「そっかジュニア素潜り部」〜海藻の森を潜り、イルカと泳ぎ、自分の中の海を知る〜

「そっかジュニア素潜り部」
〜海藻の森を潜り、イルカと泳ぎ、自分の中の海を知る〜

トビウオクラブの課外活動の一つである「ジュニア素潜り部」。小学5年生から、中学3年生までを対象に、年間通して、地元の逗子葉山の海をベースとして、時には遠足で他の地にも足を伸ばして素潜りを楽しんでいます。

ここで指導を担当する私はみんなからは「ムッチー」と呼ばれています。一息で海に潜るフリーダイビングという競技の選手を続けており、現状の公式自己ベストは水深-62mです。フリーダイバーとしては珍しくはない深度なのですが、一般的にはびっくりされる深さかもしれません。
2020年のキプロス共和国の大会にて

私自身、長年競技生活の中で世界各国・日本各地の海で素潜りしてきました。ここで体験した素晴らしい世界を、多くの人とシェアし、美しく楽しく、恵みに満ち、同時に恐ろしさもはらむ海について、身体そのものを通して知ってもらいたいと思っています。

私は通常は葉山でフリーダイビングスクールを主催し、大人向けの素潜りレッスンで毎日のように素潜りをしています。私が沢山の人と潜っていて気づいたことは・・海に入ると、年齢も、性別も、人種も全く関係なく、全ての垣根が取り払われるということです。大人顔負けに潜ってしまう子達、子供のように無邪気に水の世界に夢中になってしまう大人たち。素潜りをしていると誰もが「素」になっていきます。

●ジュニア素潜り部の活動
ジュニア素潜り部では、素潜りの基礎を学んだ上で春夏秋冬、真冬でも元気に地元の海で素潜りをしています。葉山の海は四季折々の変化に富んでいるため年間通して入っていると、飽きることがありません。

少し、みんなで見てきた風景をご紹介しますね。

潜る前のブリーフィングは海を見ながら
まだひんやり冷たい5月の海、海藻がいっぱいです。


夏休みには、早起きして夜明けの素潜り!海からの朝日に感動です。
お魚もいっぱい。
すぐ近くに秘境のような場所も!
降るようなソラスズメダイの群れ
真冬の海の透明度20mくらいになることもあるのです。
夏にはプールを借り切って練習もしました!
真鶴遠足も楽しかった。現地ではフリーダイバーたちも一緒に潜ってくれました。

また、素潜り部に入る目的の一つに「イルカと泳ぎたいから!」と言う子も多くいます。そう、毎年夏休みには、東京の伊豆七島の一つである「御蔵島」に合宿にみんなで行きます。御蔵島は、野生のイルカが100頭以上棲む夢のような島です。けれど水族館のイルカとは全く違い、お金さえ払えば簡単に手軽に見られる、と言うものではありません。揺れる小舟で黒潮の流れる外洋の海に出て、野生のイルカたちと泳ぐ、と言う行為は特別なもの。海のことを学び、素潜りができるようになって初めて、体験できる世界です。

素潜り部の子供たちの落ち着いた様子や潜り上手な姿は、毎年、島の船長さんにも褒められています!(いつもは滅多に褒めない毒舌の船長さんなのですが)

●ジュニア素潜り部が始まったきっかけ
実はこのジュニア素潜り部、私の発案ではありません。5年前、素潜り好きの小中学生の女の子たち数人が自発的に「ムッチー、真剣に素潜りを教えて欲しいんです。」と、直談判してきてくれたことがきっかけです。初年度は女子4名だけの、「リトルマーメイド」と名付けた、放課後を中心としたひっそりとした活動でした。その後、リトルマーメイドの先輩たちに憧れる子供たちも増え、素潜り好きな子達が集まる「素潜り部」につながりました。初代リトルマーメイドの一人Kちゃんは、フリーダイビングの資格も取り、今では素潜り部のお手伝いをしてくれています。

初代リトルマーメイドたち。

動画リンク:https://youtu.be/3K4geKs-jus

また、いつの間にか、子供たちに影響されてか自分たちも習いたい!と声をあげる保護者が増えて、「大人の素潜り部」もできました。時には大人と子供、合同で潜る会も開催しています。

こうして素潜り好きな人が増え、知識もスキルも身につけて、安全に楽しむ仲間が地元に増えていくことは私の願いでもあり、何より嬉しいことです!

●海藻の森と、変わりゆく海
さて、葉山の海の名物といえばなんといっても海藻。ワカメやヒジキなど、食卓に欠かせない海藻は、まさにこれからが旬。冬の間海に潜っていると、一番寒い時期に芽吹く海藻の驚くべき成長を目の当たりにします。お正月ごろにはまだ小指の先程小さかったワカメの新芽がぐんぐん育ち、春になる頃には自分の背丈以上に成長するのです。

昨年のジュニア素潜り部では、地元の漁師さんたちのワカメ漁やヒジキ漁の見学をさせてもらったり、またその海藻について研究者さんから学びシェフに料理してもらうというイベントも開催しています。
【詳細記事】
https://oceana.ne.jp/diving/snorkeling-skin-diving/122122)
https://news.yahoo.co.jp/articles/236f7f0d89599fb54ccc9b02ed807a9010985519
https://www.townnews.co.jp/0503/2023/05/12/677748.html
また、定期的に藻場保全活動でウニ潰しをするなど、実際の保全活動にも素潜りで参加しました。海藻にとりわけ深く関わってきた一年です。

近年進む「磯焼け」で海藻はここ数年で凄まじい勢いで減っています。また、綺麗な海に潜るたびに、ぷかぷか浮かぶプラごみにも必ず遭遇します。海にどっぷり浸かって海で遊ぶ子供たちにとって、これは目に見えて体で感じる世界の出来事。全く他人事ではありません。


では自分たちで何ができるのか、と言うことを実際にアクションにした子供たちもいます。

<詳しくはこちらをご覧ください>
https://note.com/sokka_zushi/n/n259da4be79b8

素潜りを通じて、自然や地球全体のことにまで考え馳せる子供達。自然の中での体験の力は大きいですね。

日本は四方を海に囲まれた海洋国。そして北は流氷から南は珊瑚礁まで、バラエティに富んだ豊かな海に恵まれています。古来から海女という、素潜りを生業とする文化があります。魚や海藻を美味しく食べる知恵も培ってきました。「素潜り」はアウトドアレジャーやスポーツというだけでなく、本体もっと生活に根ざしたものであり、また本能的て原始的な行動の一つといえます。

安全面、仲間との協力などを知識として学ぶことはとても大切ですが、この本能、野生も大切にしてほしい。自分自身が海の一部であり、自然の一部であることを、体の隅々で感じてくれると良いなと思っています。

この美しい海がずっと続くように、そしてここで過ごすかけがえのない時間が次世代に引き継がれていくことを私は願っています。

今期は、葉山の子どもたちとの素潜り部もスタートします。
これから子どもたちと素潜りを通してどんなことをしていくか、今からワクワクしています!

文章:武藤 由紀
リトルブルー
https://www.littleblue.biz/pages/1834517/page_201804132211

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