【短編】SM大作戦その2
コンコンコン
控えめにノックすると静かにドアが開いた
仄暗い部屋の中は、優しいラベンダーの香りが漂っている
目が暗さに慣れる前に
男がそっとアイマスクを付けてくれたおかげで
私はひと息に非日常の世界へと入り込むことが出来た
シルクのワンピースをスルリと脱がされると
スリップ一枚になってしまった羞恥心で肌がじっとりと汗ばむのがわかる
視覚を失ったせいか
シュルシュルという衣擦れのようなかすかな音が妙に耳に響く
輪にした絹の紐を
首からかけられた
男は紐の両サイドを持つと
ところどころに玉を作りながら、私の身体を編み始めた
麻縄のようにキリキリと縛るのではなく
着物の着付けでもするみたいに…
こんなことで
心臓が早鐘のようにトクトクと音を立てて息があがってしまう
(どうなってしまうんだろう…)
期待と不安のないまぜになった心の置き所を探していると
男の手が止まった
1分経過…
うーむ…声にならない呻き声
2分経過…
おかしいなぁ…声に出して呟く
3分け…たまらず、私が抑えた声で問いかけた
「どうしたの?」
答える代わりに、なんだか焦る空気が伝わってきた
私は頬の筋肉を上下させて←まあ、顔をくしゃくしゃにして フンガフンガとやる感じ
アイマスクをずらして様子を伺う
腕組みしてスマホを見つめる男…
どうやら見ていた「縛りの動画」がフリーズしたらしい
「あのー…」と呼びかけてみるも
「ちょっと黙っててくれないか?今、集中してるから」と
ややキレ気味にイライラとスマホを操作している
相手のプライドを傷つけることなく、スムースに話を進めるにはどうすべきか?
「すみませんが、この紐の先をこちらに通してもらえませんか?ちょっと痛くて」
男はお願いされると弱いタイプらしく
こちらのいう通りに紐を操ってくれた
「そうそう、それをこちらへ…あら上手!最後にここを少しだけ締めて
ほうら、出来た!出来たじゃない!すごい!」
見事な亀甲縛りの完成!
男は達成感と感動で高揚した顔をしている
もちろん、私は拍手なんかできるわけもなく
でも、自分の指導力の高さに満足して、ちょっと感涙…
じゃ、本番行きますか?
ってことで
男からの攻めを改めて受け入れた
「あゝ… ひいいっ…いやぁ」
どんな時も、冷静沈着な判断と行動で
ピンチをチャンスに変えていきたい