遙かなる時空の中で7における真田幸村と何かもうどうしようもない感情(※ネタバレ注意)
このルートで受けた衝撃と余韻を一週間近く経った今もどこか消化しきれないので、何となく自分なりにまとめてみたいと思った。
当然ながらネタバレまみれなので、未プレイかつ自分でプレイしてみたいという気持ちが1ミリでもあるならば閲覧非推奨である。
結論として言えば、素晴らしかった。幸村個人のルートにもかかわらず、大団円より大団円感の強いルートだった。
まあもともと大団円自体が遙か3・5・6の系譜と言うか、全部のルートをクリアしたおまけのカーテンコール的な意味合いの強いエンディングなので、ある意味当然とも言える。
あの「細かいことは気にすんな!とりあえず後顧の憂いなくハッピーエンドだ!」的な投げっぱなしジャーマンスープレックスも、あれはあれで良いものなのだけど。
でえじょぶだ!細かい矛盾とかは龍神様がいい感じに帳尻合わせるから!って感じの。
これまでの通例だと続編が作られるとしたら大団円エンド後の続きだろうから、もしルビーパーティに作るつもりがあるならこれを下地にどういうシナリオを作るつもりなのかには非常に興味がある。
おっと、話が逸れてしまった。
話を戻して、何故こんなに真田幸村ルートに消化しきれない想いを抱えてしまったのかを語ろう。
プレイ済みの方は多分お察しだと思うが、真田幸村ルートの結末が衝撃的なものであったから…なのだと、思う…多分…。
何で自信なさげなのか?そりゃあ、あのルートに心とか頭の中とかがスパゲッティの如くぐっちゃぐちゃにかき混ぜられて、そこから立ち直り切れてないからだ。仕事にもちょっとだけ支障が出ているレベルなのでこれはヤバい。それ故に自分なりに整理してすっきりしたいがためにこの文章を書いている訳だ。
取り留めのない感じになることが今の段階で目に見えているおり、目が滑りまくること請け合いな文章になってしまいそうだが、あくまでこれは自分向けがメイン目的の文章なのである。仕方がないのである。
などと、誰に向けてんのかわからない言い訳をしつつ、本題へと移行していきたいと思う。
さて、まずは簡単に遙かなる時空の中で7についてまとめようと思う。
シリーズ共通の流れとして、主人公は現代で育った普通の女子高生。それがある日突然「龍神の神子」として選ばれて力を与えられ、昔の日本によく似た異世界に召喚される。そこで怨霊を倒したりしつつ龍脈を乱す輩をどうにかして、異世界に平和を取り戻す…と言うのが、いつもの流れ。
まあ今回の神子こと天野七緒は龍神の神子にして織田信長の娘と言うかなりぶっ飛んだ設定なのだが、それはまあいい。何だかんだ異世界に戻るまでは本当に(ゴーストバスターの娘だけど)普通の女子高生だったし。
いやよくない。何もよくないぞ!天地青竜ルートを踏破した人間ならば、彼女がどれほどとんでもない存在なのかをよく存じ上げている筈。
実は龍神そのものとか、予想できるかいそんなん!卑怯だぞスタッフ―!!(褒めてる)
いや、発売前は本当に読めなかった。シナリオ読み進めてるうちに色んな伏線から「ん?もしかしてこの子…」て察してきたけども!
