーな方かな、と個人的には思います。
 先程は演技がどうだと宣ってしまいましたが、大沼さんの演技にはしばしば惹かれることがあります。3rdシングルバックスライブでの「流れ弾」でのセンター姿を見た時、「そこ曲がったら、櫻坂?」で菅井さんにドッキリを仕掛けた時は、演技仕事の可能性を強く感じたものです。

 今回のイベントにて、企画映像として4人が互いにドッキリを仕掛ける様子が公開されました。その時の大沼さんの演技は何とも白々しく、当人の「大成功」の言葉とは裏腹、3人には思惑が見透かされていたように見えます。
 即興やアドリブには弱いかもしれませんが、反面、役や台詞を与えられると強いタイプでしょうか。特に一癖ある人物を演じる時。悲壮感を漂わす時。また、驚きや激情を露わにするようなシーンの台詞の熱と、その時の説得力ある表情はなかなかのものじゃないですか?と、つい推しを贔屓してしまいます。

 この度のイベントで披露された、ニッポンの社長さんのコント「働くお母さん」。段ボールの箱の上、に飛び込む沼ダイブは間違いなく見せ場ですが、私は特に、このコントが番組内で先んじて披露された際の、辻さんに食って掛かる大沼さんに目を引かれました。
 マジで怒ってる。それが伝わる声色と迫真の表情でしたから。今回のイベントでの当該シーンは、史上最高クラスの沼ダイブのためのロイター板になっていたようですが。
 男性ブランコさんとのコント「日本変更委員会」でのレジスタンスとしての振る舞いも印象的です。
 正体を明かし、追い込まれ、浦井さんを人質に取ってからの一言。あの時の悪役然とした物言いと悪辣な表情は、お手本のような敵役(かたきやく)に見えたものです。
 
 男性ブランコ・平井さん脚本のドラマにおいては、中野茜という女の子を演じていました。登場人物総じて漫画やアニメの中にしかいないような人物で、茜ちゃんはそれこそ、ピンク髪の不思議ちゃんといったいかにもなキャラクター。
 それが大沼さんに妙にハマっていたような気がします。まずピンクの髪色がハマってましたし。
当人は予てからピンクの髪色に興味があると話していましたが、この度は、不思議な女の子ということでそれに合わせてみたのだというのはミーグリでの弁。思っていた通りお似合いでした。
 全体的にふんわりとした話し方の茜ちゃん、大沼さんの「ニン」に合っていたようにも感じますし、妖怪に取り憑かれた際のぬめりのある声や視線に、人外感が見受けられました。
 瞬間風速だけで語れば、見どころはあったと思う大沼さんの役者ぶり。いつか舞台仕事でも巡ってこないものでしょうか。とても極端なキャラクターほど、彼女はハマるような気がするのです。

・沼TA

 沼の住人としてはイベントのハイライト中のハイライトが、沼TAでした。
大沼さんが憧れのスターと共に作った歌「LoveTA」を、その憧れのスターと肩を並べて歌う彼女の姿は、ミラーボールのように照明を弾く大きな襟を抜きにしても眩しいものでした。
 50TAさん、狩野英孝さんを前にしているときの、乙女前回な、乙女前回のまま乙女らしからぬ程挙動が大きくなる大沼さんは可愛くてたまりませんが、この度のライブでの大沼さんは何とも雄々しかったものです。
 そこにあったのは優美なダンスと共に歌う一アイドルとしての姿ではなく、片手にマイク、もう片手を気持ちのままに腕振り上げて、飛び上がって歌う、彼女は何だかボーカリスト然としていました。敢えての表現ですが、男前でした。
 櫻坂46ではなかなか耳にしない曲調に合わせた、これまた櫻坂のライブではあまり見ないタイプの、しかし確かにらしさを感じる振り付けは武元さんの逸品。それをまた誰より大きく踊る大沼さんに、改めてパフォーマンスの個性を思い出します。
 夜の部ともなると更に乗ってきたのか、歌いながらの所作は自由度を増し、遊び心も加わって、大沼さんが一段と堂々としたものですから、二人のコンビ感が強くなったように見えました。
 正直、歌が上手かったとは言えないでしょう。50TAさんのほうが余程声が出ていたくらいです。
 普段のライブ会場よりは客席も舞台も狭いですし、映像演出もないですし、照明演出もないですし、フォーメーションだって勿論ありません。
 衣装も特注とは言えライブ衣装ほど作りこまれていないですし、武元さんが振り付けを考えてくれたとは言え、つまりTAKAHIRO先生らその道のプロが拵えたものというわけでもありません。
 それでも、聞いてくれる人を想い、50TAさんのことを想い、懸命に、でも楽しそうに歌う彼女の姿は、通常の櫻坂46のライブや、バックスライブでセンターを飾った時に比肩するほどに輝いていたように見えました。
 最後に50TAさんと背中を合わせてポーズを決めるその様に、私も思わず「カッコいい」とつぶやいてしまいましたが、それは絵面のカッコよさへの評価以上に、この実績や、ここまで至ってみせた道のり、足取りに対する賛辞でした。

