見出し画像

0126「SAJ2019に行ってきました」

昨日の日記のアンサーnoteです。SAJ2019に参加してきたので参加前の意気込みを振り返りつつ感想を。

基調講演:「夢があるから強くなる」

川淵さんが登壇されたことはさっそくニュースサイトでも取り上げられている。確かに講演開始直後は分析という自分の専門から外れたテーマのカンファレンスで何を話したら良いのか分からないという感じだった川淵さんのエンジンがかかり始めたのが高野連の話題からだった。

川淵さんは割と何でもかんでも感情的に物事を判断しているように見えがちなのだが、実はそんなに軸はぶれていないような気がしていて、それが今日の講演で個人的にもっとも肝な部分だと思った「世の中で何かを動かすときに必要なのは前例」ということなのかなと。
新しい取り組みを阻害するような制度やしがらみや古い考え方によって前例ができないと世の中が動いていかないということを人一倍理解されていて、世の中を変えるために、前例を作るために、声を大きくして尽力されてきた方なんだろうなと。
加えてさすがだなと思ったのは、感情を表明しつつ、数字も使う、という姿勢が見えること。今日の話の中にはよく数字が出てきて、それも何かを確認しながらとかではなくスラスラ出てくる。スポーツ庁が出している各種数字や国内サッカースタジアムのキャパシティと現在の平均動員数、バスケットの経済規模やカーリングの競技人口まで頭に入っていて話に合わせてそれらを上手く組み合わせてお話される。これはおそらく一対一なんかで話しているとすぐに言いくるめられてしまうような上手さを感じた。

ファンエンゲージメントを最大化するデジタル時代のオフライン戦略

HP社の、版を作ることなくデジタルデータからそのまま印刷する技術を軸に、どのようなマーケティング戦略が取れるか、という話。これまで何かを印刷するにはそれなりのロットが必要という常識があったわけだが、この技術の登場で数百万人の来場者一人ひとりに完全にユニークなデザインの配布物を配る、といった施策が可能になる。これによりこれまでマスにしかアプローチできなかった印刷物を個人に特化した形で届けられるので個人に対するPRや製品の価値をより大きくできる。
これまでにない価値をたくさん提供できそうな技術なのだが、この世の中は印刷物にはロットが必要、という常識に最適化されて久しいので、この世の中で長く生きてしまった私はこの技術を本当の意味で応用するのに脳みその書き換えが必要そうだ。

スポナビのデータが解き明かす「新ファンセグメント」と「未来のスポーツメディア」

本格的なデータの収集も分析もこれから、という印象を受けた。パブリックにしづらいデータだから敢えて出てこなかったのかもしれないが、ファンをセグメントに分けて分析するならLTVへの言及はしてもらいたかった。サンフレッチェのファンは広島県に主に分布している、とか「そりゃそうだ!」という内容に終始されていたのが少し残念。ただこれからデータが集まれば新たな視点が出てくるのだろうと思う。

Bリーグと新日本プロレスはどうやってSNSでファンを獲得したのか

ただただ新日本プロレス選手のプロデュース力が印象的だった。後藤選手と飯伏選手のTwitter上での絡みからの試合実現の流れが秀逸というか、プロレス全然知らなくても面白いというのが凄いなと。

新日本プロレスは選手が勝手にやっていると言うけど本当だとしたら選手のプロモーション力高すぎだし選手間の連携も凄いしそれを試合の実現という形で拾えている会社も凄い。他のスポーツでこれを再現するには選手のプロモーション力の育成から始めないといけない感じ。プロレスはその競技性、興業性から選手が自然とこういうスキルを身に付けるのだろうか。
Bリーグは積極的にプロモーションしているものの野球・サッカーの壁に苦しみ、新日本プロレスほどの独自性も出せていないという印象。大企業の部活動を起源とするチームが多いこともSNS等の積極的な活用に出遅れた要因かもしれない。ただまだまだ圧倒的に若い団体なのでこれからだろう。

