1ヶ月強の勉強で医師国家試験に合格した話 ~サバイバルKokkaShiken~
注: 本記事は117回医師国家試験の経験を元に書きました。
執筆動機
今現在、自分が別の学問領域の勉強をしているので、改めて過去の資格試験の勉強を顧みて比較することで自分の学習効率を高めようと思いました。
はじめに
掴みが肝心なので、少し大袈裟なタイトルにしています。1ヶ月半が正しいです。ごめんなさい。加えて、語弊がないよう断っておきますが、医学知識0の人が医師国家試験に1ヶ月半で合格することは不可能だと思います(そんなに簡単な試験ではないです)。しかし、医学部1年から進級し続けて、医学部6年の冬まで、試験や臨床実習、卒業試験を乗り越えたあなたなら1ヶ月半で合格する可能性は十分にあります。1ヶ月半の試験勉強と言うものの、人によってスタートラインにズレはあると思うので、キャリブレーションとして私の1月上旬に受けた最後の模試の成績を添付します。
絶望的に低い成績ですが、この一ヶ月前にも模試があり、その時は確か全国偏差値17(じゅうなな !?)程だったため、その時からの成長を見て合格することを確信していました。
(前回試験からこの試験の間は後述の "暗記について" の暗記作業をしていたので正しくは二ヶ月間で~というタイトルにすべきですが許してください。)
この模試の結果を受け、「7187人の下位1割のラインは6468位だから、あと一ヶ月で392人抜けば合格圏でしょ?余裕だZE〜☆」と内心思っていましたが、周りの受験生が「この時期に偏差値50なければ相当キツい」と話しており、誰にも成績を開示することはありませんでした。
(私が直前まで全く国試勉強に手を付けられなかった理由は長くなるので、いつか別でポエムを書こうと思います。)
私のスタートライン
大学によって、カリキュラムや進級難易度に差があると思うので、ここに明記します。
学部1~4 年: 殆どの試験を過去問二年分丸暗記で解いていた。ほぼ全科目一夜漬け。ただし、基礎医学の教授は厳しかったので、高校生物、生理学、生化学の理解はそれなりにあった。理解はあるが殆ど覚えてはいない。
CBT: 最低ラインで合格した。はい。
学部5~6年: とても受け身の姿勢で実習に臨んでいた。知識のインプットは殆どなかった。選択実習も楽なマイナー科ばかり選んで趣味の時間に割り当てていた。人と話すのが好きなので、患者さんへの問診や回診は積極的に行っており、所見をとるのが上手くなったが、国試対策的なインプットはなかった。
卒業試験: 日程を間違えて一週間前から対策した。国試の過去5〜10年分から出ると言われたので、各科目の問題と答えを暗記した。何も理解はしていないが、問題文のはじめの2行目くらい読むと正解選択肢の位置がわかるように最適化されていた。正直、この勉強で得られたものはないと思うが、「国試がどんな問題を出すのか」ということを理解する上では重要な一週間だった。ギリギリ6割で最下位合格した。はい。
映像講義: メジャー科、産小老、救中公麻はmedu4の講義を聞いていた。予習も復習もせず、練習問題も一問も解かずただ聞き流して板書だけが手元に残った。マイナー科は買ったものの一切受講せず、友人のノートを写した。
国試2ヶ月前〜 一ヶ月前: 成績優秀な受験生に、どうやって勉強しているのかヒアリングして、"暗記について" で説明する暗記作業を行なった。基本的にアニメを見ながら暗記作業をしてた…😢 そもそも、12月上旬までバイトをしていたので、本腰を入れて試験勉強はできなかった。
字面だけ見ると、「なんだ結構勉強してるじゃ〜ん!」と思うかもしれませんが、最下位です。数字が完成度の低さを証明しています。
医師国家試験に逆転合格するために必要な勉強