織田信長の娘って言うのがいい感じに隠れ蓑になっていて、予想すらしてなかったよマジで…確定した瞬間「やりやがったなスタッフ!!」って思ったぞ…。
次は八葉についてとか。
八葉と言うのは白龍の神子の護りとなる存在で、これまた龍神の部下である四神から力を与えられた存在である。全員が男性で構成されていて、恋愛ゲームとしての攻略対象は彼ら8人+αで構成されている。ゲームの顔とも言えるメインヒーローのポジションは天地の青竜が担当している。問題の幸村は天の青竜である。
相方である地の青竜こと天野五月もまた重要なシナリオを任されているのだけど、多分幸村ルートの気合の入り方から考えるに、彼と対になるように設計されたシナリオだろうと思われる。七緒の正体や運命に関するアプローチが全然違うのがその証拠だ。一方は決意を尊重し、一方は手段を問わず引き留めようとした。結末もそれに沿ったものとなっている。
私はシナリオ自体は幸村ルートの大作感が大好きなのだけど、思考的には五月の考え方の方がしっくり来るんだよな。何が何でも引き留めたい。彼女を否定することに繋がったとしても。多分私が彼ら二人に似た立場だったら、絶対に幸村のような行動はできないと思った。いや、五月のように振り切れた行動すんのも無理なんだけど。ここら辺が考え方とか価値観の違いだよなあ。
幸村が義を貫く男だからこそ七緒の決断を尊いものとし、阻んだりはしない。七緒の正体が明かされるシーンで彼も止めはするのだけど、あれは本気で止めたいって言うより意思を確かめたいって言うのが大きかったんだろうな。止める言葉そのものは本気ではあったろうけど。
彼は他人の決断を否定しない。彼女が人間であり続けたいならそっちを尊重するし、人の身を捨てても使命を全うしたいならばそれを助ける。バッドエンドの内容を鑑みるに、強制はできたとしても絶対にしない奴なのだ。
ある意味ずるい男だな、こん畜生め!
同時にそれは彼の生き方が不器用な証拠でもあって、最後の最後に本人から語られている通り、彼の人生は失い続ける一生だった。我々の世界の史実だと真田幸村はあの時点で既に妻子がいる筈なのだけど、彼は異世界の日本の真田幸村であり、乙女ゲームの攻略対象なのでそんな存在は無かったことになっている。そう考えると、遙か7の彼は我々の知っている史実よりも孤独で人との縁が薄い生涯だ。長い間人質として家族と引き離され、得られた友も失うか離れていき、兄とも敵対する立場となり、ゲーム内に言及こそないが史実を鑑みれば恐らく父親も死去している。
それら全てを、彼が要らないと感じたことはないと思う。できることならいつまでも一緒に居たかった筈だ。でもその願いは叶わなかった。将来の約束をした主人公だって(再開を約束していたとはいえ)彼の傍に居続けることはできなかった。よく曲がったり捻くれたり、折れたりしなかったもんだよ。ましてやこの後、友との約束のため最後にもう一度奮起して立ち上がったんだから、本当にとんでもない男だ。
そんな彼にとって最大の救いと言うか報いと言うか…彼が手にしたのが死後に辿り着いた神域で過ごす、七緒との永遠の幸福だと言うのが、もう…言葉にできない。かといって手放しに良かったと思い切ることもできない。幸村は史実通りの最後を遂げ、七緒も人としての縁も生き方も捨てざるを得なかった。私たちの思う幸せとは遠いところに、彼らは到達してしまったのだから。
普段の私であれば「こんな結末納得できねえよ!?」と不満を募らせてしまったに違いない。なのに、真田幸村ルートのエンディングに到達した直後、私は清々しいと感じてしまったのだ。同時にこれでよかったんだとまで。
唐突な自分語りだが、私はハッピーエンドが好きであると同時に、所謂メリーバッドエンドのような悲劇的な結末も好きだ。そして今回の幸村ルートのエンディングの状況は、箇条書きにすればどう見てもメリーバッドエンドの類であるし、実際ネットなどで見た定義的にも間違っていないと思う。
なのに、私はあの時あの結末をハッピーエンドだと認識したのだ。演出の秀逸さ、真田幸村と言う男の生涯を(乙女ゲームの風味にしつつも)全力で見せつけるテキストの力、もの悲しさと熱さと淡いときめき、そして最後のルートとして選択したことによる感慨、あのシーンに至るまでに受けた感情の全てが合わさり全力でぶん殴られた結果、なんかもう勢いで「これで良かったんだよ」と思わされた。
その結果として余韻と衝撃が抜けきらず、延々と情緒の安定が微妙に欠けた状態になった訳だが。ふとした時に最後の幸村と七緒の寄り添うシーンが思い起こされて、あのハッピーエンドのBGMが頭を占拠するのは、ちょっと自分でもどうかと思うくらいである。この状態から抜け出さないと私は次のゲームに進めないのだ。まだ積みゲー沢山残ってるのに!!