・総括

 サクラミーツメンバー4人それぞれが主役を務めた本イベント。ゲストメンバーにも見せ場があった中、しかし、やはり大沼さんは、この度のイベントにおいて一番優遇されていたと言えると思います。
 「沼TA」予てから水面下で進めてきた、櫻坂46と比べれば大物と呼んで差し支えないゲストの協力も得て作った目玉企画、イベントのクライマックス、その発端にして主役だったのですから、それは必然的だったかもしれません。
 メンバー以外の著名人とユニットを組み、ただ一人特注衣装に袖を通して、他のメンバーをバックダンサーに従えて。普段のライブに比べれば会場は随分と小さく、舞台は狭く、観客も少ないながら、その場所で共作とはいえ自らが携わって作った歌を披露する。
 櫻坂46メンバーによる櫻坂46の冠番組「サクラミーツ」のイベントの中にありながら、櫻坂46の、と言うよりは大沼晶保個人の活動、個人のための企画という色合いが濃くなっているように見えたそのステージ。
 それはメンバー個人によるドラマの仕事、舞台の仕事などに近いような気もするのですが、グループとしての活動であるライブに近いようにも見える、それは櫻坂46メンバーの活動としては実に異色な、珍しい瞬間のように見えました。
 イベント当日に近い日付が誕生日だったこともあり、昼公演では松田さん、夜公演では大沼さんがサプライズでお祝いされ、誕生日ケーキをわざわざ狩野さんが持ってきてくれました。
 その後、狩野さんがそれぞれに対し今後の目標を聞くところまでは共通していますが、夜公演のみ、大沼さんに対しては狩野さん(50TAさん)から、持ち歌であるバースデーソング「自分にハッピーバースデー」が送られました。それも、大沼さん向けに歌詞を変えて。
 推しメンにそんなことしてもらったら、それは一生ものの思い出でしょう。アイドルを応援しているからこそ、この時の大沼さんの胸中が少しばかりは分かるものです。
 誕生日ケーキに飾られた写真は大沼さんと50TAさんの2ショット(?)、イベント終盤はおよそ大沼さんのための時間でした。

【光明、のように見えたもの】

・大沼さんと沼の住人にとっての「サクラミーツ」

 「サクラミーツ」は、4人の願いが叶う場、可能性が広がる場です。
 武元さんが「アメトーーク!」に出たいと言えば、番組内にその練習の場を設け、遂には本当に「アメトーーク!」の出演に繋がりました。
 井上さんは、ファンだというジャルジャルさんの漫才を披露する場が用意され、「そこ曲がったら、櫻坂?」で芽吹いていた増本さんの脚本家としての才能は花開き始め、大沼さんは自身が作った沼ソングに絡めて、憧れの方との共演に至りました。
 数々のテレ朝バラエティを手掛けるスタッフさんが作る「サクラミーツ」、つくづく恵まれています。