試験の対策において "インプットとアウトプットは大事" と言われますが、医師国家試験においてはこのバランスが特に重要になります。単純に丸暗記した対象Aが、過去問では他の事象と絡み合って出現し、その問題を解いて理解して初めてそのAを理解することができます。言い換えるとAにコンテキストを持たせることができます。一方で、Aを丸暗記する前に問題を解いて理解したところで、問題は覚えることができても、何かコンテキストを持たせる対象が存在しません。医師国家試験の勉強においては、成書を読んだところで、対象にコンテキストを持たせるのが難しいので、インプット勉強とアウトプット勉強のバランスへの意識が重要になるのです。どちらか一方のみでは必ず破綻します。
更に、過去問についてですが、過去問には二種類あります。一般と臨床?、不適切問題とそれ以外?_____違います。過去5年分とそれ以外です。これについては "究極MAP理論" で詳しく説明しますが、あなたも肌感的に両者に違いがあることは理解していると思います。
以上の前提を踏まえ、4つの勉強項目を列挙します。
最低限の知識のインプット
medu4 のメジャー科、産婦人科、小児科のテキストの穴を最低限暗記してください。スコアリングに必要な票も暗記してください(詳しくは 暗記について で説明します)。「穴埋めの暗記なんて勉強の本質からかけ離れてる。幼稚な勉強だ」という意見も重々承知ですが、短時間で医師国家試験に合格するためにはこの "作業" は必須です。また、medu4の巻末の 覚えるべき基準値 も暗記してください。1年以上コツコツ勉強している人であれば、「大体これくらい」という感覚に頼っても問題ありませんが、1,2ヶ月の勉強ではその感覚は身に付きません。毎日暗唱して必ず表を全て覚えてください。過去の良問の徹底理解
あるテキストの暗記の目処がたったら、その科の良問をといてください。例えば、血液内科のテキストの暗記に目処がたったら血液内科の問題を解いてください。テストゼミ①基礎篇 が丁度この役割を担ってくれると思います。テキスト全ての暗記が一通り終わったら、テストゼミ②標準篇、
テストゼミ③融合篇 と続けて演習をしてください。過去五年分をやり切る
過去問を沢山解いても何の意味もありませんが、過去五年分については特別な意味を持ちます。2. の詳細と合わせて "究極MAP理論" で詳しく説明します。問われそうなテーマの徹底研究
コレステロール代謝とインスリンの関係や尿細管障害、仮面尿崩症など直近の国試で難しかったテーマは、友人とホワイトボードで機序を整理したり、文献調査(やガイドラインの確認)をしていました。5年以内に2回以上出題されているテーマで、機序がよく分からないものは徹底的に調べた方がいいと思います。引き際は難しいですが、周囲の友人の顔色を見て適切な引き際を判断して調査を打ち切ってください。
必要なアイテム・環境
iPad 第4世代 以降
勉強基地と友人
正直、医師国家試験は友人ゲーです。一緒に勉強する友人さえいれば、あとの他何もなくても合格するくらい友人ゲーだと思います。できれば、ホワイトボードがあるオフラインの勉強部屋も欲しいです。大学内の空き部屋を使うもいいですし、図書館や友人の部屋でもいいので探してください。
勉強の貯蓄がある人は、medu4の無料問題演習で十分ですが、この記事を読んでいるような勉強をしていない人にはQBオンラインをオススメします。問題の画像への書き込みが充実しているので、”画像一発問題” の理解の助けになります。また、コラムや関連事項が整理されているのも良いです。一方で、バカ丁寧に全てinputしようとすると時間がありません。medu4の空欄になっていない箇所は暗記する必要はないので、一読して理解するだけに留めましょう。あなたには時間がありません。
PC: medu4を見る用
medu4については、medu4のあたらしいシリーズ全てと、テストゼミシリーズをおすすめします。予習も復習も最悪しなくていいので、2ヶ月前までにはあたらしいシリーズのテキストの穴が全て埋まっている状態が望ましいです。
暗記について
メジャー科の暗記
medu4のメジャー科 + 産小 の穴埋めを完全に覚えることが目標です。これがなかなかできません。しかし、以下の3 Step で簡単に覚えることができるので試してみてください。
0. (授業を板書してテキストの穴を全て赤色で記入する)