いや、なんかもう、話としての完成度が高すぎて…これが遙かシリーズとしても割と異端なタイプの結末だということも思い出せなかった。
私の知る限り、遙かシリーズの正規のエンディングで攻略対象が死ぬ結末と言うのは滅多にない。私がプレイしたのは3以降から(5風花記を除く)だけど、記憶にある範囲では4の忍人エンドくらいのもんである。離別するだけのものも含んだらもう少しあったかもだが。
時には歴史上の登場人物も攻略対象になるこのシリーズ、歴史の流れの中で悲劇的な結末を迎える人物も、大体は主人公と生きて幸せになるエンディングが用意されている。
例えば3の地の青竜、九郎こと源義経だ。彼は我々の知る史実において最終的に兄の頼朝に討たれる訳だが、ゲーム内においては色々あって頼朝の手から逃れて主人公の暮らす現代に行ったり、チンギス=ハン説に則って大陸に渡って遊牧民になったりする。
まあ冷静に考えるとこれまた中々とんでもない結末な訳だが、これを踏まえると真田幸村も似たような結末にすることは不可能ではなかったし、シリーズファンの想像したエンディングも似たようなものだった筈だと思う。でも蓋を開けてみればこれだよ!
真田幸村の格好良さを語る上で、大阪冬の陣での華々しい最期は絶対に欠かせないものだ。真田丸で何となく知っているだけの私ですらそう思う。でも、それにしたって「最後の瞬間に何かヤバい怨霊を出してうやむやにしてハッピーエンド」なんてことも不可能ではなかっただろうにとも思うのだ。それでも製作スタッフはそれを選択せず、真田幸村の死までを描いた。私はそこに主人公に対する五月と負けず劣らずのエゴを感じざるを得ない。いや、不満がある訳じゃなくいんだよ、むしろ称賛したいし痺れるし憧れる。真田幸村の信念とか決意とかを、例え乙女ゲームであっても曲げたくなかったのかも。多分下手な救済で救ったとしても、捻じ曲げてしまうことでどこか消化不良になってしまうのは避けられないだろうし。
色んな感想でも目にしたけどコーエーの真田幸村に対する愛の重さを感じざるを得なかった。私は同メーカーの戦国無双シリーズは未プレイどころかほとんど知らないのだけど、大河ドラマ真田丸で主役を張った際に彼が主人公の無双を作ったと言うのは知っている。大河に乗っかったという商業的な思惑はあるにせよ、真田幸村と言う武将への思い入れが深くなければ作れなかったんじゃないだろうか。
そんな真田幸村大好きなスタッフが大勢居るであろう会社の作った、真田幸村がメインの片割れを務める乙女ゲームである。気合が入らぬ筈が無かったのである。重い、愛が重い、重すぎる…。
かと言って、幸村に力を割き過ぎて他ルートは薄味になったかと言えば、それは全く違うのだ。少なくとも私は満足しているし、遙かなる時空の中でと言うシリーズに求められているものは満たしていると感じた。それを差っ引いても尚、他のルートの印象を消し飛ばすくらい真田幸村ルートが、なんかこう…凄かっただけで。
あんまり語ると「お前文章書くうちに興が乗って誇張表現しまくってるだろ」とか言われそうだけど、少なくとも私はあのラストに全ての感情をしばらく持ってかれるぐらい引きずる羽目になったのだ。今でもたまにぶり返してどうしようもない感じになるのだ。
しかし好みの結末か?と言われると、それも素直に頷けない。私は美しい物語ならば悲劇的な結末でも大好きだが、ゲームならば幸福な結末も用意されていてほしいと思う面倒くさい奴だから。いや、彼らはこれから神域で誰にも邪魔されずに、永遠に愛し合いながら幸せに暮らすんだろうけども。
まあなんというか、理想の結末とも違ったんだよな。冷静に考えると、真田幸村の最高に格好良いところを描きつつ乙女ゲームにするには、あれ以上のやり方はなかなか無いのだけど。
でも、そう思い至ったのだって、他の人の感想や解説をみて冷静になったからであって、直後は言葉にできない感情で打ちのめされていたのだ。ハッピーエンドだけどお互いもう人としての生を続けることはできない。それは本当に素敵な結末なのだろうか?お互い満足していたとしても、幸せになれたのだとしても。
私は前述したとおり、考え的には五月寄りだ。主人公の七緒には、普通の女の子として普通の幸せを手にして欲しかった。そのための道筋は、他のルートでも見られるように存在している。どうして幸村相手ではそれはできなかったのか、許されなかったのか。
その答えは、実は幸村ルートの中にあって、彼女が人として生きることを望む選択をすると見られる。普通の女の子になってしまった彼女では、義を貫き最期の決戦に臨む彼を止められないし、付いて行くこともできない。束の間しか寄り添えないのだ。
彼はきっと、何もかもやり切った後でないと、自分自身の幸福を求めることができない。でも全ての使命を果たした後、彼はもう生きてはいない。普通の女の子として生きる限り例え想い合っていたとしても置いて行かれて、死による永遠の断絶しか待っていないのだ。だってあいつ、死地だとわかっていて普通の女の子になった想い人連れていくような奴じゃないもん!
