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生活習慣病とお酒
単純明快に言って、お酒の飲み過ぎはからだに毒です。
だから肝臓が一生懸命になって解毒しようと働いています。
アメリカ・カリフォルニア大学のブレスロー教授が、寿命と関係する健康習慣を発見しました。
たばこを吸わない
定期的に運動する
1日7~8時間の睡眠をとる
適正な体重の維持
朝食を摂る
間食をしない
これらの項目は今から50年くらい前に発表されました。生活習慣を改善するために注意するべき点が、みごとに列挙されています。
更にこの6つの項目の他にもうひとつ、7.自分に合った酒量を守るか、もしくは飲まないという事柄が盛り込まれています。(*1)
現在推奨される睡眠時間については若干異なっているようです。更に日本のがん対策基本法にはがんを防ぐための新12か条の中で、第3条に『お酒はほどほどに』というお酒にまつわる記述もあります。
「酒は百薬の長」と言われますが、これはあくまで、「お酒を飲む頻度」「お酒の種類」「摂取する量」などによって、からだに良いのか?悪いのか?が分かれるでしょう。
国立がん研究センターの「多目的コホート研究」いう、長期的かつ大規模調査が基礎となった疫学研究があります。適量を超えた飲み過ぎにより、主な生活習慣病『がん』に対するリスクが高くなる結果が報告されました。お酒(エチルアルコール)の飲み過ぎがなぜからだに悪いのか?生活習慣病との関わりについて、簡単におさらいしてみましょう。
先ず通常「アルコール」というと「メチルアルコール(メタノール)」と「エチルアルコール(エタノール)」に大別されます。
前者は燃料用、後者は飲料用です。勿論今回取り上げるアルコールは後者です。エタノールは日本名で「酒精」と言われ、注射の前に皮膚を消毒する綿に染み込ませて使うこともあります。
みなさんもご承知の通り、肝臓でエタノール ⇒ アセトアルデヒド ⇒ 酢酸に分解されます。有害作用のあるアセトアルデヒドが無害な酢酸に変わっていきます。そして最終的に水と二酸化炭素になりますが、その役目は各細胞にあるミトコンドリアが担っています。ミトコンドリアは活性酸素のお話しでも登場した、細胞内の小器官のひとつでしたね。
過度の飲酒で摂取されたエタノールを分解するために、肝臓に負担を掛けているのです。
上記のコホート研究では、たまにしか飲まない人を1とした場合、1日あたり日本酒で1~2合飲む人は、がん全体で1.6倍のリスクを背負うことになります。部位別では特に食道がん4.6倍,大腸がん2.1倍,乳がん1.8倍です。「口腔」「咽頭」「喉頭」の『がん』のリスクも高くなるとされています。
では「糖尿病」はどうでしょうか?飲酒が週1日未満の人のリスクを1とした場合、1合以上(週に150g超)になると1.75倍になります。(*2)
以上のことから、飲酒自体がからだに良くないのでは?と思ってしまいますね。
だけど、私の頭の中には、ある昭和の長命なおじいさんのことがしっかりと記憶しているのです。1995年まで世界最高齢だった『泉重千代さん』という方がいらっしゃいました。このおじいさん、満120歳になって「大還暦」を迎えた方です。記者のインタビューに対して「毎日の晩酌が楽しみ。」というコメントを残しています。きっとこのおじいちゃんの飲むお酒の種類や量が、からだに合っていたのかも知れませんね。
【酒は百薬の長】
これはあくまで、「お酒を飲む頻度」「お酒の種類」「摂取する量」などによって、健康に良いのか?悪いのか?が分かれるのでしょう。
【参考】 (*1)健検公式テキスト第一刷 健康とは何か
(*2)Waki.K.et al.Diabet Med.;2005.22:323-331