見出し画像

エイジングにより得られる真の美しさ。

発達心理学というと、生まれてから成人になるまでの発達の心理学のことだと思われることが多いようですが、現在は『人間は生涯発達する』という考えのもと、生涯発達心理学のことを指します。人間は生まれてから死ぬまで、常に手放しと獲得を繰り返しながら発達を続けます。

日本では「若さ」に強く価値を置く傾向がありますね。そういった社会の影響から、年齢を重ねることをネガティブに捉えがちな方も多くいらっしゃると思います。私自身も、特に身体面において衰えを感じる時には、若い人たちが眩しく見えます。

しかし『生涯発達』を軸に加齢について考えた時、これまでの数十年の経験と培ってきた知恵や精神は、若さとは比較にならない価値があります。年を重ねる毎にその人の美しさは外面から内面に移行します。
また造形美においても、先日京都を訪れた際にも思ったことですが、長い年月をかけて人々の想いが込められてきた仏像や建造物などは、人の心の機微に触れる美しさが宿っています。山や川などの自然も、その形が生まれるまでのプロセスやエネルギーを、眼だけでなく肌で感じて美しいと人は思うのです。

人間も同様に、その人のこれまでの経験が心の奥行と広がりを育て、それは容姿や声、表情、言動、エネルギーに現れます。人間の真の美しさは、人生で年を重ねながら様々な苦労や喜びの経験によって磨かれていきます。
年を重ねることは肉体が衰えていくことばかりなのではなく、むしろ肉体の衰え以上に心や精神が発達していくということです。人生で経験しないとわからない、他人の傷への共感や接し方があります。言葉選びや行動のとり方、自他との境界線も、人生で学ばないとわからない場合が多くあります。

「ありのままの自分を愛する」という言葉を今の自分に投げかけた時、これまでの経験やそれによって得た知恵、負った傷、喜怒哀楽により育てた心、変化してきた身体を観て、それらを肯定できているでしょうか。

私たちは一生涯発達を続け、自分だけの美しさを形成し続ける生き物です。
自己否定に走りそうな時はその事を思い出してみると、ネガティブな感情や思考、言動も、発達過程の一部だと肯定的に思い直して自分に愛を向けることができるかもしれません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?