金魚姫 (stand .fm10月12日配信)
ゆらりくるりひるがえし
ふわりくらりたゆたっている
しらないいろ、あかり、おと。
いつもはとうめいの天井からみえるせかいがすべてだから。
だけどこんやはとくべつなよる。
このよるもそこに映えるきらめきたちも
このよるを越えるとなにかがあわみたいにきえちゃうことも
このよるを越えるとなにもしらないわたしもきえちゃうことも
ぜんぶしらない。
ぜんぶはじめて。
だけどなんにもしらないからこそ
なんの恐れもためらいもなくここまでやってこれたの。
あやうさやもろさもしらないままに
そのここちよさだけに身をゆだねてここまでやってきたの。
ゆらゆらと。ふわふわと。
いまならまだいまのきみのままなんだよ。
あの子がそうよぶ声がきこえたきがした。
その声に いっしゅん ふみとどまる。
このよるを越えたあともいまのわたしのように
澄んだこころでたゆたうことができるのだろうか。
だけどきっとだいじょうぶ。
わたしはなにもしらないから。
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