日本サッカーにおけるアナリストの「これから」を考える

代表コーチの和田さんが2008年に欧州に視察に行ったそうで、そこで「これからのサッカー指導者、アナリストに必要な3つの要素は『(サッカーの)専門知識』、『コンピュータリテラシー』『語学力』」という言葉を受けたという。これは10年経った今も健在な事実だと思う。語学力が入っているのは当時欧州では外国籍選手枠の撤廃等が進んでいて、指導者と選手のコミュニケーションに様々な言語が使えることが重要と考えられていたためという。そういう意味では外国籍選手枠が1枠広がったJリーグでもこれからより重要になってくるだろう。
あとは日本と欧州のアナリティクスに対する考え方の違いも面白かった。日本でのサッカーアナリティクスは「試合に勝つ」という目的から始まっているが、欧州での目的は「選手の価値を正しく評価する」こと。つまり適正な年俸や移籍金の設定、怪我のリスクの定量化など、より経営者観点で求められていると。ビジネスはある意味でスポーツよりも弱肉強食の世界なので日本でもこの視点を重視しないとたちまち食われてしまうだろう。

10年後のスポーツアナリストについて語ろう

このテーマではやはりAIの話題は避けられない印象。個人的には厳密な意味でアナリストという分野はAIに取って代わられると思っている。そうなるとその分、AIを何にどう使うか、どのように導入するかというところに人のリソースの重要性の比重が置かれるようになる。これは経営やチームビルディングの局面で判断をしていくマネージャー的な人と、AIの使い方や導入の仕方を理解している技術者的な人なのかなと。なのでいかに優秀な経営者や技術者をスポーツチームに巻き込めるかが今後重要だと思う。

データ分析でファンを増やす秘訣とは?

マリノスの、特にWeb上のデータをどのようにマーケティングに活用して行くかという話。Web上のIDをどのように設計するかは普段Web屋さんやっている私の周りでもなかなか専門的というかちゃんと考えないと割とぐちゃぐちゃになるというか各部門とかサービスが各々IDを作りたがる。実際マリノスもファンクラブとオンラインストアのIDが違ったりしたらしい。ユーザーからしたらありえないけどまぁありがちな事象で、ただそれを統合したというのが素晴らしい。一度別々にできてしまったものは統合がすごく難しいことはよく分かる。それを実現したのがまず素晴らしい。その後JリーグもID基盤を整えたことで様々なデータが個人と結びつくことになった。つまり、これまでどの試合に何人の観客が集まったということは分かっていたがそこから踏み込んで、ある試合の観客のうち初めて観戦した人は何%で2回目の人が何%で3回目が...ということが分かるようになった。そうするとリピーターを増やすためにどの層にアプローチすれば良いかが分かってくる。実際3回観戦した人はその後も定着することが見えてきた。そこでJリーグは提供するアプリで連続して観戦に訪れた人にペアチケットを贈るロイヤリティプログラムを始めた。これも初めて観戦する人の8~9割が誰かに誘われてくると分かっていたからだ。

Innovation in Action:今のあなたの行動がつくる日本スポーツ界の未来

様々な経歴から現在スポーツ事業に従事されている方々のディスカッション。皆さんスポーツ事業に関わることになった経緯は様々で、強い意思を持って入って行った人もいればたまたま誘われた人もいる。ただ現在スポーツにがっつり従事されていることでとても充実していそうに見えた。(雑)

※ 無限コーヒーと各種ジュース、各種お茶、そしてレッドブル。ドリンクコーナーはかなり充実していた。(この写真はたまたまストックがほとんどない図になってしまった)

久々に朝から夕方まで集中してセッションを聞いていたので疲れてしまったが、どれも普段は自分と関係のない世界の話なのでとても面白かった。開催にあたって尽力されたJSAAの皆さま始め関係者の皆さま、お時間いただき直接ご挨拶させていただいた皆さま、ありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!