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自動車に乗らずに馬車に乗るようなもの

京大卒元メガバンカーの総一郎です。

ウチの母親は心配性だ。

どこから見つけくるのか見当もつかないが、LINEはアメリカに覗かれているだの、中国共産党が~だのと言った類の陰謀論が大好きだし、すぐそこにゴミ出しに行くだけでも玄関の鍵をキッチリ閉める。

そして元銀行員の僕からしたら、「それはさすがに『自動車は怖いから馬車に乗るわ』と言っているようなものだ」と揶揄(やゆ)せざるを得ないことを言っていたので、その時の話をしたい。

幸い現在では僕による母のマインドセットが功を奏し、”馬車” は卒業してくれた。

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▼自動車に乗らずに馬車に乗るようなもの
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つい最近まで母親は、手続きがある度に銀行に足を運び、貸金庫に預けてある通帳を取り出し、窓口で振込みや現金の引き出しをしていた。

最初は気にも留めていなかったが、あまりに「銀行行ってくるね」と言って出かけることが多いもんだから聞いてみたところその事実が発覚したのだ。

僕にとっては信じがたいことだったが、「ネットバンク」を使ってなかったのだ。

僕はもうかれこれ何年も個人の口座に関して銀行の窓口には行っていない。

振込だろうが口座振替だろうが住所変更だろうが、だいたいネットで完結出来るからだ。

僕からすれば「銀行行ってくるね」なんて言葉はオリンピックのごとく四年に一度聞ければ良いものだった。


なぜネットバンクを使わないのか?母に尋ねてみると、

「なんか怖い」とか「勝手に引き出されたりしちゃいそう」とのことだった。

もちろん何事も可能性はゼロではない。
リスクがゼロだとは言えない。

ただ、銀行はそんなことが起きてしまったら信用を失い仕事にならない。存続の危機だ。
だから、そう言った不正出金が起きないことに銀行は命を賭けている。

もちろんネットバンクを使わなければそういった不正出金のリスクは回避出来るだろう。

ただそのリスクはいかほどか?

日本を代表する大企業が命を賭けて回避しようとしているリスクと、自分で通帳や印鑑を紛失して不正出金されるリスク、どちらが大きいだろうか?

答えは明白なのだ。

加えて、ネットバンクを使えば「銀行に行ってくるね」と言って家と銀行を往復したりする時間も手間も削減できるのだ。

「日本を代表する大企業が命を賭けて回避しようとしているリスク」をとるには余りあるリターンだ。

何事もリスクリターンのバランスが大事だが、「ネットバンクを使わない」のはさすがにもうリスクリターンが合わなすぎる。

「便利」なのは分かっていてもリスクを恐れ、従来の「不便」なやり方に固執し、技術の進歩を受け入れないのは、

「自動車は交通事故に遭って死んでしまうかもしれないから、私は馬車で行くわ」

と言っているようなものなのだ。

さすがにもう ”馬車” は卒業しても良い頃だ。

ちなみに母はこの話をしてすぐに銀行でネットバンクを申し込んできた。

窓口の行員に「車と馬車」の例え話をしたら「面白い例えですね」と言われたそうだ。


PS(追伸)   
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