 そして「サクラミーツ」は、彼女たちの努力が実る場、実りやすい場ではないかとも思います。
 櫻坂46の表題曲歌唱メンバー争いはあまりに熾烈です。「サクラミーツ」の4人もその場を勝ち取るために努力を続けているでしょうが、いつでもそこに名を連ねられるわけではない、大沼さんに至っては一例外を除きそこに至っていない、厳しい環境です。努力の分だけ、叶わぬ時の悲嘆は大きいものでしょう。
 選抜だけが花ではないとはいえ、自分のために、ファンのために、何より選抜という花は欲しいものでしょうが、彼女たちがそれを手にできる機会は、1列目、2列目に並ぶようなメンバーに比べればごく限られています。
 対して「サクラミーツ」は、もうこの4人が主役、フロントです。櫻エイトならぬ櫻フォーです。ライバルがはなからいないのですからそりゃそうなのですが、いや、この番組に選ばれたという意味では「サクラミーツ選抜」を勝ち抜いたとも言えるでしょうか。
 笑ってもらうために準備し、練習し、客前で披露する、努力の結晶を見せる場がある。ライブとはまた違った楽しさを届けられる場所がある。それは独特のやりがいでしょうし、きっと自信に繋がる舞台でしょう。

 「沼TA」を見た時、櫻坂46本体のライブやバックスライブでの活躍に引けを取らない、そんな風に見えた彼女の姿に、沼の住人こと大沼晶保推しとしては、何だか少し浮かばれたような気分になりました。
 それは彼女だから至れた、彼女のアイドル人生の一つの大きな成果、夢が叶った瞬間、努力が報われた瞬間のように見えたからです。
 常に全力で選抜入りを目指し、何度辛酸を嘗めても決して諦めない、傷つきながら進む彼女と共に味わった悔しい思いが、少し軽くなった気がしました。
 もしかしたら、大沼さんの苦節が長すぎて、ファンとしても耐え忍ぶ時期が長すぎて、耐えがたいがために報われたような錯覚に陥っているだけなのかもしれませんが。
 そもそも別に、彼女もこのために欅坂46に入ったわけではないでしょうし、「沼TA」があったから、じゃあ選抜に入らなくてもいいよね、とは本人にしてもファンにしてもなるわけないのですが。
 バラエティ番組もアイドルの仕事の一環ではあるものの、活動の本分・軸はやはり歌って踊ること、それを多くの人に見てもらうことではないでしょうか。一番のやりがいはそこにあるのではないでしょうか。その機会をより得られるのが、選抜というポジションです。
 武元さん曰く、バラエティ番組出演は広報活動。勿論その広報活動に、「サクラミーツ文化祭」に、「沼TA」に、真摯に取り組んでいることでしょう。その上で、目指しているのは選抜ではないでしょうか。
 それは欲張っているとかではなく、バラエティ番組とはそもそも、歌って踊る場により多く立つための手段なのですから。
 ただ、これを手段と捉えられるのは、大沼さんら4人を櫻坂46の一員という側面で捉えた場合です。一アイドル、一タレントとしては、バラエティで活躍すること、そのこと自体を目的としてもよいのではないでしょうか。そこで得た成果に満足してよいのではないでしょうか。

 「沼TA」ここに、彼女だけが立てるステージがあった。バックスライブでのセンターのような、「そこ曲がったら、櫻坂?」での前傾姿勢・スリッパ飛ばし・不徳の致すところのような、大沼晶保史に刻むべき、どのメンバーにも勝る瞬間があったと思うのです。
 もし万が一、彼女が表題曲センターに立つような奇跡があったとして、「沼TA」には、それにも負けない価値があったと思います。そもそも同じ土俵の上にあるものでもないでしょうが。
 アイドルとして測れば前者の方が遥かに勝りますが、タレントとして測れば後者も、前者に対して判定勝ちをもぎ取れる可能性はあると思います。
 表題曲センターが現実的ではないとするなら、彼女は彼女が歩み得る、自身で選択し得るアイドル人生の中で、最高に等しい道を歩めているような気すらします。
 「沼TA」は、選抜されるされないを超越した一つの成果。大沼さんとしても、そういうことにしてよいのではないか。沼の住人として、そういうことにしてよいのではないか。
 私はそういうことにしておこうと思いました。思いましたが・・・
 50TAさんは、「沼TA」としての次作以降に前向きなコメントをくださいました。まだ何も決まっていない、現状リップサービスのようなものですが、いつか叶ってほしいものです。
 その舞台だけでもファンとしては十分ですが、50TAさんの存在が、彼との共演が、彼女の櫻坂46としての活動に、取り繕わず言えばミーグリ売上にほんの少しでも良い影響を与えないかと、淡く甘く期待してしまっています。 
 結局まだまだ、選抜には未練たらたらなのです。
 

