【配達員絵師の日記】11月 第49週

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庄助の6歳の誕生日。

庄助が熱烈に欲しがっていたのは『マインクラフト・ダンジョンズ』に出てくるレッドストーンゴーレムのレゴ。安請け合いしてしまったが、amazonで調べてギョッとした。27,757円だった。たぶんもう生産してなくてプレミア価格になっているのだと思われる。

当然そんな金はわたしたちにはない。そこでなんとか庄助の興味を他に移そうとしたが「レッドストーンゴーレムが欲しい!」の一点張り。庄助は二ヶ月間言い続けた。

どうしたものかと考えていると、一週間ほど前に妻がスマホの画面を見せてきた。ストーンゴーレムのレゴのパッケージが映っていた。妻が楽天市場でみつけたもので、値段は4千円弱で手頃である。「これじゃん」と喜んだのも束の間、「よくみて」と妻が言った。目を凝らしてみるとパッケージのロゴが微妙に違う。フォントこそ『マインクラフト』だが、そこには『マイワールド』と書かれていた。明らかなパチ物である。

しかしわたしたちに猶予はあまり残っていなかった。早く注文をしないと庄助の誕生日までに届かないかもしれない。わたしは妻にゴーサインを出した。

わたしはわたしで別のプレゼントを用意した。『トランスフォーマー・ONE』のメガトロンである。今月発売したばかりのやつだ。最悪レッドストーンゴーレムの出来が庄助を満足させるものではなかった場合の保険でもある。

一昨日、『マイワールド』が届いた。海外便で、箱はベコベコに凹んでいた。送り主の欄は空欄で、品名にはBuildingblocksとだけ書かれていた。箱の横に書かれた注意書きは中国語だった。

中身が無事かどうか調べるために箱を開けることにした。どちらにしろこの箱を誕生日プレゼントとしてそのまま使うことはできない。

一応中身は無事だった。ブロックを小分けにした袋が全部で五つあった。ただ気になったのは、大きく1と書かれた袋が三つあって、残りに二つには2と書かれていた。正規品ではそんなことはありえない。袋が五つあった場合は、1、2、3、4、5と分かりやすく書かれているはずなのだ。

嫌な予感がした。説明書がついてはいるが、この通りに作ったとして果たしてちゃんとレッドストーンゴーレムはできるのだろうか。

庄助の誕生日当日。午前中はわたしとわたしの両親と妻と庄助の五人で新都心のコクーンの中にあるレゴショップに行った。「レッドストーンゴーレムはあるかな!」と庄助が言うので、「それはもうパパとママが庄助の誕生日プレゼントとして買ってお家にあるよ」と伝えた。これで後戻りはできなくなった。庄助は『マインクラフト』のウォーデンのレゴセットをじいじとばあばに買ってもらった。上尾のマクドナルドで昼飯を食べてから帰ることになった。わたしが一足先に自転車で家に帰り、庄助とじいじとばあばはバスで家まで来てもらうことになった。妻は予約しておいたケーキを取りに行くために別で動いた。

自宅のリビングを簡単に片付け、『マイワールド』のレッドストーンゴーレムとメガトロンをテーブルの上に置いた。『マイワールド』は中身だけいい感じの紙袋に移し替えておいた。

庄助とじいじとばあばが家に着いた。早速レゴ制作の開始である。わたしは『マイワールド』、じいじには『マインクラフト』の方を作ってもらうことになった。

疑念と願いを込めながら、信用できない説明書通りに制作した。結果からいうとレッドストーンゴーレムはちゃんと完成した。パーツが足りないということもなく、レゴとの互換性も確認した。庄助もその出来に満足したようで、それからずっとレッドストーンゴーレムで遊んでいた。途中妻が帰ってきて、じいじの方のレゴ制作に参加した。

最後に誕生ケーキにろうそくの火を灯し、ハピバースデーをみんなで歌って、6歳になった庄助を祝った。庄助はじいじとばあばが揃って誕生日を迎えるのははじめてで、とても嬉しそうだった。

つまらんことがきっかけで久しぶりに妻と喧嘩してしまった。しかも庄助の前で。

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配達をしながら昨晩の喧嘩の反省をする。

妻が転職してからわたしたちはすれ違い気味。妻は家に帰ってくるのが19時ぐらいになり、わたしはわたしで夜は絵の仕事をしたいから、妻が帰ってきて風呂から出たら庄助の面倒をバトンタッチして部屋に引っ込んでしまう。

前は三人そろって晩飯を食べ、その時にいろいろ話したりしていた。ほとんどが無駄話だが、それがけっこう大事だったりする。でないと必要な会話しかしなくなってしまう。

しかしだからといってどうすることもできない。絵の方の仕事は手を動かし続けない限り収入には結びつかない。年収に関係なく厚生年金に強制的に加入させられるようなふざけた話も出ている。妻が今の仕事に慣れてもうちょっと早く帰って来てくれることを期待するしか今はできない。


庄助の歯の仕上げ磨きをしているときに、下の前歯の歯茎から白い突起が飛び出ているのをみつけた。触ってみると固かった。痛みはないらしい。その突起の真上の歯は、すでに生え変わった歯なので、新しい歯とは考えにくい。ちょっと気になるのですぐにかかりつけの歯科医院にネットで予約した。

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夜10時。作業中に庄助は部屋に飛び込んでくるなり「明日花火をやりたい!」と言い出した。夏にやろうと思って買っておいてそのままだったのを思い出した。「明日はむつかしいけど、青い日(土曜日)か赤い日(日曜日)の夜にやろうか」ということで手を打った。季節外れの花火になりそうだけど、まあいいか。

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Connorさんから再びコミッションの依頼。彼はわたしの絵をものすごく気に入ってくれている。ありがたい限り。でもコミッションは低調。こういうリピーターの方は大事にしていかなければ。

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今日は休みをとって部屋で作業。妻も休みをとって午前中は庄助の保育園の保育参加、午後は就学前検診。

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庄助と妻と三人で歯医者へ。庄助の下の歯茎、永久歯の下あたりから飛び出た小さな突起は、抜歯した乳歯の欠片が残っていたものらしい。それほどめずらしいことではないとのことだが、わたしははじめて知った。庄助の歯茎に麻酔を塗布した後、ピンセットで抜いてもらった。大事じゃなくてよかった。


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