AI×WEBTOONの現在と未来
はじめに
こんにちは!はじめまして!株式会社G-VIS代表の中山です。
弊社画像生成AI技術を活用した漫画、アニメなどのコンテンツ開発に日々取り組んでいます。
一緒におもろいコンテンツ作りたい方、クリエイターの方、生成AIに興味ある方!ぜひお気軽にお声がけください!
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私は、2017年に高校生で初めてスマホを持った時からWEBTOONを読んでいたのですが、まさか自分が制作に関わるとは思ってもみなかったです。人生わからんもんです。
スマホでの読みやすさが半端じゃないので絶対に流行ると思ってたのですが、まだまだ広がる余地がありそうで楽しみな業界だと思います。
今回は、最近自分がWEBTOONについて調べたことと、自分たちが普段触れている画像生成AI技術から、思い描いている未来についてお話ししようかと思います。
目次はこんな感じです。
ではどうぞ!
1. WEBTOONの制作工程
日本の場合、WEBTOONはよくある横読みの白黒漫画と違い、アニメのようなスタジオ形式で制作されることが大半です。
一人の作家さん+アシスタントさんだけで、以下全ての制作工程で週刊連載するのが厳しいという理由があります。
上の図はtaskeyさんが公開している制作工程を拝借しました。
他の制作会社さんも工程について公開していますが、どこも大体一緒です。
制作コストについて
WEBTOON制作会社の方々はクリエイターさん向けに大体の給料を明示してくれているので、 簡単に1話あたりにかかるコストを概算したいと思います。
ソラジマさん(https://story.sorajima.jp/articles/n8a0b3c2ec24f)
30万円/話
フーモアさん(https://note.com/whomor_studio/n/n2464e3721d32)
28万円/話
taskeyさん(https://note.com/taskey_blog/n/n7eaeefae7bdd)
31万円/話(印税抜き)
Studio No.9さん(https://note.com/takuma828/n/n99f3ea7c81d4)
26.5万円/話
LOCKER ROOMさん(https://www.wantedly.com/companies/company_4138976/post_articles/447634)
27.5万円/話
上記5社をまとめると、平均で28.6万円となります。
※条件が異なる部分があり単純比較は難しいのですがご容赦ください。
ここに、編集者の人件費やその他経費などもかかってくるため、1話作るのに大体40-50万円ほど必要になります。
これは1話あたりのコストなので、ピッコマさんなどのプラットフォームに掲載してもらうことを考えると、売り出す前に20話ほど用意する必要があるため、初期投資として1作品あたり1000万円ほどかかることになります。
制作期間
フーモアさんのnote(https://note.com/whomor_studio/n/nf4f37e80dfa0)によるとだいたい1年かかります。
以上のことから現状のWEBTOONだと、初期投資として時間とコストどちらもかなりかかるコンテンツだということがわかったと思います。
2. AI活用の現状
現状のwebtoonにおいて、この中の一つの工程がまるまるAIで置き換わっている会社はないと思います。
ただし、各工程の一部にAIを活用して制作の効率化を図っているところは多いです。
LLM
まずは、GPTなどのLLMが活用されている工程で言うと、原作工程の企画段階でGPTに大量に考えてもらい、その中から選んでブラッシュアップしていったり、脚本工程で物語に出てくる架空の地名や人物の名前、技の名前等を考えてもらったりする使い方は一般的だと思います。
画像生成
次に、画像生成AIが使われている工程は、キャラデザや背景、着彩などが挙げられます。
キャラデザでは、例えばロマンスファンタジージャンルの作品などが顕著で、登場人物それぞれが豪華絢爛なドレスを何着も着るため、デザイン原案を生成して参考にしたりすることが多いようです。
背景では、建物はもちろん、大量のモブの生成だったりにも使われることがあります。
着彩は、現状一番AIに期待されている分野と言えるでしょう。
よくあるものだと、線画にベタ塗りの下塗りがある状態から影やハイライトなどを付与して絵をリッチにする本着彩部分の自動化などがあります。
最近の画像生成分野での開発は盛んで、ラフな下書きから線画を生成するものや、下塗りした状態の絵から着彩を行うものなどが出ています。
AIによる生成例
以下の画像は、G-VISが独自のフローを組んで実際に制作したものです。
人が手を加えた部分から完成品までに、AIによってかなりクオリティが上がっていることがわかると思います。
完成までのスピードも精々10分くらいです。とても早いです。
また、キャラの着彩データが溜まった上でAIに特徴を学習させ、線画がある状態から下塗りを介さずに直接着彩する試みなども研究されています。
背景に合わせてライティングを調整したり、他にも色々活用できそうな技術も社内で検証しています。
AI活用に興味ある方!他にも何ができるか知りたい方!