・近頃の大沼晶保

 少し話を脱線させます。

 大沼さんはしばしば、「みんなを笑わせたい」とおっしゃいます。アイドルがよく言う「みんなを笑顔にしたい」とは、言葉が似ているようで大分ニュアンスが違います。大沼さんの言うそれは、芸人さんのそれに近いです。  
 彼女の人柄から買いかぶれば「楽しんでもらいたい」という優しい意味合いもあろうとは思いますが。
 大沼さんが半生を語るインタビューなどからは、どうも彼女は学生時代の頃から自身の癖の強さを自覚し、それを活かして道化を演じてきたように見受けらえます。
 一般的とは少し違う、天然と言われる要素があるにはあったでしょうが、笑われる以上に、能動的に笑わせる。
 それは弄りに対する自己防衛であるとか、本心とは異なる無理だった、という点もなくはないかもしれませんが、現在までの活躍を見るに、彼女が「笑いを取りたい」という気持ちを持っていることは、きっと嘘ではないのだろう、嘘だけではなかったのだろうと信じています。
 彼女のギュッ友こと遠藤光莉さんは、最近の「そこ曲がったら、櫻坂?」にて、大沼さんの常識人振りを強調しています。沼ソング「君一択」の歌詞を改めれば、大沼さんは「普通」「一般的」を十分に心得た上で、敢えてそこを外すことがあると分かります。
 彼女が大不思議に見えるのは、ただ彼女が語彙力不足で、咄嗟に出る単語が不正確なために天然発言ぽくなるからなのかもしれません。
 彼女が大不思議に見えるのは、生来のダイナミックさゆえに、誰もに起こり得るうっかりやドジによって巻き起こる結果が大きくなるからではないかと思うのです。
 もし、事実大不思議な点があるとすれば、それは思考、発想、発言そのものではなく、体のブレーキが利かない、あるいはブレーキを掛けないことができる、常人ならば減速を意識するタイミングでもアクセルを踏める点なのではないでしょうか。
 常人以上に没頭し、精神が肉体を凌駕する、そんな点ではないかと思うのです。
 
 大沼さんは、一芸能人として周囲から付けられ、または期待されたキャラクターと本来の自分とのギャップに悩むこともあるようですが、「笑いを取りたい」という気持ちもまた本心ではありそうです。
 恐らくそんな葛藤を続けてきた彼女は近頃、果敢にボケ始めたように見えるのです。突飛な発言や行動が笑われる、のではなく、自ら笑いを起こそうとしているように見えるのです。
 計算して笑いを生む、流れを作りオチまで持っていく。彼女はそれに挑んでいるような気がします。が、まだまだ未熟なのか、彼女の場合、その計算の途中式がよく見えます。
 今、ボケようとしている。何かしようとしている。オチに至る前から匂わせてしまうためにオチが弱くなるきらいがありますが、推している身としてはその姿がなんだか健気に見えて、途中式に部分点をあげたくなってしまいます。
 相変らずの全力振りですが、全力を出すことが求められているから発揮しているように見受けられるシーンも思い浮かびますし、力が強いという個性を強調し自ら「怪力女だ」と振って見せていることもある気がします。
 バラエティにおいて、自分につけられたキャラクターを活かして振舞うようになってきた、そのキャラクターは武器だと自覚した、もしくは自覚していたそれを自主的に発揮し始めたのではないでしょうか。
 それが心境の変化なのか、彼女なりの処世術なのか、彼女自身や近しい人しか知り得ぬことですが、彼女はまた少し、一アイドル、というより一タレントとして、一皮剥けた気がしています。

・光明か、あるいは蜃気楼

 そんな脱線から話を繋げてみます。

 「サクラミーツ文化祭」にて、誕生日を迎えた大沼さんをサプライズで祝った後、狩野さんが大沼さんに25歳の目標を訊ねた時、大沼さんは「50TAさんの様になりたい」と答えました。
 この言葉に私は、大沼晶保さんの今後の活動の光明が隠されているのではないかと思いました。