そう考えるともう、ああいう結末にならざるを得ないのかもしれない。何とも理不尽なことだけど、彼の信念を曲げず尊重する選択を取り、尚且つ最終的に結ばれる結末なんて欲張りセット用意するんだったら、当然の帰結と思えてくる。
課せられた使命を果たし、人間の世界から逸脱することでしがらみから解放された彼らは、辿り着いた神域で永遠を手に入れた。すごく美しくて、そして切なくて、強制的に惹きつけられるほどの魅力を感じる結末だけれど、私の理解できない領域だった。
最初こそ納得したし、回想でも何度も見るくらい好きなシーンだけど、それでもだ。
普通の男女として、周りに祝福されて、普通の家族を作る…そんな結末も、私は見てみたかった。それをするには二人に色んなことを妥協させないといけないだろうことは確実なので、それはそれで納得しがたいものになりそうだけれど。
そんな気持ちを抱えていても、結局消化しきれないまでも受け入れることができたのは、ラスト間際の五月のセリフのお陰だったのかもしれない。
自分には理解できないけれど、お前の思う幸せを幸村と掴め、と言う趣旨の。これで、納得できないままでも祝福して良いんだって思えた気がする。私に理解できない形だとしても、彼らは確かに幸せを掴んだのだと。
そう思うともう、これでよかったんだな、とあの瞬間納得できてしまった訳だ。余韻が残り過ぎた余り、後でこうして気持ちがあらぶりまくってしまっているのだが。
でも、たかがゲームのシナリオと斜に構えず、真剣に考えたり何度もリフレインしてしまったりするシナリオと出会えるのは、とても幸せなことだと思うのだ。例えそのたびに感情を搔き乱せされて悩まされ続けたとしても。こうして見る人に優しくない長文を延々と書き続けることになっても。
結局何が言いたいのかと言うと、死後の世界で幸せにって言う下手すりゃ地雷エンディングなのに、見た瞬間さらっと受け入れられたぐらい真田幸村ルートが素晴らしかったということだ。だが、この冷静になって考えると尖っているにも程があるシナリオをお出しされたと言う事実に気持ちが付いて行かず、でもあの結末は美しくも感動的だったという気持ちが衝突し、どうしても感情の平衡が取りきれずに無様を晒すことになった訳だ。
この一週間近く、真田幸村ルートと言う希望を一切残さぬ美しすぎるハッピーエンドに思考が占拠され続け、感情が事あるごとに揺れ続ける状況で、本当に幸福と苦悶のアンビバレンスな日々だった。それら全てを吐き出すにはTwitterでは足りず、こうしてnoteを開設して自分勝手な書き殴り文章を書き続けた。
これで完全に収まるかどうかは書いている時点ではまだわからないけれど、どうしてもこの消化しきれず溢れそうな想いを文章として叩きつけたいと思ったのだから、もうどうしようもなかったというか。とりあえず今のところは満足です。
後でこっぱずかしくなって消すか加筆修正する未来も今からちょっとだけ予想できるけれど。
なんかぐちぐち言いまくった気がするけど、総合的には遙かなる時空の中で7と言うゲームと、真田幸村ルートと出会わせてくれたことに対し、開発したルビーパーティに感謝の言葉しかないということは、最後に言い残しておきたいです。