国語の問題
偶然、ネットで国語の問題をみかけました。問題の中身はこんな感じです。
【問題】
「叔父が海外に行く」「私は父と見送りに行った」「急いで見送りに行った」という内容を一文で表したとき、解釈をする上で誤解の生じないものはどれか。
ア 父と私は急いで海外に行く叔父を見送りに行った。
イ 父と私は海外に行く叔父を急いで見送りに行った。
ウ 私は父と海外に行く叔父を急いで見送りに行った。
エ 私は父と急いで海外に行く叔父を見送りに行った。
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正解が“イ”だってことは、なんとなくわかります。けど、なんとなくなんです。なんで答えられるのかっていったら、長年の日本語生活で培った感覚だとか、経験としかいいようがない。
子どもから「どうやって解けばいいの」って聞かれたら、みなさんならどう答えますか? 宗一郎なりに考えてみました。
まず、不正解の文章の誤りの箇所を確認します。
[正解]
イ 父と私は海外に行く叔父を急いで見送りに行った。
[不正解]
ア 父と私は急いで海外に行く叔父を見送りに行った。
急いで“海外に行く”or“見送りに行く”のどちらとも取れる
ウ 私は父と海外に行く叔父を急いで見送りに行った。
父と“海外に行く”or“見送りに行く”のどちらとも取れる
エ 私は父と急いで海外に行く叔父を見送りに行った。
急いで“海外に行く”or“見送りに行く”のどちらとも取れる
父と“海外に行く”or“見送りに行く”のどちらとも取れる
(設問エについては、設問アとウの合わせ技のような感じですね。)
今回の問題は、“父と”と“急いで”それぞれの置き場所が論点になります。
まず、ひとつめの“父と”について。
“と”という言葉は、なにかと一緒だとか、同じという並列の関係を意味します。
そこで、“父と”が入る位置と、それに呼応して並列となり得る単語のパターンを確認してみます。
並列となり得る単語
①父と私は海外に行く叔父を急いで見送りに行った。 ⇒ 私
②私は父と海外に行く叔父を急いで見送りに行った。 ⇒ 私 or 叔父
③私は海外に行く父と叔父を急いで見送りに行った。 ⇒ 叔父
④私は海外に行く叔父を父と急いで見送りに行った。 ⇒ 私
⑤私は海外に行く叔父を急いで父と見送りに行った。 ⇒ 私
⑥私は海外に行く叔父を急いで見送りに父と行った。 ⇒ 私
⑦私は海外に行く叔父を急いで見送りに行った父と。 ⇒ 私
結果として、②と③のみ、父は叔父と海外にいってしまう可能性があります。④に至っては、確実に父は海外にいってしまう。
②と③の特徴はなんでしょう?
まず、“父と”が、叔父よりも前に置かれている。ってことがありそうです。
①も“父と”が、叔父よりも前に置かれています。
けれど、②③との違いは、“父と”が主語(私は)に入っていて、述語(海外に行く~)とは区別されていること。なので意味が途切れ、叔父と海外に行く可能性がなくなった、といえそうです。
また、③の文章で、もし“海外に行く”という文言がないと、どうなるか。
「私は父と叔父を急いで見送りに行った。」となり、並列となり得る単語に“叔父”だけでなく“私”もでてくる。よって、確実に海外に行くとみられていた父が、私と見送りに行く可能性が浮上してきます。
これらをまとめるとこんな感じです。
[確実に父が海外に行ってしまうパターン]
“父と”が叔父よりも前にある & (“海外に行く”などの)“父と”をさらに修飾する言葉がある
[絶対に父が海外に行かないパターン]
“父と”が叔父よりも後ろにある or 叔父のいる述語から離れて、私のいる主語に入る
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次に、ふたつめの“急いで”について。
これも“急いで”が入りうる位置と、修飾され得る言葉のパターンをみてみます。
修飾され得る言葉
①急いで父と私は海外に行く叔父を見送りに行った。 ⇒ 見送りに行った
②父と私は急いで海外に行く叔父を見送りに行った。 ⇒ 海外に行く or 見送りに行った
③父と私は海外に急いで行く叔父を見送りに行った。 ⇒ 海外に行く
④父と私は海外に行く叔父を急いで見送りに行った。 ⇒ 見送りに行った
⑤父と私は海外に行く叔父を見送りに急いで行った。 ⇒ 見送りに行った
偶然でしょうか、“父と”と似たような結果になりました。
②と③だけ、“急いで”が“海外に行く”にかかる可能性があり、③では“海外に行く”の一択です。
“父と”と同様に、“海外に行く”よりも前にある。けれど、①のように、“急いで”が主語(父と私は)にあると、述語にある“海外に行く”は修飾されない。
③で、仮に“海外に”という文言を消す(父と私は急いで行く叔父を見送りに行った。)と、修飾され得る言葉が、“海外に行く”だけでなく、“見送りに行く”の可能性がでてくる点も同じです。
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この手の問題。つまり、“父と”だとか、“急いで”などの修飾語の位置によって、修飾される単語を考える問題には、なんらか共通の法則がありそうです。
それは、
1.修飾語(A)は、原則修飾される言葉(B)の前に入る
2.ただし、修飾される言葉(B)が主語に含まれている場合は、その限りではない
3.修飾語(A)をさらに修飾する言葉(C)がつくと、修飾される言葉(B)は、修飾語(A)の直後の単語に限定される。
ということ。
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むずっ!どこの子どもがこんなややこしい解説に耳を傾けてくれんねん!
この問題、市販の解説とかって、どんなことが書かれてるんだろう。めっちゃ見てみたい。
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日本語を勉強している大人の外国人って、耳とか音からではなく、こういった理論から学んでいってるってことなんだと思います。そりゃあ、時間もかかるし、途中で挫折する人も多そう。
そして、同じように英語を理論(文法)から学んでいる我々日本人も…(以下略)