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記憶の記録11

学校へ行かないと決めてからの半年は、自宅でゲームをしたり、パソコンでネットサーフィンをしたり、近所の母方の祖母宅に遊びに行ったりしていた。

そんな中、FINAL FANTASY Ⅸの設定資料集を買った。
FF9はヨーロッパを思わせる街並みやビジュアルが好きで、獣人系のキャラクター達も好きだった。隅々まで見て「すげぇ……!」と感嘆したものである。

デフォルメの強い6頭身のキャラクターを見ていると、自分でも描けるかも……と思った。
コピー用紙を設定資料集に重ね、シャーペンで浮かんだ線をなぞった。
これが、今に至る”お絵かき”のきっかけとなった。

トレースから始め、次に模写に挑戦した。FF9のキャラクター達をひと通り描けるようになってから、FF8の頭身の高いリアル寄りの絵柄に挑戦した。
同じように、アルティマニア(攻略本)にコピー用紙を乗せトレースから始めた。模写へと移行し、練習を重ねた。お手本の設定画に近づいていくのが楽しかった。顔のパーツ同士の位置や比率を、自分なりに研究したりした。
この時の野村氏の絵柄は、今の私の絵柄のベースになった。
数か月後、祖父にねだって小さなペンタブ(板タブ)を買ってもらった。入力可能な範囲はポスカサイズだったが、とても嬉しかった。

食事や風呂、寝床など生命維持に必要なものは与えられていたのでそれに甘えつつ、毎日好きに過ごした。
時折、罪悪感にも苛まれたし、なんでこんな社会になっているのだろうとか、どうして同級生が怖いのだろうとか、小難しいことをひたすら独りで考えたりもしたが、学校へ行こうとは思えなかった。
勉強も好きではなかったので、まったくしなかった。

そうこうしているうちに冬になった。
母親がどこからか仕入れた情報で、少し離れた中学校に情緒学級と名の付いた特殊なクラスがあることを知った。

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