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第3回「そいつ」10月❸

週一で、同じ映画を見る。ただそれだけ。
観る映画は「遊星からの物体X」、つまり「THE THING」です。

ルール

  1. 毎週1回「遊星からの物体X」をみる

  2. 毎週1回みて、気づいたことを書く

  3. 木曜または金曜の通勤時間で見る

  4. ネタバレとかは気にせず書く


通勤中。ほぼほぼ電車内での視聴となる。デバイスはiPhone se(3G)。
イヤホンはAppleの有線イヤホン。
画面は小さく、音質についても良好とは言えない。
製作陣が期待する映画館という環境からも程遠い。この点については留意。
あくまで「通勤中のiPhoneでの体験」という狭苦しい体験ということは気をつけないといけないかもしれない。

第三回目 10/19通勤電車

習慣化までの道のり

(前回の記録からわたし自身の変化)

10/13
仕事後、妻と待ち合わせの飲食店で晩御飯を。店が混んでおり、偶然にも親しい方がいたので相席に。
演劇の歴史やサブカルに詳しい方だったので、とても興味深い話を聞けた。突然、イチジクの話になったので、思わず物体Xの話をしてしまった。すると同席の方に、
「いや、おもろいけど、いま見るとズッコケるようなとこないですか?」と言われた。ジョンカペのギャグセンスはお墨付きだけが、ズッコケるというのは多分SFXとかをおっしゃってる。真っ当な感想の一つと思うと同時に、ストーリーやスタッフ陣のことを細かに覚えてる人ですら物体Xのことを、「今見るとズッコケ」と冷静というか客観的に見られることに驚いた。ソレに比べて毎週観ようとしてる自分って変な気がした。見るけど。

10/14
先週に引き続きバンド演奏。面白いイベントだった、書けないのが申し訳ない。
ライブに向かう途中、前日に相席した方と道端でバッタリ。相手はとっさに「遊星から来ましたー!」とノリで言ってくださった。遊星からの物体Xを毎週見ようとしてる奴と認識されたことを確認。やる気になる。

10/15
朝から映画館に行き「不安は魂を食いつくす」を観る。ファスビンダーは本当にすごい。クラクラして映画館から出た。勉強の成果もあり、簡単なドイツ語が聞き取れる。
テーマの一つである「不安」の取り扱いがホラー映画とは全く異なる(当たり前)。共通点を無理してあげると、不安とは見えない何かが到来することの予期でもあり、そしてそれは見て触れられるモノほど恐ろしいと感じること。
ただしジョンカペに比べ、ファスビンダーの容赦なさは、その場では何も起こらないからこそ募る不安を静かに撮り続ける。もうわかったよ、と思ってもあと数秒は撮る。本当に苦しくて、美しくて、素晴らしい。
ジョンカペの世界に生きる人間は基本的にいつも何も答えがわからず不安になるが、不安はすぐに混乱に変わる。ウィンドウス、ブレア、みんな恐怖と不安に混乱をきたす。

10/16
仕事の昼休憩などに前回の記録をつくる。
一方で、作品の素晴らしさを語る手がかりはまたもや散らばった感がある。作品に浸ってる時のあの感覚と、文字に起こした時の隔たり。考え込んでるうちに、またもや作品への想いが醜い形に生まれ変わった気がする。
頭でっかちなオッさんの記録を脱却したいように思う。

10/18
ニュースで知って、YouTubeの「ウツル」をみる。すごい。アイデアも面白いし、カメラや音の効果的な使い方がしっかりしている。配信が始まって、各人がスマホを観るシーンなんか上手いと思った。小学6年生なのに〜、とかではなくしっかりと映像での伝え方を意識してて、リスペクトしてしまう。これはTikTokとかYouTubeとかの配信ではなく、しっかりホラー映画だと思った。

10/19
今週の鑑賞

モノクロ映画としのソイツ

再生する際に思いついたのだが、iPhoneをカラーフィルターで白黒画面にして、モノクロ映画として「遊星からの物体X」を観てみることにした。
前回の記録にあるとおり、3日目の朝が印象に薄いのは、陽が出てるシーンが少ないからじゃないか?という確認もしたいからだ。
配色という情報を捨てることで、明暗のダイナミズムがわかりやすくなると思ったからだ。iPhoneならではの鑑賞。
案の定、冒頭のスタッフロールは何一つ変わらない…。

雪原の白、ノルウェー基地の黒

先日の整理した時間軸で行くと、1日目朝の雪原の白から始まる。色が無いことに意外と違和感を感じないのだが、強いていうならアメリカ基地のガソリン缶と、特徴的なマクレディの瞳に色が無いのが違和感。しかしすぐに慣れてしまう。
正直、見始めて10分程度は、モノクロでも面白いという感想しかない。
むしろ一気に気持ちを掴まれるのは、ノルウェー基地の暗さだ。
いままで色付きの画面だった場合は、雪原の真っ白さ→アメリカ基地の屋内のうっすらとした明るさ→ノルウェー基地の暗さという流れで、そこまでギャップを感じなかった。ノルウェー基地は暗いけど、青白さもあった気がする。
でもモノクロにすると全く話が違う。はっきりと、暗い。
マクレディと先生は闇に飲み込まれてく。
暗い、とかを超えて、黒い。真っ黒だ。
こんなに不安になるものなのか。全身が黒に覆われるシーンはここで初めてだと思う。何が来るかわからないまま、画面内の黒が占める割合が圧倒的に増える。マクレディと先生は顔すら見えなくなる。