 「50TAさんのようになりたい」この言葉の、彼女なりの真意を掴みかねています。額面通り受け取れば、それは弄られ上手なタレントになるということだろうかとも思いますし、笑いを取れるし人柄も優しい彼に対するリスペクトのようにも思えます。
 「50TAさんのどの部分を取り上げて、彼のようになりたいと言っているのか」が判然としないままでは、推察すること自体無理がありますが、それでも無理くり推察すると、「50TAさんの様になりたい」は彼女の目指す芸能人像か、タレント像かな、と考え至りました。
 芸能界に生きる「タレント」の中には、「アイドル」もいます。数学的に表現するなら「アイドル⊂タレント」と言えます
 しかし「アイドル」という職業が担う業務は、「歌手」「ダンサー」「役者」「モデル」そして「タレント」、その他諸々の職業の業務を兼ねます。 
 ですから「タレントという業務⊂アイドルという職業」と言えると思います。
 これを踏まえて、大沼さんは「櫻坂46というアイドルのタレントとしての側面において、50TAさんの様になりたい」と言ったのだと私は解釈しました。
 狩野英孝さんはアイドルが目指すべき芸風なのか、ポジションなのか疑問符も浮かびますが、私としてはどうにも、彼女が狩野英孝さんと同じ方向性の人物のような気がしてなりませんので、納得感を覚える目標ではあります。

 彼女の50TAさん、狩野英孝さんへの敬意は崇拝に近いです。ですから、彼女が人を「狩野英孝さんみたい」と評する時、それは最大級の賛辞です。
 ですが、これを素直に賛辞と受け取ってくれる方はあまりいません。特に芸人さんはそうなのでしょう。「しくじり先生」に大沼さんが出演された際、登壇したコットン・西村さんに対して言ってみたところ、ツッコまれてしまいましたから。
 それは狩野英孝さんが、バラエティ番組で画面に映っている時のスタイルに起因するのでしょう。カッコをつけるけれど決まり切らない、どこか抜けているところがある、ツッコまれ弄られて笑いになる。
 独自の視点を持ちセンスを感じさせる、そんな笑いとは言い難いかもしれません。芸人さんが憧れるタイプの芸人さんではないのかもしれません。
 そんな狩野さんは、最近イケメンチャラ男として台頭してきたすがちゃん最高No.1さんに対して、昔の自分を見ているようだと語るほど、自身をとうに客観視しています。自分のできることを心得て、周囲に求められていることを理解して立ち回っています。
 弄られキャラとしての確かな技術とプライドを持ち、弄られるような人間と心得ているから不遜にもならない。
 弄られているようで、一見敬意を集めていないような彼はその実、その能力と人間性が、同業者に評価されています。かつては一発屋かと思いきや、今や売れっ子芸人です。
 「50TAさんのようになりたい」とは、こういう活躍ができる人間になりたい、こういう精神性の人間になりたいということでしょうか。

 イベントにおいて狩野さんは、「サクラミーツ」のスタッフは「ロンドンハーツ」と同じと明かしてくれました。だから自分みたいになりたいなんて言うと、いつか自分のようにドッキリで落とし穴に落とされるぞ、と大沼さんに警告しました。
 それに対して、大沼さんは前向きでした。
 彼女が大掛かりなドッキリにかかる姿、ファンとしても是非見てみたいものです。そしてそんな機会があるなら、彼女の姿を見てくれる人はぐっと増えそうな気がします。
 彼女の人柄の良さは、ファンはよく知っています。しかしそれは彼女を見続けていたから知ることのできた一面です。ならば形は何であれ、見てもらう機会が増えることが、彼女の人柄に触れてもらうことに、ファン増加につながるのではないか、とも思うのです。

 彼女は、人を笑わせたいと言っています。バラエティらしいバラエティに前向きで、仕掛けられること、ツッコまれること、弄られることに前向きです。
 心から前向きなのかは分かりません。心から、なら何も言うことはありませんが、葛藤はまだまだあるのかもしれません。それでも彼女がその道を選択するなら、応援したいとも思います。
 とはいえ、彼女は櫻坂46です。その一員として、そんなイメージがつくことが許されるのでしょうか。
 運営は許すでしょうか。沼の住人は許すでしょうか。その他のメンバーのファンは許すでしょうか。怒ることはないにしても、少し眉を顰める人は、少しくらいはいるかもしれません。
 仮にそうだとしても、私はこの道が、大沼さんのアイドルとして、タレントとしての活路の一つかもしれないと思うのです。