1. イルカの暗記シートにメジャー科 + 産小のテキストをインポートする。(確か課金が発生するはず)
2.Anki に診療科毎にディレクトリを設けて、サブタイトル毎にタイトルを付ける。下図の例で言うと、「肝胆膵」ディレクトリを作ってその中に「2.9 原発性胆汁性胆管炎〈PBC〉」のカードを作る。
3. 毎日、メジャー復習用と産小老復習用の中の診療科ディレクトリをタッチして、medu4テキストのそのタイトルのページの上から下まで赤シートの上から答えられるかチェックする。その出来具合によって、"もう一度"、"難しい"、"普通"、"簡単" の中から自分の状態に近いものをタッチする。この選択によって、次にこのカードが出るまでの日数が決まる。覚えられないページは覚えられるまで短いスパンで何度も演習することになる。
私も、ダラダラ(とアニメを見ながら)とはいえ、12月からこの暗記作業をしていました。早急にこの暗記作業には着手した方がよい。恐らく、この暗記作業を回しながら問題演習をすることになるので、Ankiノルマの達成と問題演習のバランスは臨機応変に自分で調節してください。
時間に余裕のある人は、空欄以外にも自分で黄緑線(イルカの暗記シートの機能)を引いて暗記の量を増やしてください。(例: 空欄になっていないサイトカインとその働きを全て覚えるなど)
マイナー科(救急も含む)と公衆衛生の暗記
マイナー科・公衆衛生については同じ暗記方法では時間がかかりすぎて計画が破綻します。
マイナー科の場合は、テキストの最初から最後まで穴埋めができるか解いてみて、間違った穴にチェックを入れて、二週間後にもう一度同じことを行い、間違った穴を覚えられているかチェックする程度で大丈夫です。暗記のゴールは、マニアックなテーマでもどこに何が書かれているのか大体わかる程度で大丈夫です。マイナー科は問題に遭遇する度、何度もテキストに戻って眺めていると、国試において覚えるべきところがわかるはずです。そこを完璧に覚えましょう。(例:水疱症の病態まとめ、尋常性乾癬、神経性食思不振症、神経根とその支配、ショック概論 などなど…)
公衆衛生の場合は、マイナー科と殆ど同じやり方でいいのですが、マイナー科よりも暗記の完成度を上げてください。マイナー科は、大事なページを「問われれば答えられる」くらいの完成度でいいのですが、公衆衛生の大事なページは「丸ごと完璧に暗記」してください。また、medu4のテキスト構成では疎かになりがちですが、根拠法も必ず覚えて、根拠法毎にも整理して覚えてください。
基準値の暗記
「基準値なんて覚えなくてもいいでしょ!」その通りです。eGFRや生活習慣病などの例外的な暗記事項を除いて、本来は覚えなくても大丈夫です。というのも、大多数は学部4年頃からCBTを見据えてコツコツ勉強しているので、基準値の感覚がわかります。遊戯王で例えるなら、星4で攻撃力2000はかなり高い、星7で攻撃力2400は渋いというのが、暗記せずとも分かるようなものです。しかし、年末まで一切勉強もしなかった人が、残り数ヶ月でその感覚を得ることは不可能です。medu4の巻末の基準値をイルカの暗記シートなどを利用して完璧に覚えましょう。問題演習をする内にその効果が分かると思います。一日一回通しでチェックして、最終的に朝起きて暗唱できるようにしましょう。
問題演習について
回数別演習に入る前に
medu4の暗記が終わっていなくても、ある診療科のテキストをankiで一巡したら、その診療科の テストゼミ①基礎篇 を解いて講義を受講してください。これは、「できるだけ早く国試問題に慣れる」という意図もありますが、先にも述べたように、問題として出題されて初めて暗記した空欄が自分の知識になります。必ず、どっちか一辺倒にならないようにAnkiと問題演習の両輪を回してください。基礎編は全24講ありますが、1日3講くらいまでならなんとかやり切れるので、いち早く基礎編を自分のものにしてください。基礎編が終わる頃に、恐らく Anki によってある程度知識が身についていると思うので、テストゼミ②標準篇、テストゼミ③融合篇 と続けて演習してください(予想編はやらなくて大丈夫です)。標準編・融合編は1日2~3講のペースで行っていました。早く国家試験の問題を回数別に解きたい気持ちも分かりますが、解き方も分からないのに闇雲に演習しても何の意味もありません。しっかりとこの3つのテストゼミを履修して、解き方・復習の仕方を身に付けてから回数別に国試演習をしてください。急がば回れです。