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他社着彩ツール
WEBTOON AI PAINTERというツールがNAVER WEBTOONから2021年に公開されていたため使ってみました。
緑の点がついている部分に色を置いたら自動で着彩してくれる感じなのですが、細かい調整は難しかったです。
領域が近いと関係ない部分まで影響が強く出てしまったり、望んだ部分まで塗れなかったりという感じです。
↓メガネを黒くしようと思ってもこんな感じ
点を増やせばいいかというとそうでもなかったです。逆にいろんな部分に影響が出てしまい、制御が難しかったです。
正式ローンチに期待ですね。
3. AIの抱える課題
技術的な課題
やはりAIを活用するにあたって一番の課題は一貫性・安定性だと思います。
AIを使えば全てが簡単に思い通りになると思われがちですが、全くそんなことはなく、下手すれば手書きの方が早くて質の高いものが制作できることは多いです。
特に、細かい装飾や特殊なデザインにはとことん弱いです。
WEBTOONの人気ジャンルであるロマンスファンタジーだと豪華なドレスや背景を生成するのが課題になったり、バトルものだとモンスターや武器、防具のデザインなどが作品に一貫性を保つ上では障壁となってきます。
そのため、G-VISでは人の手による工程を入れたり、生成過程で工夫を凝らしてコントロールすることで、一貫性を増したりして実用レベルまで持って行っています。
その過程で、いわゆるAIっぽさも軽減できているかと思います。
キャラの見た目に幅が出て、単調な画面になるのを防いでいます。
著作権等の問題
詳細な部分は政府が発表している資料等について確認してください。
まとめ部分だけ引用しておきます。
令和5年6月 文化庁著作権課「A I と著作権」https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/93903601_01.pdf
経済産業省「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/ai_guidebook_set.pdf
4. AIがWEBTOON制作に与える影響
今後どんどんAIの精度や使いやすさが向上すれば、制作コスト、制作スピード両方に大きい影響があるのは間違いないです。
会社によっては半分以上制作費や制作期間が抑えられることもあるかと思います。
かといって、全ての工程がAIによって代替されるかと言われるとそれも違うと思います。
原作やネームの生成は人のクリエイティブの影響が一番大きいところですしすぐに置き換えられることはないでしょう。(AIの進化がとんでもないので名言はできません)
ただ、いずれクリエイターさんがほぼ一人で週刊連載のWEBTOONを制作できるようになるのは間違いないと思います。
様々なクリエイター支援ツールの登場に加え、WEBTOON発祥の韓国ではこれまでにも個人作家さんによる週刊連載が普通にあったためです。
5. 展望
AIを作品制作に積極的に使う流れが起きると、個人クリエイターさんによる週刊連載のWEBTOONが多数実現し、よりクリエイターさんの個性が出た多種多様な作品が生まれるはずです。
そうした作品によってWEBTOONの市場が押し広げられ、世界中でヒットする作品が出てくるのではないでしょうか。
さらに、AIの発展によってアニメの制作にも活かされていき、今後TikTokなどの縦型ショートアニメが広がっていくと思っています。
ちょうど今流行っているショートドラマのように、ショートアニメが新しいアニメの形として受け入れられ、縦型漫画のWEBTOONと相性の良い映像化方式として確立されていくでしょう。
G-VISは、AIの発展とともに最前線で走り続け、AIのクリエイティブを切り開き、日本のエンタメコンテンツが世界に負けないように戦いたいと思っています!
日本のクリエイティブの強さを改めて世界に知らしめましょう!!
ぜひ誰でもお話ししましょう!
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