 大沼さんが、ワンちゃんを飼うに至るまでの経緯をラジオで話した際のエピソードが思い出されます。
 彼女はメンバーやスタッフにワンちゃんを飼いたいと漏らし、彼女のことを思ってこそ、周囲は反対していたそうですが、大沼さん曰く「私は皆に相談をしていたわけではない、飼うと決めていた。」とのこと。
 結局彼女は、周囲全員を説得しきるより前に、彼女なりに周到な準備を整えた上でワンちゃんを飼い始めました。そして結局、今や立派な飼い主として周囲に認められました。
 大沼さんは、やると決めたら反対を押し切るくらい頑固で、そしてやり切って見せる人なのかもしれません。もし、本気で「50TAさんのようになりたい」と思っているなら、誰も彼女を止められないのかもしれません。

 俳優として華々しく活躍するアイドルもいます。笑いに聡く、明るいキャラクターで場を和ませる、コメント力に優れたバラエティ巧者もいます。
 そんな彼女たちとは少し違う、弄られて笑いを取るアイドル。
 技術を見せるのではなくツッコまれどころだけで盛り上げる。力の制御が聞かず、体を動かす企画ではダイナミックさが話題になる。ドッキリに引っ掛かりやすく、いいリアクションをする。
 それを役割と心得て、笑いのためにあえて自分を低く見せる。そんな仕事ぶりが評価される。
 あの人のようになりたいとあまり言われないけれど、いつの間にか、あの人のような人はあの人しかいないと思われる。
 もしそんな風に成れるなら、それもいいと思うのです。それもいい、どころか、だいぶいいかもしれません。
 そんな風に愛されて、では彼女のライブでの姿を見てみようと思われれば、グループにとっても大きな利益です。
 既に彼女は、少し風変わりなテレビ出演を果たしています。
 趣味が極まってテレビ出演に繋がったのではなく、特技を磨いて出演に繋がったわけでもなく、大沼さんは上田晋也さんが大好きなことで、それが並々ならないものだから、共演させたら面白そうだという流れからテレビ出演が増えるという、奇妙な道の拓き方をしています。
 きっと滅多にいない趣向の25歳の女性。そのパーソナリティも、彼女にとっての大きな武器なのでしょう。ならばそのパーソナリティを活かして、「50TAさんの様になりたい」という、アイドルとしては風変わりな目標を目指してみてもいいのではないでしょうか。
 もし本当に彼のようになれたら、50TAさんの楽曲に通ずる沼ソングを引っ提げて、単独でライブをするまでになるかもしれません。彼女がその道を行った果てを妄想すると、楽しみばかりが浮かびます。

 実際にはそんな道の歩き方、できるとしたら、しがらみが減るグループ卒業後かもしれません。とすると、私が大沼さんの25歳の目標に見たのは、25歳中の姿ではなく、ずっと先の、卒業後よりも更に先の未来の姿です。

 大沼さんだって、勿論いつかグループを卒業します。
 できるだけ長く在籍してほしい、というのがファンの本音ですが、それは置いておいて、実際どれくらいまでいてくれるかを想像すると、それはもうすぐかもとも、まだまだ先かもとも、どちらとも取れる気がしました。