テストゼミの復習については、穂積先生が色々と説明してくれていますが、私はこの時点で国試3週間前でした。先生の復習法を実施する時間が無かったので、私の復習方法を共有します。
- ゼミの板書はゼミ中に完全に暗記する。
- 問題の解き方もその場で暗記する。
- 5日後にそれを覚えているかチェックし、覚えていない箇所はGoodNotesで栞を貼ってスキマ時間に何度も確認する。
これだけでも試験直前の覚醒でテストゼミの内容を覚えることができたのでオススメです。
回数別演習 究極MAP理論
国試受験生であれば 究極MAP という講座を耳にしたことがあると思います。(主に)過去5年の過去問から暗記事項を抽出した12時間程度の講義で、本番の試験の75%程度をカバーできるという化け物講義で、これだけやって1ヶ月で合格した方もいます(多分ある程度の学力貯金があったと思うんだけど…)。ここで言いたいことは、この講座の宣伝ではなく、「医師国家試験の問題の多くは過去数年のテーマから出題される」ということです。このことから、普通の過去問と直近5年の過去問の価値は明らかに違います。直近5年分の問題は必ず解いてください。そして、理解のできない問題は友人と考えてください。例えば、大昔の鎖肛の分類の問題は分からなくても放置してよいと思いますが、近年出題されてる糖質コルチコイドと尿量の関係などは理解できるまで徹底的に考えてください。
蛇足ですが、究極MAP自体は必須ではないと思います。私は周りが取り組んでいたので直前に3周程度しましたが、必要性は感じませんでした。(ただ、友人との共通の話題を持てるという点では良かったのかも?)
スケジュール感
最初の34日間
一通りテキストを暗記するのにかかる日数 28日間
新しい内科外科: 全547タイトル: 28日間
産婦・小児科: 全206タイトル: 11日間(新しい内科外科の最後の4科目くらいの時に並行して覚える)テストゼミを終えるのにかかる日数 12日間 + 6日
基礎編: 全24回: 8~12日間
標準編: 全10回: 4~5日間
融合編: 全6回: 2~3日間余った時間でマイナー科のテキストを適当に覚える
上の二つを並行して行います。テキストの暗記とテストゼミ基礎編を並行して行います。一通りテキストの暗記を終えた後の6日間は標準編と融合編に取り組みました。
最後の14日間
116回から112回までの演習
午前中にABCを解いて、午後にABCの解説を読む
午前中にDEFを解いて、午後にDEFの解説を読む
模試の復習
冬MECを受けたので、間違った問題の復習と宮田先生の解説講義は聞いてました。
テキスト暗記の続き
究極MAP
これはやる意味があったのか分からないのですが、どうしても疲れて手が動かなくなった時でも勉強をやめたくなかったので聴講していました。3周しました。
上から優先度が高くなります。5時間睡眠をキープして残りの19時間の殆どを勉強に当てられるように努力していました。狂ってダメになりそうな時は究極MAPを聞いて和んでいました。
最後に (試験結果)
試験2ヶ月前全国偏差値17、1ヶ月前に偏差値32だったので等差数列的に50弱は取れるだろ〜 と信じてはいたのですが、当日は本当に苦しかったです。正直2日目に行く意味があるのだろうか…とも考えてしまいました。
117回は、ボーダー220点・全体平均点246.3点ということなので、文字通り可もなく不可もなくの合格でした!!
冬模試の偏差値がとても低いとメンタルがやられてしまいますが、意外と平均点くらいまでは伸びるものです!
直前の模試の結果に一喜一憂せず、綿密に計画を遂行して国試に臨んでください!それでは!ノシ