書籍「虚史平成」制作日誌 その1
怒られないうちに1本くらい書いておきます。
うだるような暑さに半分溶けかかりながら、その日も「どんなにお金があっても下痢でお腹が痛かったら小走りになるんだから、地位や名誉よりも下痢のほうが上」みたいなことを考えながらX(旧Twitter)を眺めていたら、DMが来ていました。
またスパムかと、中国語のスパムには「六四天安門」と返してはスパム報告をしている僕がDM欄を開いてみると、「虚史平成」と名乗るアカウントからでした。
以前、「ゲームファインTAO」の「起動音募集」に応募した際にステッカーの送り先を聞かれたり、ぴんくさんのサイン入りの「TBSラジオプレス」の募集に応募した際にも同様に住所を送ったりしていたので、「これはオレのような熱心なリスナーに、特別に500万円くらい振り込んでくれるに違いない」と、銀行口座のチェックをしつつ開いてみると、
「唐突の相談で恐縮なのですが、虚史平成の書籍化が出来ないかと思っております。 富岡さんが以前エレ片のコーナー書籍化をご担当されていたと伺いましたので、一度お話を伺えたら大変嬉しいです。」
と、冗談抜きで唐突なお願いが書かれていて、池袋東口のルノアールで「オレはなにか変な詐欺に引っかかっているのではないか」と20分くらい本業のお仕事を進めていました。
ある程度一段落した頃、もう一度DM欄を開いてみても、やっぱりオレに「本を作れ」と書いてあるので、半信半疑で返事を書きました。
「お声がけいただきありがとうございます! 僕でよろしければお力添えさせていただきますのでご遠慮なくお申し付けください。」
これが7月17日のことです。
なんだかんだあって、7月22日にTBSラジオにお邪魔しました。
その際、「疲れた〜♥。スタバでちょっと一休み」と、クリームコテコテの名前もわからないフラペチーノとともに、自慢のハイブランドバッグを見せつけることが主題のインスタグラマーのように、匂わせ投稿をしてみました。
この日の打ち合わせには、松重P、作家の洛田さん、編集の持田さんがいました。たしか、ぴんくさんはいなかったはずです。
以前(2022年)同じTBSラジオの「エレ片のケツビ!」のコーナーを本にした実績があったこと。リアルにぴんくさんのファンだったことを理由に声をかけたと。
9月末を目安に本を出したいということ。
コンテンツは漫談を文字化したいということ。
でもそれ以外は何一つ決まってないこと。
こんなことを聞かされた覚えがあります。
懸案は引き受けてくれる出版社があるのかどうかでした。
先述の「エレ片のケツビ!」の本を出した出版社とは、出版後に大喧嘩して完全に縁を切りましたので、ここは使えません。
長らく出版業界から離れていた僕にはツテもありません。
その場では「マガジンハウスはどうだ」「カルチャー寄りの出版社から出したい」「編集担当も優秀な人を付けたい」等々話が出て、僕も「いいっすね!」と返すものの、昨今の出版不況を考えると外部の、一切のつながりのない、無名の編集者が企画書を持って相談に行っても通るとは思えず、内心は「やべえ、どうすっかな」とビビリ倒していました。
1時間ほどの顔合わせの最後に、「念のため、心当たりのある出版社がひとつありますので、そこの編集長に聞いてみます」と話してその日は終わりました。
TBSを出て、六本木に向かう道すがら、やつが一番更新しているSNSであるところのInstagramのDMに一通メッセージを送りました。
「街裏ぴんくさんの本、おたくで出さない?」
今日はここまで。