血は黒い、当たり前のように物体Xは黒い

クリーチャーの解剖シーンで驚きなのが、全くグロくない。
当たり前ですけど、グロさって赤くないとピンと来ないんですね。電車内で観る人間としては、隣の学生さんに見えてもたぶん何かわからないし、堂々と観てられる。
これはすごい発見だな。血は黒い。グロさの代わりに黒さに覆われたクリーチャー。
白と黒の対比がハッキリしてきて、如何に「黒さに覆われたら負け」というゲームなのか分かる。

火は赤くない、むしろ恐ろしいほど白い

ノルウェー基地、クリーチャーの血から黒の恐怖を味わったあと、真っ暗闇に残された犬たちをみて「早く逃げてー!!!」と心の中で叫ぶ。犬たちの叫び声に呼ばれ、無防備にも隊員たちは暗闇に入り込む。
画面のほとんどが黒に覆われていく中で、チャイルズが火炎放射器を担いでやってくる。
撃ち放たれる炎、画面に火が広がり、全部を覆う。あまりの炎の白さに驚かされる。わ、と声が出た。炎、こんなに白いのか。
画面が白に覆われることは、物体Xが入り込む余地がないが、同時に全てが真っ白の向こうに消え去ってしまうようで怖い。
物体Xを退治するには怖いくらいの白が必要なのだ。

黒く塗り潰させないために

作品が進むと、画面を構成する黒の割合が増す。2日目の朝、3日目の朝が白くて安心する。あれほど印象のなかった3日目の朝が、安心の白の時間だと思えるし、なんなら休憩時間のよう。もちろんらすぐに真っ黒になるけど。
よく観ると1日目朝の真っ白さに比べてみると、2日目3日目はすこし暗い。これは撮影日の問題なのだろか。
そもそも今更ながらこんな雪原の晴れの日って、撮るの大変そう。

遡ると2日目の夜、ベニングスを焼くシーンがかなり白い(明るい)。マクレディが如何に火の強さを知ってるか、というのがわかる。
最終決戦も、真っ黒になった基地に白を加えるように爆弾を投げていく。
そして発電室。僕がこの映画で好きなシーンベスト3にいれる、階段を降りるシーンの美しさは健在。
発電室シーンでは、黒に吸い込まれた瞬間に、物体Xに襲われる。大爆発を起こしたあと、画面は真っ黒のなか白い火が揺らぐ。真っ白い火が基地を包むが、いつかこの白さが終わることは分かっている。
すこしでも黒に塗り潰されるまでの時間稼ぎのように。

死んだ魚のような目、光は反射しない

ディーンカンディがインタビューで、感染した人間の瞳に光が入らないことを意識した、というコメントをしてたことがあった。たしかにブレアなんかは早い段階から、瞳が真っ黒だ。変身後のベニングスも完全に真っ黒。
直前になるとパーマーも真っ黒だ。
画面を白黒にしたために、余計わかりやすい。そういう意味でもモノクロ鑑賞はオススメ。

極地探検はシベリアンハスキーだけではない

駅から職場までは徒歩なので、映画の感想を考えながら歩いていたら、前から真っ黒い犬が現れてびっくりした。散歩中の黒犬。
かっこいい…けど犬種なに、、?
綺麗な女には振り返る勇気がないけど、綺麗な犬には振り返るワタシ。そう思うと映画の犬は、白と黒の混ざったシベリアンハスキーだった。モノクロでみてみると、黒と白を混ぜたこの犬は作品のメッセージから見ても印象的だなと思う。
ググってみると、極地探検は必ずしもシベリアンハスキーではないみたいだ。何故かしら、シベリアンハスキーのイメージがついていた。(スヌーピーのアニメでもシベリアンハスキーが雪原を走っていた)
白色にイミテーションしようとしても、黒は隠しきれない。シベリアンハスキーがちょうどいい。

モノクロ鑑賞という方法論

モノクロ鑑賞めちゃくちゃオススメです。自分の好きな映画なら、一度やってみてほしいです。もちろん大事なものが抜け落ちてしまうけど、僕のようなアマチュアでも、明暗のダイナミズムがよく分かる。
こういう極端な条件での鑑賞も、耐えうる名作はほんとうに面白い。

来週に向けて

  • 0.5倍速を試してみる

  • 音だけ鑑賞、または音無し鑑賞したらどうか。

  • 光の赤、光の青、昼の白を考える

  • 顔、そし視線

  • マッピング

  • カメラの位置

  • BGMと効果音のそれぞれなるタイミング

  • それぞれのヤられ方

    など、今回のように見方がかわる観点をとりいれたい。
    無理だったら普通に楽しむ。好きな映画のいいところは、普通に楽しめること。

さて、来週もみます。

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