 彼女も今やグループ内では年長組。年齢なんて根拠なようで根拠でないはずなのですが、それでも年齢を理由にもしかして、とは考えてしまいます。今後の人生を考える時期だと言ってもよい年頃です。
 全力で挑み続けて、しかしいつまでも届かない選抜メンバー入り。遠くから見ていると、いつ折れたって諦めたっておかしくないのでは、とも感じていました。
 望む結果がなかなか得られない、やりがいがない。とすると、次なる道へ進むために卒業がちらつくのではないかと。
 だから、彼女の卒業は近いのではと思ったりもしたのです。
 そんな中で、大沼さんにとって「サクラミーツ」は希望かも、と感じました。
 自分の努力が分かりやすく実る場所。これがあるからその他の活動のモチベーションを維持できる、「サクラミーツ」はそんな場所だ、と思っていたりしないでしょうか。
 「サクラミーツ」がある限り、彼女は卒業しないのではないか。なんて考え始めました。
 彼女の心中なんて測れないのですから、卒業の時期なんて分からないのですから、これは彼女の希望ではなく、正しくは一ファンにとっての希望、希望という名の都合のいい予想です。
 仮に彼女にとっても希望だとするなら、それも実は問題です。
 番組が一見順調でも、櫻坂側の事情で終わることがあるのでは、とも思います。4人のうち誰か一人でも卒業したら終わるのでは、あるいは番組枠は確保したまま、「サクラミーツ」が終わり、別のメンバーによる番組が始まるのでは、とも考えます。
 それらが杞憂だったしても、そもそもバラバラ大作戦という戦場では、いつまで生き延びられるか分かりません。意外とあっさり人気番組が終わる場所なのです。そんな時を迎えたら、卒業までのカウントダウンが一つ減ってしまうのではないかと。
 「サクラミーツ」に大沼さんの命運がかかってしまっているなら、それ自体が問題です。

 彼女の卒業はまだずっとずっと先かな、と考えたこともあります。
 個人的感覚としては、「卒業後はこういう活動をしていくんだろうな」と想像できる人ほど、そういう想像ができるくらいグループ在籍中に個人の活動が多い人ほど、比較的早く卒業していく印象です。
 その点、大沼さんは意外と長く在籍するのではないか、そして、卒業後は芸能界から距離を取るのではないか。そんな風に予想をしていました。
 そう予想してしまうくらい、客観的に見て、これという目立った実績が思いつかなかったからです。一ファンの私見でよいのなら、山ほど実績をあげられるのですが。
 しかしこの度「沼TA」という結果、狩野英孝さんと一つのプロジェクトを成功させるという結果を得ました。そして次に繋がる可能性を残しました。
 50TAさんの様に、という目標まで掲げて、彼に本気で近づくことができたなら、それ位芸能界での活躍が増えていくなら、「卒業後はこういう活動をしていくんだろうな」と想像できます。
 つまり喜ばしくも寂しいことに、卒業は近づきそうな気がします。
 同時に、卒業しても大丈夫だ、卒業後も芸能界で活動してくれる、それを引き続き応援し続けられる。そんな風に前向きに捉えることもできます。

 「50TAさんのようになりたい」その一言から私は、今までだいぶ不明瞭だった大沼さんのアイドルとしての、タレントとしての未来像が少し具体的に妄想できました。
 櫻坂46の一員としても、一人のタレントとしても更に飛躍し、グループを卒業しても活躍するカギが、そこにあるように感じました。
 とはいえ、そこは生き馬の目を抜く芸能界、なりたいと思ってなれるような、なったところで生き抜けるような、優しいところではないのでしょう。
 ここまでずっと話してきたことは、全てが都合のいい方向に傾くことを前提にした超楽観的見解です。99割妄言と断じられても言い返せません。光明のように見えたそれは、目指しても辿り着けない蜃気楼のようなものだったかもしれません。
 光明か蜃気楼か、答えが明らかになるのはもう少し先のことでしょう。
 今はとりあえず、そうあってほしい未来が来る方にベットしておこうと思います。

 お笑いのイベントを見て、随分余計なことを考えてしまいました。ただ楽しい、で十分ですのにね。大沼さんよかったね、で済ませていいでしょうにね。
 ただ、イベントを見て期待してしまったんです。彼女にはまだまだ先があると。自分が想像しているよりももっともっと先があると。その期待をポジティブな方向に裏切ってくれるのではないかと。
 いずれにせよ、結果が出るまで時間のかかる問題です。彼女自身の選択と努力の問題で、それを周囲がどう扱うかの問題で、こちらとしては座して待つ他ありません。
 まぁ、あると信じているがあるかわからぬ選抜入りをずっと待てるひとりの沼の住人としては、待つのは得意なことですけど。

 やりました、3編約3万字に収めましたよ。私も成長しましたね。
 きっと皆様読み疲れましたよね。ここまでお付き合いありがとうございます。
 さぞお疲れでしょう、どうぞごゆっくりお休みください。


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